texts, photos and movies : A-sk
日時：2019年4月13~14日（土~日）
会場：おおばキャンプ村（日の出町、東京）
とあるテレビ局の喫煙所で仕事をサボっていると、シャボン玉アーティストのOnchiからメッセージが入る。
「今年の山開きはいつ？ LOOPってイベントが4月13～14日にあってシャボン玉やるんだけど、オーガナイザーがカメラマン探してたから A-sk勧めといたよ。どう？」
おおお！ナイス、Onちゃん！
実は去年から、僕は友達のパーティーで写真を撮るようになっていた。しかもオヤジが使っていたSony α7をつい最近譲り受け、カメラの方もグレードアップしたばかり。だからこそ今はいろいろなパーティーで写真を撮りたい。
そして会場は初めてFestival Tripで記事を書いたTRIANGLEと同じおおばキャンプ村。あのときもOnchiとの2人旅だった。LOOPってイベントは初めて聞くけど、なんか楽しそうだ。
「うん、やるよ！ ありがと、Onちゃん♪」
パーティー当日（4/13）の朝9時、Onchiから連絡が入る。
「今から出る。カンタも誘っといたから」
お！スペースカンタか‼
スペースカンタというのは僕らの友達で、気色の悪いコスチューム姿でフロアを徘徊するヤバい野郎だ。以前、Labyrinthのレポートにも書いたので詳しく知りたい奇特な人が “もし”いればそちらを参照して欲しい。
いづれにせよLOOPのダンスフロアにスペースカンタが登場したら、きっとみんな盛り上がるかドン引きするか、もしくはただ涼しい顔してシカトするかのどれかに違いない。
家で準備をしながらバックパックに荷物を詰め込んでいるとピンポンがなる。
「あー、準備もう少しだから入ってきてー」
2人が入ってきた。
「あれ？カンタ普通じゃん。スペースカンタじゃないじゃん」
「いや、まだですよ。でも、コスチュームはしっかり持ってきてますよ♪」
フ…、やる気満々だな。2019年初のスペースカンタも楽しみだ。野外レイブも今年初。山開きかー。天気も良いし、気分は最高。ルーン♪
運転はOnchiがしてくれるというので助手席に乗る。
「美容室にテントを置いてあるから、ちょっと寄ってくれる？」
赤坂にあるヨッサンの美容室へと向かう。246から赤坂見附を越えて右折、少し進んでもう1度右折して商店街に入ろうとしたときだった。警察がめっちゃチャリンコをこいで追いかけてきたかと思うと、止まれと合図をしてくる。
運転席のドアをOnchiが開けると、
「右折禁止です、横に寄せてください」
「え!? ここいつも右折してるけど…？」
「いや、土日は右折禁止なんです」
「ええっ!? 聞いてないよー!!」
「看板に書いてあります」
マジか……。運転しているのはOnchiだが、ナビをしていたのは僕だ。横目でチラリとOnchiを見ると……、ムゥ、まるで蝋人形のように無表情だ。正面を向いたままの目が点になっている。
「お巡りさん！彼は悪くないんで許してください、僕が全部悪いんです！ 弟が昔グレたのも、みんな僕のせいなんです！」
「弟さんのことは知りませんが、規則は規則ですから」
Onちゃんごめん……。罰金の7000円は僕が払うけど、点数はOnちゃん減っちゃうよね。マジ、ごめん。
「いーよ、いーよ」と言いつつも、相変わらずOnchiの目は点のまま。心なしか唇が青紫色に変色している。出発早々最悪だ。幸先が悪いことこの上ない。
Onchiが調書を取られている間にテントをピックし、再び車に乗り込む。スタートからこんな調子じゃちょっと不安だが、とりあえず忘れるしかない。
会場のおおばキャンプ村は都内から車で軽く1時間半ほどとアクセスが良い。高速を降り、最寄りのセブンイレブンでドリンクだけ買い出しをして先に進む。
会場に着くとエントランスにマリコがいた。
マリコはLOOPのオーガナイザーの1人で、僕が代々木公園のフリーイベント『春風』からはじめたPARADISE HAIRのメンバーでもある。ペイントアーティストとして、春風では妻のアリサと一緒にかなり出店を頑張ってくれたコだ。
PARADISE HAIR、略してパラヘアを知らない人も多いと思うので、ここで少し紹介させていただきますm(__)m
【 PARADISE HAIRとは？】
パーティーを楽しんでいる人たちや子供たちの髪の毛の編み込みなどのヘアセットをしたり、顔や身体にペイントなどを施すスペースです。レイブやフェスティバルの会場で、移動図書館 PARADISE BOOKSの隣にときどき出現します。
