[レポート/前編] Re:birth Festival 2017@鋸山採石場跡地

re:birth 前編
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all photos by JIROKEN

日時:2017年5月12~14日
会場:鋸山採石場跡地(千葉)

初めてRe:birth Festivalに参加した。オーガナイザーであるKojiroとDenaとのインタビューも交えながらイベントの様子をレポートしてみようと思う。

Re:birthがはじまったのは2013年の秋。天幕のKojiro、BrainBustersのDena、WAONのシンヤくんの3人が中心となってパーティーをつくりあげた。

Kojiro「そもそも俺とシンヤくん(WAON)は渚音楽祭でスタッフとして働いいて、2012年に渚が終わっちゃって、Denaともそれ以前から一緒に何かやろうと言ってて」

Re:birth Festivalは2017年で5回目を迎えたが、1回目~3回目までの会場は千葉県の富津(ふっつ)岬。アクアラインを使えば都内からでも1時間半程度でアクセス可能だ。

Kojiro「オールナイトでデカい音出してパーティー出来るところなんてなかなかない。富津岬の会場は岬の突端で、2kmくらい離れないと民家がない。ビーチだし、東京からも近いしお客さんも来やすかった。1回目から800人くらい集まってくれました」

Dena「でもホントは1回目は台風で中止だった。中止の後、3週間後にすぐにやった。ラインナップとか大分変更になったけど。でも1度中止にならないと、1回死なないとrebirth(再生)出来ないから(笑)」

Kojiro「2010年くらいからデカいパーティーは少なくなっていて、2011年の震災をきっかけにみんなパーティーやらなくなっちゃった。時代的にも震災以降、新しい風が欲しいような雰囲気があったし、デカいパーティー自体やらなくなっていたからRe:birthをやる意味があったと思います」

その後、2016年4回目のRe:birthから今の鋸山採石場跡地に会場が変更された。

Kojiro「富津岬は岬の先端で風が強く、国立公園だし、パーティーをやる方は凄くハードで大変だった。公園だから下はアスファルトだったり、まだ渚音楽祭っぽいところがあった。山でもっとちゃんとしたパーティーやりたいなと思って、3日間とか4日間とか…」

Dena「ヨーロッパみたいに1週間とか」

Kojiro「でも海で何日もやるのは大変だから。今の採石場は友達が何度かゲリラでフリーパーティーをやっていて。そこをちゃんと借りて、整地してフェンスとかも作ってきちんとしたパーティー出来るようにして…」

映像を見てもわかるが、鋸山のこの会場はユニークで素晴らしいところだ。実際にTrancentralというサイトでは「20 Most Amazing Party Locations」に選ばれている(この写真はKotaroくんのものだ)。

20 Most Amazing Party Locations

マチュピチュ、ワイナピチュ山

そそり立つ巨大な断崖絶壁の岩肌は、空中都市マチュピチュの霊山ワイナピチュをいとも簡単に連想させる。というか、こうして写真を並べてみると瓜二つじゃないか! 岩壁の前には池が広がり、その池をC字に縁取るように会場がレイアウトされている。

ゲートから真っすぐ歩いて池の上に出る辺りがちょうどCの字の真ん中といったところだ。そこから左へ進むとフードエリアが細長く続き、その先にメインフロアであるトランス・ステージがある。

逆に右側に進むと上下3層になっていて一番上が駐車場へと続く坂道、2番目にまずマーケット・ステージがあり、そこからさらに2層に分かれ、そのまま進むと長細くキャンプスペースとなっていて、上へ進むと突き当りにテクノ・ステージが現れる。マーケット・ステージの手前で坂を降りていくと一番下の層へと続き、まずはキッズエリア、そしてフリースタイル・ステージ、さらに奥へ進むと湖畔のキャンプエリアとなっている。

Re:birth 2017のステージ
1. メイン(トランス)ステージ
2. テクノ・ステージ
3. マーケット・ステージ
4. フリースタイル・ステージ

Dena「もともと日本のシーンはすごいジャンルを分けてるからトランスの人はトランス・パーティーしか行かない、テクノの人はテクノ・パーティーしか行かない。だから渚音楽祭みたいにいろんなシーンを一緒にして、そしたらみんないろんなステージ行くじゃない。たまに散歩行ったり、違うステージ行って他のジャンルの音楽を聞いて、もしかしたら“これいいね”とか思って、パーティーの世界を広げることが出来るじゃない。そうやっていろんなパーティーシーンをリバース出来るかなと」

