[レポート] LDG Anniversary the Open Air feat. Katharsis

LDG Anniversary the Open Air
Pocket

Texts : Golgo Night
Photos : Chihiro Tanno/LDGオフィシャル

日時:2020年8月8〜10日(土〜月・山の日)
会場:REWILD MUSIC FES CAMP(勝浦・千葉)

5月25日、特措法第32条第5項に基づき緊急事態解除宣言が発出され、4月7日から続いていた緊急事態が解除された。

これに伴い、政府はイベントや展示会の開催制限の段階的緩和の目安を発表。移行期間としてステップ1〜3までの3段階を設け、8月1日を目途に人数の上限を定めないイベントを解禁する予定とした。

ステップ1では屋外での200人以下、屋内では100人以下の規模のイベントが解禁となり、6月19日以降ステップ2では屋外・屋内ともに人数の上限を1000人とし、7月10日以降上限5000人のステップ3を経て、8月1日からは人数上限そのものを解除するというのが基本的な考え方だ。今さら3段階の移行期間やそれぞれの上限人数の妥当性について論じるのは無意味だが(なぜならそんなもの最初から存在しないのだから)、とにかく自粛は解除され、いろいろな面に注意を払いつつも我々は踊りに出かけることができるようになったわけだ。

イベント解禁のステップ

 

とはいえ当然のことながらパーティーをオーガナイズする側は慎重にならざるを得ず、まずは小規模な、プライベートパーティーの延長のようなものから少しづつ開催されはじめていった。

自分は6月13〜14日に東京日の出町のおおばキャンプ村で開催されたシークレットパーティーに参加。新型コロナウイルスによる自粛後、初めて参加するパーティーとなった。

続いて7月18〜19日、同じおおばキャンプ村で招待制による小規模なパーティー DANCE de TAMARIVER BBQ sessionに参加。先にあげた政府のロードマップでは、この時点ですでに上限5000人のイベントが解禁となっているわけだが、自粛期間に痛めつけられたパーティー業界には当然そのような体力は回復しておらず、ゆっくりゆっくりとまわりを伺いながらようやくアイドリングを開始したというのが実情だっただろう。

上記2つのパーティーはどちらも会場からライブ配信を行った(最初の配信はYouTubeからコミュニティガイドライン違反として配信中に即行でバンされてしまったが)。再編集したものをアーカイブとして公開しているので興味のある人は見てみて欲しい。

 

これに先立つ5月30日、873.net(ハナミネット)の撮影に参加。ZOOMによる遠隔での出演が基本で、ごく少数のスタジオ出演者もソーシャルディスタンスを意識した配置で番組を進めていた。去年参加したGLOBAL ARKが今年も8月末に開催決定となったことを知らされたのも、このハナミネットの撮影現場だった。自粛期間中は比較的穏やかに過ごし、特に不満もないつもりだったが、久しぶりにアガるニュースを耳にして文字通り心躍る気分だった。

 

テクノ界の異端とも呼ばれるLiquid Drop Grooveが4周年のパーティーを開催すると聞いたのはおおばキャンプ村での最初のパーティーのあとだった。しかしすぐにFBや公式サイトを確認してみたが、それらしい情報は載っていなかった。ん? おかしいなぁ、と思いながら過ごしていると、7月5日夜、友人から連絡が入る。

 

「LDG、8月8日から3日間でやるらしいね」

「え!? 3日間!!そうなの??」

「今日ハナミネットでマリアちゃんが喋ってたよ」

「え?? マリアちゃんが!!!!!」

 

ガーーーーン!! それは知らなかった! 5日のハナミネットも撮影を頼まれていたものの、別件の用事があったため断ったのだが……。マリアちゃんに会えるのなら別件の方を断ればよかった!!

