[レポート] Hill Top NewYear Party 2018 @ GOA(前編)

HILLTOP NEWYEAR PARTY 前編
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日時:2017年12月31日~2018年1月1日
会場:Hill Top(ゴア、インド)

太陽と風のダンス』は次のような冒頭の1文からはじまる。

 

はじまりは、ゴアだった。

 

学生時代はクラブ・ブームで、青山や六本木には毎週のように新しいクラブがオープンしていた。バイト先の仲間と一緒に、夜の仕事がハネた後、新しいクラブに出かけて行ってナンパするのが週末の習わしだった。骨董通り周辺では『マニアック・ラブ Maniac Love』『アポロ Apollo』『ブルー blue』なんかが話題で、六本木なら『エロス EROS』のようなヤンチャな小箱から『ヴェルファーレ velfarre』のような大箱まで賑わっていた。とにかく毎週欠かさず出かけていった。

学校を卒業して就職したものの、1年で退職し、茅ケ崎に引っ越してからも夜遊びだけは続けていた。そもそも女のコが目的だったから、かかっている曲なんてなんだってよかった。

そして1995年11月、友人とともに何も知らずゴアへと旅立った。白人の女のコを簡単にナンパできるという触れ込みだったからだ。

インドは最悪の場所だった。とにかく汚く、香辛料臭く、そしてインド人はしつこかった。東京で出会った可愛い女のコたちのことを、毎晩思い出しては後悔していた。1日も早く帰国したかった。

なんとかゴアに到着した当日、俺は初めてのチロムを吸わされ、ほとんど気絶するような勢いでぶっ倒れた。その後も毎日毎晩、チロムを吸ってはぶっ倒れ、ときには吐き、そして死体のようにしてビーチに転がっていた。もちろん、ホフマン先生にも何度も叱られた。

そしてクリスマスの夜、『Hill Top』のパーティーで開眼する。それまでの長いイニシエーションをくぐり抜け、ぺろりと脳味噌の薄皮が剥がれるように、俺は生まれ変わった。目の前には新しい世界が広がっていた。

それから俺は、ほぼ迷うことなく1本の道を進んでいる。その道は直線でもなく、歩きやすいものでもなかったが、それでも俺はあのとき見えた光を頼りに歩き続けている。踊り続けている。

そう。はじまりは、ゴアだった。そしてその物語はいっときも途切れることなく “いま、ここ” という瞬間につながっている。

俺はその後、あちこちの国を訪れ、たくさんのパーティーやフェスティバルに参加したが、いまだにゴアを再訪出来ずにいる。そして2017年末、World TravelerのCHUNがサクッとゴアへと旅立った。現地2泊という驚きの弾丸TRIPだ。

そして今回、そのCHUNがレポートを寄稿してくれた。文章も写真も映像も、特にクレジットのないものはすべてCHUNにによるものだ。貴重なゴアの最新レポートを楽しんでもらいたい。