Kojiro「昔のリバイバルなんかもここ5年くらい流行ってて、90年代の音のリバイバルが。そういう昔と今とを合わせて、プラスもっといろんなジャンルの人が混ざって新しい方向に、みたいなのがRe:birthのコンセプトで」

Dena「違うジャンルのステージに行って友達ができればそのシーンでも楽しく遊べるようになる、いろんなジャンルにいい音楽があるからジャンルに関係なく遊べるように、いろんなシーンを楽しめるようになればいいなぁと」

ただしジャンルやステージを広げ過ぎることによる弊害もあるようで、特に2017年は大雨にも見舞われたこともあり、3日間すべてのステージをオーガナイズするのは相当大変だったようだ。2018年は一度仕切り直し、より少ないステージでいろいろなジャンルの音楽を楽しめるように再生(リバース)させることも考えているという。

5月12日(金)天気:晴、遅刻厳禁

フェスティバルがはじまる5月12日(金)、天気は晴れ。自分にとってはせっかくの初Re:birthということで高知から友人のCharmmy(LMEP、Astrama)を呼び、空港~会場間の途中駅でピックアップすることにした。ところがいざ家を出発しようとするとCharmmyから連絡が入り、何と飛行機に乗り遅れたという! 

Charmmy飛行機乗り遅れる

15:00過ぎの到着予定が、20:40成田着になるという。ていうか、空港のパーキングからカウンターまで15分かかったって……、普通かかるだろ、そんくらい! 混んでなくても! 余裕なさ過ぎだよ!

教訓1:時間には余裕をもって行動しましょう。時間の余裕=心の余裕

もう出だしっから肩透かし、出鼻をくじかれた。しかたなく一人で出発し、アクアラインを越えた後は下道でちんたらちんたらと走っていく。車窓からの田園風景が心地良い。途中、最後のコンビニで買い出しを済ませ、会場への細い道を上っていく。まだ初日の夕方だというのにゲートのかなり手前から渋滞していた。

会場に入ると目の前の景色に圧倒される。写真では見ていたが、実際岩山に囲まれた空間は完全に異次元世界のようだ。デコレーションも素晴らしい。ゲートで待たされている間に、すでに辺りは薄暗くなりはじめていた。とりあえず早速テントを張るスペースを探す。

薄暗くなってきたフリースタイル・ステージ周辺

マーケット・ステージを過ぎてキャンプエリアに入ると、もうかなりの数のテントやタープが張られていた。いわゆるグランピングというのだろうか、豪華の設備が目立つ。ちなみに自分のテントは2000年のニューイヤーに南アフリカで開催されたミレニアム・パーティーに参加するときに買ったRipenのエアライズ2だ。1550ℊという軽さは海外へのフェスティバル・トリップには最適で、それ以来ずーっと使い続けているが、さすがにグランピングに囲まれると見すぼらしさが半端ない。

そもそも山岳テントというのは、次の目的地に進むために早朝には畳んでしまうものだ。しかしフェスティバル・トリップとなると、パーティー開催中は会場でずっと張りっ放し。たいてい前日か前々日には会場入りし、パーティーが終わった後も2日くらいはその場でチルすることが多いから、ひと夏で30日くらいは炎天下で張りっ放しということになる。南半球も合わせると1年に夏が2回。場所も山だったり海だったり草原だったりさまざまだ。なるほど、テント生地の色褪せや痛み具合が酷いわけだ。

とにかく立派なタープとさらに立派なタープの間に挟まれた狭小地にテントを張る。そして手頃なサイズの石を拾ってきてペグを打ち付けようとすると……地盤が固くてすぐにペグが曲がってしまう! 2本、3本と立て続けにペグが曲がり、早々にペグ打ちをあきらめた。とりあえず荷物を入れておけばテントが飛ばされるなんてことはないだろう……。

教訓2:この会場ではしっかりしたペグとカケヤのようなデカいハンマーが必用。ペグの替わりに5寸釘が役立つらしい。

Re:birthのTimetable

個人的に初日の夜の楽しみはトランス・ステージのFULLMOON MONDOとヘンタイカメラだが、飛行機に乗り遅れたCharmmyがいつ到着するのか。携帯のバッテリーもなくなってきたし……。

ヘンカメに間にあう?