翌日、アーカイブされた映像を見てみると、どうやらマリアちゃんは全国オーガナイザー列伝というコーナーにZOOM出演していたようだ。リアル天使ちゃんではなかったことになぜか少しホッとしつつ番組を見ていると、やがてマリアちゃんによるLDGの告知がはじまった。

 

「8月8日、9日、10日(はちがつはちにち、ここのか、とおか)にLDGの野外を、4周年パーティーをやります♪」

なんと、LDGの4回目のアニバーサリーパーティーはOpen Air!しかも3Days!! これは間違いなく面白いことになりそうだ!

以前にも書いたが、このFestival Tripの第1号の記事は2017年5月21日に公開したLDG1周年パーティーの告知記事だ。その1周年パーティーにも翌年の2周年(Featuring Boshke Beats)にも、そして去年のAgatitida in OKINAWAにも撮影で参加した。4周年は人数限定だし、来られない人もたくさんいるだろうからバッチリ映像撮って皆さんにお伝えしなければ!

少し補足をすれば、LDG Anniversary  the Open Airがはじまる8月8日は、1988年に開催された伝説のイベント「いのちの祭り(通称:ハチハチ)」の最終日にあたる。いのちの祭りには喜納昌吉、南正人、喜多郎、カルメン・マキ、山口富士夫、シーナ&ロケッツ、ナナオサカキなどが参加し、1万人近い人(主催者発表では8888人)が集まったと言われていて、のちのRainobow2000やフジロックにつながる潮流の起点となったイベントでもある。

 

そして今回、LDGがパーティーのテーマとして掲げたのは「TECHNO HIPPIES」。つまり、LDG Anniversary  the Open Airがいのちの祭り(ハチハチ)とそのスピリットにおいてつながっていることをやんわりと示唆するために、マリアちゃんは敢えて番組の中で8月8日を“ようか”と言わずに“はちにち”と表現したのだ、そうに違いない! さすが天使ちゃ〜〜〜〜〜ん♪

さて、俄かにLDGへの期待が高まる中、7月25〜26日はヘンタイカメラ♡主催によるHentai Summer Campに参加。名前の通りこのパーティーは各方面から毎年とびきりの変人たちが結集するのだが、特に今年は新譜『GOA』と『GOOD VIBES』のWリリースパーティーということで、ゆるふわギャング×ヘンタイカメラ♡によるスペシャルなライブもあって最高に楽しめた。

 

ところが、楽しみすぎたためかLDGのパーティーまであと10日というタイミングで体調を大きく崩し、頭痛と強い倦怠感で寝たきりの状態になってしまった。

4日間ほど寝込んでようやく倦怠感が抜けてきたのでYUTAに参加の旨を伝えると

「今回は撮影はなしでいきましょう」

とのことだった。
え……? 動画撮らないの?

 

この時点で緊急事態宣言が解除されてから2ヶ月以上が経っていたが、東京での新型コロナウイルス感染者は減るどころか以前よりも増加傾向にあった。キャンプで同じテントに宿泊していた友人同士が感染したとのニュースが流れたのもLDG開催の10日ほど前のことだ。主催者としては1人の感染者も出さないことはもちろん、興味本位の良からぬ噂を立てられぬように細心の注意を払う必要があったのだろう。一般のお客さんも含めて撮影はすべてNGとの判断だった。

むぅ……、非常に残念だが仕方がない。ならばカメラを持って行っても無駄に重いだけだし、今回は置いていくとするか……。いや、どこかでチャンスがやってくるかもしれない、やっぱ念のため持っていこう!

 

LDG 4th anniv.

 

 
【2020年8月8日(土)】

天気は晴れ。友人Toppyの車で千葉県勝浦市へと向かう。東京湾アクアラインを抜けて千葉県に入ると若干だが外の空気は涼しくなった。途中のスーパーで買い出しを済ませ、田園に挟まれた道を進んでいくと突然道路の左下方に会場が現れた。え!? こんなに道のすぐ側なの!? ていうか道沿い!!??

山道でもなんでもない普通の道沿いにキャンプ場とは驚きだが、とにかくアクセスがいいことは間違いない。そもそも会場のREWILD MUSIC FES CAMPは6月にオープンしたばかりのキャンプ場で、テントなどを持たずに手ぶらでもキャンプが楽しめるようなプランもあるライトユーザー向けのキャンプ場だ。ギアをローに入れてくねくね曲がった山道を登っていく……なんて必要はまったくない!

