[レポート] Space Gathering Openair 2017

Space Gathering 2018
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日時:2017年10月28日
会場:シークレット(伊豆、静岡)

Space Gathering Openair(SGO)のフライヤー・ステッカーをMASAくんからもらったのは5月のRe:birth Festivalでの会場だ。青々とした地球の写真にSG20周年を表す「20」の文字。ステッカーの裏には日付とURLだけが記されていた。

 Space Gathering Openair 2018Space Gathering Openair 2018

いまさら言うまでもなく、SGはMASAとRee.Kによって1995年に開始され、いまに至るまで日本のアンダーグラウンド・パーティーシーンを牽引し続けてきたパーティーだ。SG信者と呼ばれるようなフリークスも生み出し、年を重ねるごとにオーガナイザーとオーディエンスとの一体感というか、ファミリー的なつながりが強固になっていく。

そもそも全員が参加者であり、“お客さん”はいないというのがこのパーティーのポリシーだ。世界最大のヘンタイ祭りである米国Burning Manがルール無用の中、ただひと言だけ「No Spectators(傍観者になるな)」と訴えかけているのにも通じるところがある。

 

SGの歴史はRee.Kへのスペシャル・インタビューの中でも触れているのでそちらも参考にしてもらいたい。UFOが目撃された10周年パーティーや暴風雨に曝された種子島などは、SGの歴史の中でも特に語り継がれているパーティーだろう。

[特集] Ree.K DJ活動25周年記念インタビュー

実を言えば、自分はSGOに参加したことがない。屋内でのSGには、例えば江ノ島でのカレー・ギャザリング(その夜もMikeがDJをしていた)や代官山Saloonでの平日パーティーなど何度か参加した。もちろんそれ以外にもMASAやRee.KのDJは、パーティーに行きはじめた初期の頃から何度も体験してきている。しかしSGOとなると、仲間同士の結束力が強いイメージがあるだけに、なんとなく一見さんにはハードルが高いというか……。

今回(2017年)のSGOも直前まで参加未定だった。仲間内で1番の信者であるMr.TOFUは数年前からタイに移住してしまっているし、10周年や種子島にも参加していたCharmmyは高知暮らしだ。せめて事前告知だけでもサイトに載せようとMASAくんに連絡してみると、「撮影がてら遊びにおいでよ」と誘ってくれる。むぅ……、行ってみたい……。

10月20日、イサPに連絡してみるが、土曜は夜まで仕事があるうえ、日曜には地元の花火大会を手伝うことなっているので無理!との返事だった。その後も思いつくままに友人を誘ってみるが、なかなか便乗できる仲間も見つからない。

日にちだけが過ぎ、いよいよ前日金曜日の深夜も越え、日付的にはパーティー当日の28日となっていた。

そうだ! SG信者のZEN〇に連絡してみよう。奴なら確実に行くに違いない!

ZEN〇と連絡

ということでZEN〇の車もダメだった……。やはりSGOには縁がないか……、いやいや! まだ諦めんぞ!

とはいうものの、心当たりはだいたい当たったし、妙案も浮かばぬまま土曜日の昼も過ぎてしまう。ん〜〜〜、どうしよっかなぁ!

SGO出発前メール

相手の返事も待たぬ怒涛のメール攻撃が功を奏したのか、地元の花火大会も台風のため中止ということで、イサPとともに深夜の出発が決定! ヨッシャャ〜〜〜〜っ!

そして夜、20時27分。イサPからメッセージが入る。

 

 >いまついたところす。
 >これから支度してそっこうでますよ。

 

思ってたより早めに出発できそうだぞ♪ そして23時05分、イサPがうちの最寄りのセブンイレブンまで到着した。ちなみに全然関係ない話だが、アラブ系の人たちはセブンイレブンを『セバライレバラ!』と呼ぶ……。

ヨシ、ではいよいよ出発しますか! 1泊2日の宇宙旅行へ!

会場への道中はふたりでどんなタイムテーブルになるかを予想しながら走った。とはいえ、今回のスペース・フライトをナビゲートするアーティストはMASA、Ree.K、Mike Maguireの3人のみ。18時スタートで、ひとり6時間ずつプレイするとの噂だ。タイムテーブルの予想といっても、この3人の順番を考えるだけでバリエーションは非常に少ない。

「Mikeはゲストだし、今回が日本最後のプレイになるっていうから、オープニングにMikeはないだろう……」

「てことはMikeはトリですか……オープニングはMASAさん……?」

「ん~、MASAくんオープニングやるかなぁ? やっぱ斬り込み隊長はRee.Kじゃない?」

「じゃ、Ree.K、MASAさん、Mikeの順ですかね?」

いづれにせよオープニングのDJには間に合わないだろうが、2番手のDJの途中からは聴けるだろう。日曜日には台風直撃との噂もあるが、いまのところ悪天候の予兆はあるものの、雨も風も大したことない。深夜なだけに道も空いててすこぶる順調だ。

深夜3AM過ぎに会場に到着。さて、車はどこに止めればいいかな? と思っていると……、おお! あちこちのパーティー会場で駐車場係をやっている眼鏡のお兄ちゃんが! SGOでもやってるのか! 駐車場係はほぼ独占じゃないか!