 

~~~ここからCHUNによるゴア・レポート~~~

 photos and movies by CHUN

 

インド南部のリゾート地、ゴア。サイケデリックなパーティー・フリークなら気になる土地のひとつだろう。

goa,India

ゴアはかつてはポルトガル領として、インドのほかの土地とはかなり異なる歴史を歩んできた。大航海時代の1498年、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路の開拓後、1510年にポルトガル領インドの行政府が置かれたエリアだ。

当時のゴアはポルトガルの首都リスボンをモデルに造られ、今もパナジやオールド・ゴアなどの旧市街に行けば、世界遺産に登録されている教会が立ち並ぶ。1549年、戦国時代の日本にキリスト教を初めて伝えたフランシスコ・ザビエルの遺体が安置されている教会もある。キリスト教徒の割合が多く、広大なインドの中でも異なった雰囲気の州だ。

ゴア、教会

1947年にインドがイギリスから独立した後も、1961年まではポルトガル領として存続し、1960~1970年代にはヒッピーの聖地として多くの欧米人が集まり、毎夜パーティーに明け暮れていたという。1980年代にアメリカで生まれたハウス、テクノなどのダンスミュージックは、1980年代後半のイギリスのセカンド・サマー・オブ・ラブを経てインドのゴアに持ち込まれ、1960~1970年代から続くヒッピー&サイケデリック・カルチャーと結びいた。1990年代にはこの地でゴア・トランスが誕生し、その後サイケデリック・トランスとして世界中に広まっていった。

goa,70s1970’s GOA photo by unknown

のどかなビーチとアラビア海に沈む美しい夕日は、欧米人を中心とする多くのトラベラーを惹きつけた。そしてインドの中でもキリスト教文化の根付く特異な土地だからこそ、さまざまな民族や文化を受け入れ、独自の音楽やカルチャーを世界に発信することになったのかもしれない。

世界を旅するFestival Tripperなら外すことのできない、パーティーの聖地ゴアを約10年ぶりに訪れたので、その基本情報と最新情報についてレポートをしたいと思う。

アンジュナ、ゴア

ゴアといってもその地域は広く、大きく分けて3つのエリアに分かれる。世界遺産の教会群が建ち並ぶオールド・ゴアや州都パナジの位置する中央ゴア、1960~1970年代のヒッピー時代から開発されてきたビーチが点在する北ゴア、ゴア空港や鉄道駅マルガオからも近く、ビーチリゾートとしては北ゴアの後に開発された南ゴアの3つだ。ヒッピー時代の昔からパーティーが多く開催されているのは北ゴアのアンジュナビーチおよびバガトールビーチ周辺なので、パーティー目当ての人はまずここを目指すと良いだろう。

anjuna beach ,goa

ゴアのパーティーシーズンは、例年11月上旬にはじまり3月下旬から4月上旬ぐらいまでだろうか。これ以外の時期に行っても、パーティーはほとんど開催されていないので注意されたし。特にパーティーが多く開催される時期は、12月下旬のクリスマスから年明けニューイヤーにかけて。2~3月も多い印象があるが、パーティーが多く開催される年と少ない年とがあり、年によってかなりばらつきがあるようだ。

ゴアで有名なパーティースポットといえば、アンジュナビーチとバガトールビーチとの中間地点、バガトール寄りにある『Hill Top(ヒルトップ)』だろう。ヒッピー時代の1976年から営業を開始した、ゴアの中でも老舗中の老舗だ。オーナーはインド人で、オーナーの息子はDJとしてもHill Topのステージに立っている。例年 Hill Topでは賑やかなクリスマス・パーティーとニューイヤー・パーティーが開催され、多くのトラベラーが集まっている。

hilltop newyear

今回ゴアに着いたのは大晦日の12月31日だった。宿でチェックインを済ませ、バイクを借りてHill Topに向かう。ゴアではリキシャやバイクタクシーも頻繁に見かけるが、自分の足があったほうが遥かに便利だ。バイクをレンタルしている店はゴアにはたくさんある。宿で借りられることもあるので、まずは宿の人に聞いてみるのがいいだろう。1日あたり250~300ルピー(約450~540円)が相場のようだが、クリスマスからニューイヤーの時期は一番高く、今回は1日あたり800ルピー(約1440円)で原付スークターをレンタルした。

ゴア、レンタルバイクショップ

ヤシの木の生い茂る南国ゴアの風を切りながらバイクで走るのは、本当に気持ちが良く、最高にお勧めだ。ただし、くれぐれも安全運転で楽しんでほしい。

さてHill Topのニューイヤー・パーティーのチケットだが、インターネットでも販売されていたが、なぜか日本ではクレジットカード決済が出来なかった。バイクでHill Topに到着し、早速入場口・チケット売り場で購入する。当日券は1枚5000ルピー(約9000円)。インドの物価からすると高額ではあるが、インド国内のみならず、海外からもベテラン・アーティストを多数呼んでいるし、彼らの渡航費用やギャラを考えると決して高いとは言えない金額だろう。チケット売り場のインド人スタッフに聞くと、12月31日の18時から1月1日の22時まで、NON STOPで音を出すとのことだったが、まだタイムテーブルは出ていなかった。

チケット購入後、バガトールビーチやアンジュナビーチを散策した。ニューイヤー・シーズンということもあり、ビーチにはバカンスを楽しむ多数の欧米人のほか、インド人観光客も多かった。アップテンポなゴア・トランスを流す店から、ゆったりとしたチルアウト・ミュージックを流す店まで、ビーチ沿いにはいろいろなレストランやバーが立ち並んでいる。約10年前と比べて、それほど変わった印象はない。

ゴア、ビーチ

インドで牛といえば、ヒンドゥー教の神様シヴァ神が乗る動物として大切にされている(とは言え、実際には蹴られたり、邪険に扱われているのをよく見かけるが……)。その牛たちがビーチや町中で歩きまわっている姿は、インドならでは風景といえるだろう。

アンジュナビーチからほど近いアンジュナ交差点周辺は、土産物屋やレストランなどの店が増えた印象だが、老舗レストランの『Munchies(マンチーズ)』はなくなっていた。ゴアに行ったことのある人なら、マンチーズ・レストランにお世話になった人も多いと思う。バガトールの屋外クラブ『9BAR(ナインバー)』は健在のようだ。