エントランスの手前で車を止め、車に乗ったまま体温測定を受ける。体温を測ってくれるのも若い女のコなので気分がいい。テントエリアはエントランスのすぐ裏で荷物を運ぶのも超楽チンだ。

LDG 4th anniv.

 

検温が終わるとスマホのレンズに撮影止めのステッカーを貼られる。徹底して撮影NGだ。

キャンプ場はフェスティバル会場としてはとてもこじんまりとしていて、どこに立っても会場の端から端までを見通せるほどの大きさだ(実際には常設ステージの裏の一段下がったスペースにもキャンプサイトがあった)。全面が芝生で覆われていて、見た目に優しいだけでなくテントやタープを張る際のペグ打ちも容易だ。かといって柔らかすぎてペグが効かないということもない。

at LDG 4th anniv.

 

早速ダンスフロアから最も近い場所にテントを張る。頭上にタープを張り終えたらキャンピングチェアに座って、まずはビールをプシュッと開ける。ちなみに俺は黒ラベル派だ。もちろんバランスのとれた味わいも良いのだが、それにも増してパッケージのデザインが好みだ。皆既日食を思わせる黒い正円の中で輝くワンスター。サッポロビールは、明治政府が北海道開拓のために設置した「開拓使」の中で生まれた「開拓使麦酒醸造所」がその前身だが、黒ラベルの中で輝くひとつ星は、この開拓使のシンボルである北極星。開拓使の旗である「北辰旗(ほくしんき)」や当時の“札幌ビール”のラベルに描かれているのは現在の金色スターではなく赤いひとつ星だが、これは石井いさみ氏の名著「750(ナナハン)ライダー」に登場する暴走集団「狂走赤軍」とも同じマークだ!

 

札幌ビールの赤い星

石井いさみ「750ライダー」

 

他にワンスターですぐに思い浮かぶのはコンバースだが、米国マサチューセッツ州でマーキス・M・コンバースがシューズメーカーを創業したのが1908年、開拓使麦酒醸造所の開業は1876年だから歴史としては30年以上もこちらの方が古い。とにもかくにも暑い夏の日差しの下、裸足になった足の裏に柔らかな芝生の感触を味わいながら乾いた喉に流し込むビールは最高だ。これから3日間、いつでも好きなときにこれできるんでしょ? マジ、サイコ〜〜〜〜〜♪

ダンスフロアはすぐ目の前だからタープの下で座りながらグビグビやっていてもフロアの様子は丸わかりだ。早速シャボン玉アーティストのOnchiが大小のシャボン玉でフロアを賑わせている。山奥の会場と比べると音量は多少控えめだが、こうしてレイドバックして眺めているぶんにはむしろちょうど良いぐらいだ。

シャボン玉アーティスト Onchi

 

我々のテントのすぐ近くには他所では見たことのないクールな真っ黒のテントが張ってあり、気になったので話しかけてみる。テントの持ち主はayumiちゃんという女のコで、FRUE、FFKT、Re:birthなどあちこちのフェスティバルに参加しているらしい。どうりでテント周辺のたたずまいが玄人っぽくまとまっているわけだ。テクノ好きでアーティストについても詳しそうだ。このレポートでもまるパクしようと今回の出演者についても参考になる話を聞かせてもらったはずだがすっかり忘れてしまった。当のテントはZERO GRAMという韓国メーカーのもので、重さわずか1.54キログラム!結露に強いモノフィラメントという生地を使用しているらしく、雨も含めてフェスティバル会場で困ったことはないという。

テント周辺でのんびり過ごしていると早くも日差しが傾いてくる。スマホの画面を確認するともうRee.Kの時間だ。フェスティバル初日のこんなに早い時間からRee.Kを聴けるとはまた贅沢な気分だ。マスクを着けてダンスフロアへと歩いていくと、早くもMirrorBowlerのRYOと遭遇。なんと初日からテントサウナで満喫してきたところらしく、肌もつやつやで上機嫌だ。