しかし彼がいるなら安心だ。上の駐車場に1台分空きがあるということで、小雨の降る中その空きスペースまで案内してもらう。最近山を切り開いたスペースなのだろう、下地は雨でぬかるみグチャグチャだが、イサPがきっちり駐車するまで車を誘導してくれる丁寧さ。さすがあちこちのパーティーで引っ張りだこのパーキング職人、ムーチャス・グラシャス♪

さて、車を止めてしまえばもう安心だ。我々は当初の作戦通り、テントも張らず、荷物も持たずにダンスフロアへ直行する。どれだけ雨が降ろうが撤退の2文字はない。最後の1音が止むまで踊り倒すぜ!

しかし台風直撃予報だというのに、テントサイトはほぼ完全に埋まっている。さすがSGファミリーたちは気合いが違いますな~。

ダンスフロアに到着。プレイしているのはMikeだった。よかった、間に合った。

聞いた話によると、1番手のDJはやはりRee.Kで、オープニングから8時間もプレイしたらしい。うぅ……、聴きたかった……。ま、とにかくまだMikeに変わって30分ほどしか経ってないとのことなので、Mikeのラスト・プレイはきっちりと堪能できそうだ。

「なんだかんだ言って我々も運動不足じゃないですか。急に踊るとあとで筋肉痛になったりするから、ちゃんとサプリ飲んだ方がいいですよ、サプリ♪」

イサPはタコス屋『taco la BAMBA』のオーナーであると同時にボディのスペシャリストでもある。全身に708個あるといわれる経穴(ツボ)の場所まですべて把握している男だ。きっとこの『DHC』て書いてあるサプリメントもその辺のコンビニで売ってるようなやつとは違うんだろう。なかなか気の利く男だ。

先に書いたように、自分はSGOに参加するのは今回が初めてだ。まず驚いたのが会場のデコレーション。駐車場から降りてきたときは気づかなかったが、1度トイレに下って再びダンスフロアに戻ろうと坂道を上ると……、うわー、サイケデリックなキノコ・ロードだぁ♪ 色とりどりの蛍光色で塗られたキノコたちがブラックライトに照らされて闇の中で輝いている。それはまるでキノコの形をした小人たちのようだ!

頭上を見ればUFOがぶら下がり、キノコ・ロードを抜けると、今度は異次元ゾーンへとつながるグルグル模様のワープ・トンネル! いや~、楽しいなぁ~~♪

巨神兵の頭部のようなDJブースはVJに煌々と照らされ、ダンスフロアの背後にはR領域製作による塔のような小ホールが建っている。スタッフもその他の参加者も玄人の集まりだから何も心配いらない。雨だろうがなんだろうが、勝手に楽しめる連中ばかりだ。

そしてMikeのプレイも素晴らしい。深夜を過ぎた未明の時間帯から夜が明けて空が明るくなってくるパーティーのマジカル・アワー。ジャンルを越えつつもしっかりとした統一感とストーリーがあり、なおかつ要所要所で“Mike節”とでもいったものが効いている。最期は”as a child”で締めくくるという、まさにMikeならではのオンリー・ワンなDJセットだった。

続いてMASAのセット。夜は明け、空は薄いグレーの雲に覆われている。Mikeの時間には止んでいた雨も、MASAに変わってほどなくすると再び降りはじめた。SGO2017 最終章のはじまりだ。

MASAは8月のオレゴン皆既日食フェスティバルでもプレイしていたし、熊本に引っ越した後も東京のパーティーでもちょくちょくラインナップされている。しかしやはり自ら主催するSGOで、しかも6時間セットでMikeの後のプレイとなると他のパーティーとはまるで違っていた。トランス黎明期からずっとDJを続けてきたベテランならではの、これまたオンリー・ワンなDJセットだった!

雨は強くなる一方だ。というか、いつの間にか予報通りの土砂降りだ。多くの人はフロア後方のタープの下で雨宿りしつつ音楽を聴いていたが、雨の中で踊っているフリークスたちもそこそこの人数がいる。中でも調子良さそうなのはZEN〇だ。自分ももちろん、途中のコンビニで買った薄っぺらいビニールのカッパを被りながら踊る、踊る。むしろ雨が強くなるほど調子がアガる!