海外のフェスティバル会場ではドレッドを編んであげたり、髪の毛をセットしてあげたり、子供たちの顔にペイントをしてあげたり……、イベントに参加している人たちを彩るお店をよく見かけますが、日本のフェスティバルではそのようなお店がほとんどありません。パーティーに遊びに来た人たちが、そのイベントに合った髪型やペイントをすることで気分やテンションがアガり、ダンスフロアに踊りに行きたくなってくれたら嬉しいなぁと思い、PARADISE HAIR をはじめました。
その場所はみんながゆっくり休んだり、子供たち同士でペイントしあったり、お母さんたちが身だしなみを整えにきたりできる、PARADISE BOOKSと同じようなフリースペースでも面白いと思っています。日本の野外イベントでも海外フェスティバルのように音楽以外のコンテンツをもっと増やして、子供から大人まで、そして家族で遊べるような環境作りのお手伝いが出来たらと思っています。
こういった活動を2019年からスタートさせ、3月30～31日の2日間、PARADISE HAIR初出店を春風でやらせてもらった。
当日はありがたいことに大盛況で、1日目はトイレにも行けず膀胱破裂寸前まで我慢しながらお客様にサーブし続けた。アリサもマリコも本当に頑張ってくれて大活躍だった。そのパラヘアのマリコがオーガナイザーの1人としてやっているのがLOOPだ。是非とも応援したい。
エントランスを済ませ、車からテントを引きずり出すが……、まずはその前にビールで乾杯！
グビグビグビグビ……、カァーーーッ 、美味いっ！！
今回は僕のスノーピークのテントを出し、Onchiと2人で寝る予定だ。去年のTRIANGLEは5月中旬開催だったが、夜はかなり冷え込んだ。テントでは眠れぬほどの寒さだったので、今回は買ったばかりのアルパカのキャンプ用ストーブを持参した。
じゃーん!! 野外で初使用♪ これをテントの中で使うのは楽しみだなー♪
テントの設置が完了し、カメラを持ってフロアへと歩いて行く。天気はすこぶる快晴で、 心地良さ抜群だ。もう音は鳴っているがお客さんはまだ少ない。
出店でも覗いてみるか。 Tシャツを売っている店があるのでそこの商品を見る。これカッコイイなー。
ぷらっとしてるとオーガナイザーのマサキ君がいた。彼とは春風が初対面で、マリコに会いにパラヘアに立ち寄ってくれたときに初めて挨拶をした。少し悪そうなルックスだが、話すと優しくてとてもいい人だ。
「今日よろしくね！ 頑張っていろいろ撮るから、なんか撮って欲しい画とかあったら言ってねー」
「よろしくお願いします。DJたちがアー写で使えるような写真を撮ってあげて下さい」
げげ、到着早々サクッとハードルを上げられてしまった……。
ひと通り会場をまわり、カメラの三脚の位置を決めてゆっくりしていると「 エーちゃん！」と呼び声がする。
ん？ 振り返ってみるとiLINXのタケちゃんだ。
「おー、タケちゃん」
「エーちゃん誕生日おめでとう！ 一杯おごるよ」
「おお、ありがとう！」
FBで見たのだろうか、実は数日前は僕の誕生日だったのだ。おめでとうと言ってもらえると嬉しいもんだ。ちなみにレポートにも書いた通り、iLINXも最高のパーティーだった。
タケちゃんからもらったレッドブルウォッカを飲みながらDJブースを見てみると、お！早くもマリコの出番だ！ これは写真をいっぱい撮ってあげないと。
しっかりとムービーも回しておこう。カンター！ これ今ムービー回してるから、これ君の仕事ね。マリコがいい曲かけたら録画ボタン押しといて。
カンタにカメラを任せてフロアで踊る。初めてマリコのプレイを見るけど、少しダウンビートでいい感じだ。ペイントもDJもセンスよくこなし、若いのに多才で今後が楽しみだ。頑張れー！！
マリコの次はSIVA-Tだ。
Onchiのシャボン玉とSIVA-Tのプレイがうまくコラボレーションしている。これって電気グルーヴかな？ キャッチーな曲かけてくるね～。
気づけば少しずつ日が落ちてきて、VJのクリスアイカちゃんとレーザーのYSKくんが生み出す光の世界が広がりはじめている。
DJブース周辺でいろいろな映像と光が躍りはじめる。そこに風に吹かれたシャボン玉が流れてきて、音と相まっていい感じの空間演出をしてくれている。めっちゃ綺麗やんかーい♪