Ree.K

 

夜8時にRee.Kのプレイが終わり、そのまま初日のメインステージは終了。ちょうどDani Savantがはじまる時間なので、シャワーで一度汗を流してからインドアステージへと向かう。

インドアステージの入口ではしっかりとマスクチェックがあり、ノーマスクでは入場出来ないようになっている。中に入ると業務用のファンで換気を促してあり、しっかりとコロナ対策がされている。とはいえDaniはそんなのお構いなしに強気一辺倒な音で攻めていて、白塗りのFunktion-oneから弾き出される音に合わせてフロアの方も加熱気味だ。なるべく入口付近の人が少ない場所にたたずみ、普通のクラブならまだオープンさえしていない時間から盛り上がりまくるフロアを眺めつつ、初日の夜が過ぎていく。

Dani Savant at LDG 4th anniv.

 

 
【2020年8月9日(日)】

2日目も朝からいい天気だ。少し風が吹いていて心地よい。本日のオープニングは9時からDJ G. 沖縄のAgaitidaでも7月のDANCE de TAMARIVERでも漢気溢れるナイスプレイだったが、朝のオープニングからどうやってすっ飛ばしていくのかと思いきや予想外のアンビエントセットから開始。これまた他では味わえない貴重な時間だ。テントの中からマットを取り出し、タープの下でヨガ代わりのストレッチで体を伸ばす。

続くToreiもゆったりとしたセットで、ダンスフロアにいてもキャンプサイトにいても気持ちいい時間が続く。子ども連れのファミリーで参加している人たちも多く、芝生の上を子どもたちが元気に走り回っている。Daniは、ダンサーのKaoriちゃん自作によるLDGのロゴ入り4連凧を飛ばして期待通りにデコレーションのワイヤーにひっ絡め、周囲から笑い声が聞こえてくる。

LDG 4th anniv.

 

しばらくすると国籍不明の中国人A-skとパーティーフォトグラファーのYUMIYAがテントに立ち寄り、タープの下で話をしていく。A-skには本人に勝るとも劣らぬ不可解な弟がいるのだが、その弟に平将門の霊が憑依したということだ。そもそもA-skは子供のころ霊感が強かったそうだが、当時A-skが付き合っていた彼女が霊をたくさん連れ歩いている女のコだったらしく、そのために引っ越したばかりの新居を1ヶ月も経たずに引き払ったこともあるらしい。憑依された弟は素っ裸のまま竹藪を走り回り、体じゅう傷だらけの状態で保護されたそうだ。平将門といえば「日本三大怨霊」のひとり(あとの2人は菅原道真と崇徳上皇)ということで、そんな多忙で大メジャーな怨霊がA-skの弟に憑くとは考えづらいが、TRIPの仕方は人それぞれ。とにかく気温が上昇してくる真夏の昼下がりにはぴったりの怪談話だった。ちなみに俺も弟にはパーティー会場で1、2度会ったことがあるが、ちょっと小便をしたかったのでカメラと荷物を見ておいてくれるように頼んでその場を離れ、用を足して数分後に戻ってみるとカメラバックとともに消えていたという、こちらも背筋が凍るようなオチだった。

と、まあパーティーにも音楽にもまったく関係ない話をぐだぐだと話す時間があるのも嬉しいことだ。撮影NGのために普段より時間を持て余しているということかもしれないが、深夜から朝にかけては完全に音が止まるため睡眠時間をしっかり取れているというのもあるだろう。フェス自体がソーシャルディスタンスを意識した人数限定のため、キャンプサイトにも余裕があって居心地がいいというのも大きい。

DJがLicaxxxに替わり、遠目にもダンスフロアの人が増えはじめる。Mixmag Japanのローンチパーティーで撮影して以来だったので楽しみにしていた時間だ。

Licaxxx

 

緩めのテクノにあわせて揺れていると、すぐ近くで同じように揺れているYUTAを発見。先ほどA-skから「地元が一緒なんですよ〜♪」と若かりし頃の黒歴史を聞かされたところだが、本人はいたって気持ちよさそうに揺れている。これは千載一遇のチャンス!