一度会場を出て、車で保田駅まで迎えに行く。しばらくして到着した電車からバックパックを背負ったCharmmyが降りてきた。他にも何組か、Re:birthのお客さんらしき人たちが降りてくる。とりあえずCharmmyを助手席に乗せて会場へと急ぐ。結果、FULLMOON MONDOは逃したがヘンカメには間に合った。

ヘンカメのAKIRAとは2005年のUNIVERSO PARALELLO(ブラジル)で出会い、2006年夏のSONICA(イタリア)で再会。その後2014年の“はたフェスVillage in 三原(高知)”ではアフターパーティーでプレイしてもらったこともある。とにかく素直で、ちょー面白い奴だ。最近ではYOU the ROCKや鎮座DOPENESSとのセッションも多い。

ヘンタイカメラのライブが終わった後は一度車に戻り、Charmmyの荷物を降ろしてテントサイトへ移動。とにかくCharmmyは三原村を出てから、飛行機に乗り遅れたり、電車が終電だったり、ヘンカメがギリギリだったりと、とにかく慌ただしい時間だっただろう。テントを張って、ちょっと一息入れたいところだ。

5月13日(土)天気:大雨のち曇り、浸水注意

会うのも久しぶり(といっても1年ぶりくらいだが)だったので、いろいろと話しているうちにすぐに夜が明けてきてしまった。そして空が白みはじめてくると同時にポツリ……ポツリ……と。そう、本日(5月13日)の天気予報は雨。しかも時間帯によっては予想降雨量が4㎜という……それって土砂降りもいいとこじゃん!

明け方の雨は本当にポツリ、ポツリ、という感じでまったく問題なかった。本当にそんなに降るのかな? という感じだ。しかしどの天気予報を見比べても本日は雨、大雨だ。

我々は考えた。とにかく遅かれ早かれ雨が降るだろう。しかも本格的な大雨が。そして事前に仕入れた情報によると、この会場は雨が降るとすぐに水が溜まり、あちこちが川のように水浸しになるらしい。すぐにテント内まで浸水してくるとの話だ。

地面の様子はと言えば、とにかく固い岩盤で、その上にうっすらと灰のような細かい砂礫が積もっている感じだ。バーニングマン(米国、ネバダ州)に行ったことがある人ならわかるだろうが、まさにあのような地盤だ。とにかく雨が降るといろいろとやっかいなことは間違いない。予報通りの大雨ならテント内への浸水は必至。雨があがるまでゆっくりテントで休んで……なんてことは不可能だ。ならば、

「……テント、畳むか」

「ですね。本格的に降る前に畳んじゃいますか」

とりあえず2つ張ったテントのうち1つを完全撤収。もう1つのテントも中の荷物を空にして、いつでもすぐに撤収できるようにしておいた。それだけやってしまうと気分的にもかなり身軽になった。いつ大雨が来ても、とりあえず車内に避難してしまえば荷物も体も安心だ。

教訓3:いざという時、所有物は少ないほど逆に安心。所有とは不安である。

「そういえばJIROKENとか、もう会いました?」

「いや、まだ見てないなぁ。俺が着いたときはまだPARADISE BOOKSのテントもなかったし……、ちょっとキッズエリア見にいってみようか?」

雨はまだ、数秒に一滴くらい空から落ちてくる程度で、ほぼ降っていないに等しい。マーケット・ステージを過ぎて左の坂道を下っていく。下り切ったところがキッズエリアとそれに続くフリースタイル・ステージだ。

キッズエリア

キッズエリアをオーガナイズしているのはJETLOGICOのAYUMUだが、そのキッズエリアが充実しているのもRe:birthの特徴のひとつだ。JIROKENが主催するPARADISE BOOKSのテントもしっかり立っていた。