空の右の方には月が浮かんでいる。あぁ、この演出空間に月が…、美しい。夜はまた雰囲気が出て、めちゃくちゃいい感じだね。
夜景に見とれていると、DJはジュゲンくんに変わっていた。彼もLOOPのオーガナイザーの1人で、以前OATHでマリコから紹介されたことがある。いい人オーラが半端なく、人柄の良さが滲み出た顔つきだ。
ムービーを撮っていたからか、カメラのバッテリーの減りが意外と早い。バッテリー充電してきてくれないかな？とDJを終えたジュゲンくんにお願いしてみると、本当に丁寧に充電をしてくれた。その後も、バッテリー大丈夫ですか？とパーティー中に何度も声を掛けてくれる。若いのになんていい人なんだ。僕が君の年齢の頃は道端で干からびたウンコみたいな奴だったよ。ま、それは今でも変わらないが……。
マリコもそうだが、LOOPのメンバーは若いのに人間が出来ている。パーティー愛に溢れる若い世代の人たちとこうやって絡めるのはとても嬉しい。
少し寒くなってきたので、上着を取りにテントに戻る。少しするとカンタも戻ってきた。
「あれ？ まだノーマルカンタじゃん？ いつスペースカンタになるの？」
「いやぁ……、まだタイミングじゃないっすねー」
ウザい顔と余裕の表情にイラっとした僕はついつい言ってしまった。
「お前は何しにきたんだよ？ パーティーは遊びじゃねーんだぞ！ って君の師匠のenergymanが言ってたじゃないか」
八丈島の Last Summer Trip 2016での写真だ。 energymanとはふんどし一丁でパーティー写真を撮っていたてっちゃんのことだ。カンタは彼の影響を受けてスペースカンタになったようなもんだ。
「早く着替えろよ」
「いや、もう寒いです」
「はぁ？ じゃあ日中やれよ」
「いや、そんな空気でも……」
「とりあえずストーブ焚いてやるから着替えろよ」
Onchiと僕で半ば強引に着替えさせる。じゃーん。
ムゥ……、なんだこの微妙なヘッドギアは？ 僕のあげたゲジゲジ帽はどうした？
「いや、だいぶボロボロになってたので新しく買いました」
これを!? 全然イケてないじゃん！
自信満々でレンズを見つめるドヤ顔がまたウザい。何故か無性に腹立たしいので、中途半端なスペースカンタを残したままOnchiとともにフロアへと去っていく。
フロアに戻るとCakraがプレイしていた。
チャクラくんとはTRIANGLEでちゃんと話をするようになった。バリバリのモヒカン頭で話し掛けづらいオーラ満載だったけれど、勇気を振り絞って喋りかけたらめちゃくちゃ低姿勢な人だった。しかも仕事が公務員。モヒカンで公務員？おかしいでしょ（笑）！！ ギャップが凄すぎる。
チャクラくんのプレイが終わると、次は LOOPオーガナイザーであるMasakiだ！
VJとレーザーとシャボン玉がコラボしていい感じだ。思わず光の世界で写真を撮るのにハマってしまう。
いや～、綺麗だなぁ……、ん？
なんだ、これは……？
VJの明かりに照らしてみると、レンズに泥が着いているのに気づく。カメラバックから布を取り出してレンズを拭くが……、あれ？ 取れないぞ？ ん～～～、んんん……!?
これ、傷じゃんかーーーーーッ!! レンズに傷ついちゃったじゃん！ えーーーー!?
試しに写真を撮ってみるが、しっかりと傷が写り込んでいる。そういえばさっきテントへ戻ったとき、カメラは三脚につけっぱなしで放置しておいたのだが……、さてはそのときに誰か倒したな。マジかー、レンズ高いのに。チーン、終わった… 。
もしかしたら……、と僕は考えた。もしかしたら、さっき僕らが嫌がるカンタを無理矢理スペースカンタに着替えさせたのが悪かったのかもしれない。恐らく三脚が倒されて、レンズに傷がついたのもそのタイミングだ。
そもそもパーティーの楽しみ方は人それぞれだし、気分のノらないカンタがスペースカンタに変身しようがしまいが、それは100パーセント、カンタの自由だ。Onchiや僕が先輩風を吹かせてどうこう言う問題じゃない。もちろん僕らは仲間として、仲がいいからふざけてやっているつもりだが、もしかしたらカンタ本人は少しは嫌な気分だったかもしれないな……。うぐ……、もしやカンタの奴、俺に呪いをかけたのか……!? 気は進まないが、ちょっとカンタに謝っておくか。
僕はガックリと両肩を落としてテントに戻る。ハァ……、テントの前でひとつため息をつくと……、あれ!? テントの入口がひらひらと揺れ、ストーブに触れている!!