背後から近寄り「A-skと地元一緒らしいじゃん?」と呟くと、それだけで俺がいろいろと地元情報を入手したと悟ったらしく「そうなんですよぉ」と苦笑いする。俺は敢えて地元の話題を深掘りすることなく、「しかしLDGの4周年、凄いいいパーティーになってるな〜!」と布石を打つ。YUTAの表情を横目で確認しつつ「明日はもう最終日か……、LDGアーティストのYUTAとマリアちゃんだけでも撮影しとこうか!」と勝負の一石を投じる。青空にはところどころ夏の雲が浮かび、フロアの向こうでは相変わらず子どもたちが駆け回っている。これで断られれば、もう諦めるしかないが……。

「じゃぁ、撮りますか!」

おっ!! マジ!? 撮っていいの!? 
やったーーーーーーーーー!! 
LDGの記念すべき4周年で撮影できることになったのは本当に嬉しい!!

 

メインステージではSHHHHHのプレイがはじまったが、インドアステージの山頂瞑想茶屋のライブも気になる。時間は午後2時前、これから一番暑くなる時間帯だ。

Shhhhh at LDG 4th anniv.

 

ということでToppyと2人でクーラーの効いたインドアステージに移動。すでに山頂瞑想茶屋のライブははじまっていたが人も少なくて快適だ。一度テントサイトに戻ってチェアを持ち帰り、マスクを着けたままクーラーの下で座って傾聴する。

山頂瞑想茶屋

山頂瞑想茶屋のYouTubeにて動画が公開されました】

 

午後4時半からはメインステージでKEIHINだ。今回のセットを最後にしばらくDJ活動を休止するということで、プレイにも気合が入っている。clubberiaに掲載されたインタビューによるとKEIHINは以前にも子どもが生まれたタイミングで活動休止していたことがあり、今回も第2子が生まれるということなのできっと育休代わりの活動休止ということだろう。前回同様、この期間はトラックメイキングにも時間を注入するだろうからそちらも期待したいところだ。

KEIHIN at LDG 4th anniv.

 

KEIHIN節が炸裂したあとはWata Igarashiの時間だ。2日目のトリということもあってダンスフロアにはこれまでで一番多くの人が集まっていた。

Wara Igarashi at LDG 4th anniv.

 

この日も夜8時にメインフロアは終了。夜のシャワーを浴びてインドアステージに移動する。SawagiのTsutomuが昨夜のDani Savantにも増してフロアを盛り上げている。よく見ればA-skがDJブースの目の前でマンツーマンでマークしている。

Tsutomu at LDG 4th anniv.

 

DJがMari Sakuraiに替わってちょっとしたところでトイレに行こうと外に出ると「おい、ゴルゴ!」と呼び声が。暗闇に目を凝らすと、Laserboy.tvのシンちゃんがぬっと現れる。ちょうどいま着いたところだというが、昼間は勝浦の海で波乗りしていたらしい。

トイレで用を済ませた戻り道、ちょうどフロアから出てきたA-skと出くわし、一緒にいたミホコ a.k.a.朝焼けのジョイナーとともにPARADISEBOOKSのジロケンのところに遊びに行く。電球に飾られた夜のPARADISEBOOKSは昼間にも増して可愛らしい。

PARADISE BOOKS at LDG 4th anniv.

 

みんなで少し話していると東の空から月が昇りはじめる。まだ角度が浅く、月は怪しげな赤色に染まっている。A-skによれば昨夜も同じような月の出だったそうだが気づかなかった。俺は自分のテントに戻り、カメラを三脚に据え、月に向けてセットする。

しばらく月を撮影していると、誰もいないメインフロアでVJが続いていることに気がついた。ならばそっちも撮っておこうとフロアへ移動。後ろの方からフロア全体を撮影していると、デコのKITAROがやってきて「ステージも撮っておいてよ」と言うので言われた通り撮っておく。

撮影を終えてインドアステージに戻ってみるが、知った顔が誰もいなかったので10分ほどいただけでテントに戻る。

あーーーーーーっ、
今日も1日楽しんだなーーーーーッ!!