Dena「まわりの友達も結構子供ができてる人がいっぱいいるから、その人たちにも遊びに来て欲しい。子供たちが安心して一緒に遊べるところを作ったらお父さんお母さんももっと遊べるでしょ。家族で楽しめるフェスティバルにしたい」

Re:birthのPARADISEBOOKS

Re:birthのキッズエリア

Re:birthの子供たち

PARADISE BOOKSでJIROKENと少し喋っていると、早くも時間は9AM。テクノ・ステージでKojiroのプレイがはじまる時間だ。居心地満点のPARADISE BOOKSから立ち去るのはとても名残惜しいが、まぁ、また来ればいいだろう。とにかく同じ会場内だし♪

CharmmyとJIROKENの3人でテクノ・ステージへの坂道を上っていると……、むむむ、いつかどこかで見覚えのある立ち振舞いの男が……。病的に働きの悪い俺の海馬が大慌てて仕事をはじめる。えーっと、うーんっと……、TAKU?!

「MAGUです!」

そうだ! MAGUだ! もちろんハッキリと覚えている! 変態のMAGUじゃないか!

MAGUと出会ったのは2000年。上に書いた南アフリカでのミレニアム・パーティーだ。そしてさらにその翌年、ザンビアでの皆既日食フェスティバルSOLIPSE2001へ向かうタンザン鉄道でも同じ列車に乗り合わせていたのだ。このタンザン鉄道というのはタンザニアの首都ダルエスサラームからザンビアの首都ルサカまでを2泊3日で結ぶ寝台列車で、寝ても列車、起きても列車、食べても歯磨いても顔洗ってもずーっと列車の中という、もうこの際一生列車の中でもいいや、と思ってしまうような不思議な空間だった。何故MAGUが変態と呼ばれるかは我が名著『太陽と風のダンス』に書いたのでここでは割愛するが、とにかく2001年のザンビア以来、実に16年ぶりにこのRe:birthの会場で再会したのだった! マジか、16年ぶりなのか!! 

そして後ほど写真を何点か紹介させてもらうつもりでいるパーティーフォトグラファーのYUMIYAとはこの時初めて出会い(MAGUと一緒にいた)、以後国内のパーティーですでに何度も再会している。パーティーは音楽を楽しむだけでなく、重要なミーティングポイントでもあるのだ。

ともあれテクノ・ステージに着くまでに、雨はパラパラと小雨程度にはなっていて、Kojiroのプレイ中にもどんどん雨足が強まっていく。DJがRee.Kに変わった頃には普通に本降りだ。レインウェアを着ているから身体は別にどうということはないが、足元には早くもあちこちに小さな水溜まりが出来はじめている。靴の中まで濡れてしまうとこの先やっかいだが、しばらくは水溜まりを避けて踊り続ける。しかし雨は強くなる一方。Charmmyも俺も着替えの余裕はほんの僅かだ。

むむ……、撤収~~~~~ッ!ここは無理せず、とりあえず屋根のあるとこへ撤収~~~~~ッ!!
我々は早々にテクノ・ステージから立ち去った。

雨はすでに完全な土砂降りで、我々のレインウェアでは太刀打ちできない状況になりつつあった。テクノ・ステージのデコレーションを担当したR領域のDAMIはきっちりとレインスプレーを吹きかけたレインウェアを3着持ってきたと言っていたが、確かにそれぐらい必用だ。

早くも車内しか逃げ場所はないのか⁉ と思っていると、マーケット・ステージには立派なルーフが張ってあり、すでに雨を避けるお客さんたちで大賑わいの様子だった。我々もすかさずルーフの下へと入り込むと、まさに滝のような土砂降りにもかかわらず、雨が吹き込んでくる気配はまったくない。安心した我々は車内に片付けておいたキャンピングチェアとワインを持ち込み、ゆっくりと腰掛けて踊る群衆を眺めながら乾杯した。

夕方になると雨はやんだ。長い時間マーケット・ステージに集まっていた人たちも、思い思いの場所へと散らばっていく。キッズエリアへの坂道を再び下っていくと、小さな焚き火に人だかりが出来ていた。

 

後編に続く…….。

 

 

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