9BAR、ナインバー、ゴア

アンジュナ交差点周辺をはじめ、道路沿いの電信柱や店の看板など、町の至る所でクリスマスからニューイヤーにかけてのパーティーの告知ポスターが貼られていた。初めてゴアを訪問した2000年初頭は、そのようなポスターは町中でほとんど見かけず、口コミを頼りに夜な夜なパーティーを探し求めてバイクで走りまわった。

今では、インターネットやFACEBOOKなどのSNSでもパーティーの告知が一般的に行われている。どこでやっているのかわからないシークレット・パーティーもいまだにあるのだろうが、大部分のパーティーには比較的簡単にアクセスできるようになってきた。町中で見かけたポスターによれば、今年のニューイヤー・パーティーはHill Topのほか、South Anjuna(アンジュナビーチの南)でも開催されるようだった。

南アンジュナ、ポスター

夕方になってもHill Topの公式ページにタイム・テーブルが発表されないので、再度Hill Topに行ってみると、ようやく入場口・チケット売り場にタイムテーブルが貼り出されていた。タイムテーブルを写真に撮った後、アンジュナビーチにてアラビア海に沈む、ゴア名物の美しい夕日を見に行った。

ゴア、チケットカウンター

Hilltop NewYear タイムテーブル

ゴア、ビーチの夕日

ゴア、老舗のイタリアンレストラン

アンジュナの老舗イタリアレストラン『Basilico(バジリコ)』で夕食をとり、一旦宿に戻って仮眠。23時頃に再びバイクでHill Topへと向かう。入場口でチケットを提示し、リストバンドを受け取る。再入場も可能とのことだ。先へ進むと簡単なセキュリティーチェックがあったが、バックの中身とリストバンドをチェックする程度だった。飲み物の持ち込みは禁止されているが、デジタルカメラなどについては問題なかった。

入場口から少し歩いてメインフロアに足を踏み入れると、その異空間ぶりに引き込まれる。蛍光ペイントで彩色されたヤシの木と昔ながらのサイケデリックなバティックが、ブラックライトに怪しく輝く。正面にはTree of LIFEをイメージしたようなサイケデリックなデコレーションがそびえ立ち、虹色のライティングが眩しいメインステージが、いやがおうにも視界に飛び込んでくる。

hill top newyear

tree of lifw at hilltop

昨今は複数のフロアがあるフェスティバルやパーティーも多いが、Hill Topのパーティーは基本的にこのメインフロアがひとつあるだけ。音はフルオンのみで勝負だ。フロアがひとつしかないこともあってか、ステージ周辺のデコやVJについては、4ヶ月ほど前の8月に米国で開催されたオレゴン皆既日食フェスティバルのどのフロアよりもサイケデリックかつ凝った印象だったし、10年前よりも遥かにパワーアップしていた。

ここへ来る前にHill Topの公式ページで、数日前に開催されたクリスマス・パーティーの写真を見てきたが、クリスマス時のデコとも異なる、ニューイヤー・パーティー仕様の新しいデコだった。さすがは”ゴア・トランスの殿堂”と呼ばれるHill Topだけに、そのあたりも手抜きなしで頼もしい。

hilltop newyear

年越しの瞬間には会場の周囲で花火が上がった。メインフロアから眺めていたが、残念ながら小規模なものだった。花火はやはり日本の花火が一番だ。

しばらくメインフロアとその周辺を徘徊した後、昼間のポスターで見かけたSouth Anjunaのニューイヤー・パーティーに向かうことにした。この時期のゴアは昼間は暑いが、夜は少々肌寒くなる。バイクで移動するなら一枚羽織る物があったほうがいいだろう。

hilltop newyear

途中道を間違えつつも、South Anjunaのニューイヤー・パーティーに到着。以前のゴアでは多くのパーティーが入場料無料だった。しかし最近では事情が異なるらしく、このニューイヤー・パーティーもHill Topと同じく有料で、入場料は1000ルピー(約1800円)だった。

South Anjunaのニューイヤー・パーティーは『Curlies Beach Shack Anjuna』と『Shiva Valley』という、アンジュナビーチ沿いに隣り合って営業している2軒のビーチレストランで行われていた。この辺りのビーチパーティーにも、過去のゴア訪問時に来た記憶がある。店名は変わったような気もするが、以前からパーティーをよくやっていた場所だ。

newyearparty at south anjuna

south anjunanew year party

ほぼ10年ぶりの再訪ということで道順もわからなくなっているかもしれず、実は昼間のうちに下見をしておいた。そのときはチルアウトを流していたが、ここも夜中はフルオンのゴアトランスだ。お客さんには欧米人もちらほらいるが、約8割はインド人。ビーチではたくさんのチャイ屋が並び、そこここにランタンの明かりが灯っている。それぞれのチャイ屋ではインド人のおばちゃんたちが、温かいチャイやサンドイッチなどの軽食を販売している。ゴアのパーティーならではの風景だ。 

south anjunaのチャイ屋

 South Anjunaのニューイヤー・パーティーのラインナップで有名どころは、イスラエルのAlien Projectだろう。2001年のゴアのパーティーでは、Alien Projectの“ Midnight Sun (GMS Remix) ”や、Astrixとのコラボ曲である“ Genetic Eyes(Genetically Modified Remix)”などが頻繁にかかっていて、当時の日本のパーティーでもよく耳にした。最近はAlien Projectの名前をあまり目にしなくなった気がするが、せっかくなので久しぶりに聴いてみたい。しかしタイムテーブルも見当たらず、出番がいつ来るかもわからない。2時間ほどねばったものの、バイクでまたもやHill Topのニューイヤー・パーティーに戻ることにした。

……後編に続く。

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