LDG 4th anniversary

 

 
【2020年8月10日(月・山の日)】

3日目も天気は良好だ。昨夜も深夜0時頃にはテントに入って眠りについているので体調も申しぶんない。こんな毎日が1ヶ月でも2ヶ月でも続いてくれれば嬉しいが、3日間のフェスティバルも今日が最終日だ。しかし目覚めた瞬間から脈打つこのワクワク感にはもちろん別に理由がある。いよいよ本日のオープニングでマリアちゃんがプレイするのだ。最も楽しみにしていた時間が間もなく到来だ。

カメラバックからつい数週間前に買ったばかりのGoProを取り出し、一脚にセットしてメインフロアへと向かう。DJブースではちょうどPAの三浦さん(MMU)がサウンドチェックをしているところだ。iphoneに飛ばした画面でGoProの画角をチェックしてカメラ位置を決め、PAブースに移動してラインで直接レコーダーへと音源を入力させてもらう。時間を確認するとまだ8時半前なので、一度テントに戻ることにする。

セッティングは済んだので、あとは自分の手持ちカメラを持ってDJブースに行けばいいだけだ。それまでモーニングビールでも飲んでゆっくりしていよう。

ビール片手にToppyと話していると心地よいダウンビートな音楽が流れてくる。やっぱり朝はこういう感じがいいよね〜〜〜、て…………ん? あれ!? もしかしてもうマリアちゃんはじまってるじゃん!! やっべーーーー!! 一気にビールを飲み干し、メインフロアへとダッシュ!!

MARIA.at LDG 4th anniv.

 

永遠に続いてくれればいいとさえ思える至福のときはアッという間に過ぎ去っていった……。「楽しか〜ったひとときがぁ〜〜〜♪」とカックラキン大放送のエンディングテーマ『哀しみのソレアード』が頭の中でエンドレスにループする。次のSAKUMAもカッコ良さそうだが、とりあえず一度退散だ。

 

竜宮城から戻った浦島太郎のように夢見心地のままテントに戻ると、Toppyの様子がおかしい。確認してみると、我々にラグジュアリーな空間を提供してくれていたHillbergのタープが強風に煽られ、ポールが1本折れたのだという。え? そんなに強い風吹いてたっけ?? 他のグループのテントやタープは被害受けてないみたいだけど??

同じタープを張っていた去年のSunshine Festivalでは台風のために雨も風もかなり強かった。そのときにダメージを受けて曲がっていたポールが今回の風で折れたようだ。むぅ……、とにかく仕方がない。一日ははじまったばかりでこれからまだまだ暑い時間が続く。タープなしではまるで難民キャンプだ。しかし幸いToppyの車に別のポールが積んであったため、なんとか応急処置でやり過ごすことが出来た。危ないとこだったぜ……。

何度もシャワーを浴びて夏を満喫し、ときにはDJのいないインドアステージでクーラーの風に当たって休みながら体をクールダウンさせる。そうこうしているうちに午後2時からYUTAのプレイがはじまったが、動画はオフィシャル側でしっかり撮るということなので、俺は10分ほどカメラを回しただけであとの時間はフロアで踊り楽しんだ。

YUTA at LDG 4th anniv.