吹けよ風、呼べよ嵐! もうアブドーラ・ザ・ブッチャーな気分だぜ! うりゃ、地獄突き!

それにしてもイサPが見当たらない。着いて早々に一緒にサプリを補給して以来行方不明だ。ま、フロアで絡めないのは寂しいが、奴のことだから心配無用。立ち小便ついでに崖から落ちたとか、そんなとこだろう。

と……、フロアの片隅にMr.TOFUを発見!

もう10年以上前の話だが、Mr.TOFU、イサP、俺の3人でパーティーをやっていたことがある。渋谷のトランプルームや京浜島のレストラン、そしてこのSGOの会場からもほど近い伊豆の野外でも2泊3日のパーティーをやった。そのときはDOMINOをゲストに呼び、スピーカー・システムはventも御用達のTaguchi Craftだった(あとから聞いた話では、Mr.TOFUとイサPはその前年にも同じ場所でパーティーを開催し、そのときはMASA、Ree.K、そしてMike Maguireがプレイしたらしい!)。

パーティー『太陽と風のダンス』2004

とにかくMr.TOFUといえば、自分の仲間の中では1番のSGフリークで、多分SGOにも第1回目から、ほとんど皆勤賞に近い感じで参加しているはずだ。しかし数年前からタイに移住し、さすがに今回はないな、と思っていた。しかしSGO開催の数週間前にたまたまTwitterを開いてみると、

Twitter

という不気味なツイートを目撃。まぁ、でも、ないよな……。と思っていたのだが……、来たのか! はるばる国境を越えて!

とにかく、大満足・大満喫なパーティーだった。当初の意気込み通り、最後の1音が雨粒とともに地面に吸い込まれるまで休みなく踊り続けた。躍ってなかったのは撮影していた時間だけだ。

すべてを終えて家に帰り着くと、時間は日曜日の8PM過ぎ。出発してからまだ24時間も経っていない! まさに我々は台風のエネルギーとともに異次元をくぐり抜け、スペースシャトルでも実現不可能な世界最短の宇宙旅行を実現したのだ!

さて、ダンスフロアでは見かけなかったイサPだが、奴もまた遠く宇宙の果てまで旅をしていたらしい。

 

いや、雨が凄かったんですよ、雨が。で、我々の車は山を切り開いたばかりのスペースに止めたじゃないですか。地盤もぐっちゃぐちゃで。だからね、もう山が崩れて車が流されちゃうんじゃないかと思ってね、車の様子を見に行ったんですよ。そしたら坂道が土石流みたいに流れて滝みたいになってて……、でも、その土がエメラルド・グリーンに光ってるんですよ。つまり、土砂の中の微生物たちが光を放出しながら必死になって、こう、土を支えているというのかな、崩れないように。

で、ダンスフロアから離れるにつれてパーティーの音は小さくなっていって、かわりに森の音が聞こえてくるわけですよ。梢の擦れる音とか、葉が揺れる音とか、虫の響とか……、そっちはそっちで森全体がパーティーやってるんですよ。

僕はね、少し落ち着こうと思ってアーナーパーナ(鼻孔から出入りする呼吸を観察する瞑想方法。ヴィパッサーナーで用いられる)をしたんですわ。そしたら鼻息が、キラキラキラキラキラキラキラキラ♪♪♪…!!って、もうダイヤモンドみたいに輝きながら鼻の穴から音符が飛び出していって、まわりの森たちとハーモニーを奏でるわけですよ! 自分の体の血管なんかもアレックス・グレイの画みたいに光りながら浮き出てきちゃって……。もう、これは宇宙だ~~~と。

アレックス・グレイ、カレンダー

で、雨が凄いんですよ、雨が。車も心配だし雨は凄いしで、これはちょっと車の中に入ろうと。運転席に座ってみたら、もう宇宙船のコックピットなんですよ。エンジンもかけてないのにメーターとかもパチンコ屋のネオンみたいにギラギラとレインボー色に光ってるし。もう「アムロ、行きま~す!」みたいな。で、雨が凄いんですよ……、外は。

(イサP談)

Space Gathering。またの名を宇宙集会。MASAとRee.K、そしてその他多くのファミリーたちで続けられてきたこの宴は、間違いなく世界に誇れるアンダーグラウンド・パーティーだ。次回もまたシークレット、限定人数での開催となるのだろうが、出来るならひとりでも多くのパーティー・フリークたちに、この宇宙旅行を体験してもらいたい。

改めて、20周年おめでとうございます!
そして、21周年も楽しみにしています!

 

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