寒かったからストーブを点けっぱなしにしていたが、チンチンに熱くなったストーブの上に少し空いたテントの端が乗っかって溶けているではないか！ うおおッ！ あぶねーッ、溶けてるしッ!! テントが火事になるところだった！
レンズに引き続きテントまでも……。買ったばかりのアルパカストーブにも溶けたテントがこびりついている。テントの中にカンタの姿はなく、脱ぎ捨てられたスペースカンタのコスチュームが寂しげに置かれているだけだった。うぐぐ……、カンタの呪い、恐るべし!!
僕は自炊用にちょっとだけ持ってきていたヒマラヤ岩塩をテントの入口に置いてお清めし、胸の前で十字を切って眠りに落ちていった。 Zzz……。
目が覚めるとOnchiが横に座っている。
「あ、なんかみほこ来るって。しかも Danaも一緒だって」
お、マジで!? それアガるね♪
ヒマラヤ岩塩が効いたのか、少し寝たおかげで気分も晴れた。やっぱり友達が来るのは嬉しいなー♪
フロアに行ってみるとDJはLazzzyになっていた。彼とも初めて会ったのはTRIANGLEのときで、その半年ほど後、ageHaでやっていたSOLSTICE MUSIC 20TH ANNIVERSARYのイベントのときに屋台ゾーンで話かけてくれた。
「Festival TripのA-skくんって、エースケくんですよね？」
お、読んでくれてるんだ!? ありがとう♪
「僕、ZEROってパーティーやっているから、今度野外でやるとき記事書いて下さいよ！ 招待するんで！」
おお！なんかすごく嬉しいぞ！ 僕が書いたレポートを読んで、その上パーティーに誘ってくれるとは……、なんてイイ男なんだ。
「サンキュー！ 詳細出たら連絡してよ。うちの隊長のゴルゴ内藤さんも誘って一緒に行きたいな！」
ageHaでのやりとりはこんな感じだったが、彼のプレイを見るのはこれが初めてだ。どことなく西遊記の孫悟空とイメージが重なる。独特な繋げ方も個人的にはツボだ。
Lazzzyのプレイとともに外が明るくなってきた。
Danaとみほこ、そしてみほこの娘たちのれいちゃん&まいちゃんと合流～。パーティーファミリー集合だ。君たちがいるとなんか安心するわ～。
カンタはノーマルカンタのままフロアを徘徊している。フフ……、お前の呪いなどもう見切っておるわ！ 邪悪なスペースカンタならまだしも、ただのノーマルカンタなど恐れるに足りぬ！
DJブースに目を戻すと、ん？ Lazzzy 着替えたのかな？ いや、パッと見凄く似てるけど、別人か？
ちょうどフラフラとノーマルカンタが近寄ってきたので聞いてみる。
「あの人は御影さんといって、前にとあるパーティーで初めて見たんですが無茶苦茶カッコよかったっすョ」
なるほど、確かにLazzzyくんに似てるけど、ちょっと違う。身体を大きくしてワルそうになった感じだ。例えるなら『バキ』で“地上最強の生物”の異名を持つ 範馬勇次郎とでもいったところだ。
「ヤバイっすョ、あの人」
確かに勢いが凄い。あの人殺しのようなビジュアルで内臓をエグルような音のトランスをグイグイとかけている。そしてその隣で一緒にプレイしているのはユージ。 2人合わせてAcid Scope。息がぴったりで、楽しそうにプレイする姿はめちゃくちゃアガる！ 2人の掛け合いを見てるだけでこっちもテンション上がるぜーー！！
＊ ＊ ＊
Onchiから誘われて初めて参加したパーティーだったけれど、最終的にはいろいろな友達も出来て、本当に山開きに相応しいパーティーだった。そして、まだまだ知らないパーティーがたくさんあるんだなと感じた。
交通違反の罰金を払ったり、レンズに傷がついたり、テントは入口に穴が空き、アルパカのストーブにも溶けたテントがこびりついてしまった。ショックなことも多かったが、旅にハプニングはつきものだ。お陰でスペースカンタの本性もわかったし、めちゃくちゃ楽しい、ハッピーな時間を過ごせたと思う。LOOPの皆様、関係者の皆様、ありがとうございました m(__)m
今年もいろいろな日本のパーティーに参加出来ると思うとワクワクする。
LOOPありがとーーー♪♪