 

マリアちゃんもYUTAも動画に収め、初日から今まで十分楽しんだわけだが、まだひとつやり残したことがあった。実は去年沖縄で開催されたAgaitidaに誘われたときに買おうと思って、しかし国内発売日が微妙に間に合わなかったために買えなかったMavic miniを、今年もGLOBAL ARKを開催すると聞いた直後に購入し、ひそかにこのフェスティバルにも持ってきていたのだ。撮影NGということだったから出番はないと思っていたが、YUTAの許可も出たことだし是非とも一発飛ばしておきたい。

Mavic miniはDJIがドローン規制法に引っかからないように軽量化を進めたドローンで、日本版は重さがわずか199グラム。小型で軽く、手軽に飛ばせるが、その分安定性は低く風にも弱い。午前中はタープのポールをへし折るほどの風が吹いていたわけだが、今では火照った肌に心地よいほどのそよ風だ。すでに日は西へと傾きはじめ、会場も日陰の部分の方が多くなってきている。飛ばすなら今がまさにラストチャンス。Toppyにすぐそばで見守ってもらいつつ、LDG Anniversary the Open Airの会場上空にMavic miniを旋回させると、ようやく俺はやるべきことをやり終えた気分で安堵した。

at LDG 4th anniv.

 

終わってみれば本当にアッという間の3日間だった。着いたときには少々小さく感じた会場だったが、実はメインステージもインドアステージもキャンプサイトもどこに行くにも近くて移動のストレスがなく、とても快適だった。それでいてキャンプサイトには余裕があり、テントごとのソーシャルディスタンスもしっかりと確保されていた。

最後の大トリにシークレットゲストのDJ NOBUが2時間半のセットで登場したのも驚いたが、それにも増してこのフェスティバルが素晴らしかったのは、野外のキャンプ・イン・フェスティバルに参加する際の垣根を下げたことだろう。最初に書いたように都心から近いキャンプ場は山道を走らせる必要もなくアクセスが非常に容易だ。夜には音が止むので誰もがしっかりと休養が取れ、全面芝生で見通しの利く会場は子ども連れでも安心だ。

at LDG 4th anniv.

 

以前なら、野外のパーティーといえば、それは多かれ少なかれハードコアなものだった。奥へ奥へと続く会場への道はわかりづらく、強者だけが辿り着けるような場所だったりもした。3日間躍り続ければ髪はボサボサ、服はドロドロで、どちらかといえばパラダイスよりもヘルに近いようなイメージのことも多々あった。子どもがダンスフロアをうろついていたりすれば、「誰だっ、戦場に子どもなんか連れてきてるノボセ野郎はっ!?」とでも怒鳴りつけたくなるような、ある意味必死な思いで踊っていた。それはそれでとても楽しかったわけだけれど、時は流れ、パーティーの位置づけ自体がアバンギャルドなものから成熟したものへと変化していった。求められているのは音楽好きなら誰でも楽しめるパーティーだ。

LDG 4th anniv.

 

実際にLDG the Open Airでは、このパーティーが野外フェス初参加だという若者に会った。彼はクラブ好きで、ベルリンのBERGHAINなどでも遊んでいたらしいのだが、「野外初めてっすけど、超〜〜〜〜楽しいっすね♪」とニコニコしながらアフロヘアを揺らして踊っていた。彼のほかにも普段のパーティーでは見かけないような人たちがたくさん遊びに来ていた。子どもたちも本当に多かったし、楽しそうだった。LDGは常に新しい客層に向けてパーティーへの門戸を開き、誰もが踊って楽しめる場を提供しているということだろう。

理屈はどうあれ、マ・ジ・で! 楽しい3日間だった。人数限定のため規模は小さかったが、まぎれもなくフェスティバルだった。わずか4年でここまで辿り着けるとは驚きだ。4周年、おめでとうございます♪ そして今回もありがとうございました!!

 

 

【追記】

上記のように今回のフェスティバルでは基本的に撮影は完全NGだったが、YUTAに頼み込むようにしてごく限られた範囲でだけ条件付きで撮影することができた。撮った素材はすべてオフィシャルに渡してあり、Festival Tripとして公開するのは以下の映像1つだけだ。しかしこの中には文中に出てくる月の出や夜中のVJ映像、ドローンで撮影した1カットも含まれている。なにより自分はこの映像を撮るために参加したようなものなので、観てもらえると嬉しいです。

 

 

以下の関連記事もお読みください♪

[レポート] PHAZE @ R Lounge, 2017.SEP.27

[レポート] ANNIVERSARIO 2017 by LIQUID DROP GROOVE

 

 

Pocket