[レポート/後編] Hill Top NewYear Party 2018 @ GOA

sunrise at HillTop ,GOA
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 photos and movies by CHUN

日時:2017年12月31日~2018年1月1日
会場:Hill Top(ゴア、インド)

……前編からの続き。

深夜のHill Topに戻ると、デンマークのGiuseppeがプレイしていた。Parvati Recordsというレーベルを主催している、このシーンのベテランだ。ゴアのチャポラでもお店を経営している。

その後、スイスのAjjaが夜明けの時間にプレイ。最近のサイケデリック・トランス系の大きなフェスティバルではよくラインナップされていて、オレゴン皆既日食フェスティバルにも出演していた。ここ数年はHill Topのパーティーでも毎年のようにプレイしており、今回のパーティーでもメインアクトのひとりだった。

夜が明けるとイギリスのTristanにバトンタッチ。Tristanはキャリア20年以上のベテランだ。1999年のハンガリーから2017年のオレゴンまで数多くの皆既日食フェスティバルに参加しているほか、世界各国のビッグ・フェスティバルでもヘッドライナーに数えられるアーティストだ。AjjaからTristanにかけての日の出の時間はダンスフロアに人が溢れ、今回のニューイヤー・パーティーで一番盛り上がった時間だったと思う。

その後は、同じくオレゴン皆既日食フェスティバルにも出演したイギリスのAvalon、そしてインド人アーティストのKaran Third Eyeと続いた。

太陽もすっかり高くなった午前11時、いよいよイスラエル・トランスの大御所Astral Projectionがステージに登場! キャリア25年以上の大ベテランで、メロディアスでドラマチックな曲の展開とイスラエル・トランスに特徴的な“泣き”のトランスを得意とする、個人的には一番好きなサイケデリック・トランスのアーティストだ。これまで日本や海外のパーティーでも毎回飛ばされているが、ゴアで聴くのはこれが初めて。今回のゴア再訪はAstral Projectionの出演で決めたようなものだ。

Astral Projectionのゴアでのプレイは筆舌に尽くしがたく、最高だった。彼らの代表曲“People Can Fly”のゴアでのプレイを動画に収めてきたので、ご覧いただきたい。

今回のAstral Projectionの極め付きは、Age Of Love の“The Age Of Love”のプレイだ。同曲は1990年にリリースされ、トランスの古典として知られる歴史的な名曲。複数のリミックスバージョンがあり、今回プレイした曲は、ジャーマン・トランスの雄Jam&Spoonによるリミックス“The Age Of Love(Jam&Spoon Remix)”だったと思う。讃美歌を思わせる荘厳な曲で、ジャケットにも描かれているとおり、キリストの母マリア様が実際に目の前に現れるような神々しい曲だ。

ゴアの教会に埋葬されているフランシスコ・ザビエルと数人の天使が目の前に現れると、彼らに導かれるかたちで次第に身体が宙に舞い上がり……、やがては天上で微笑むマリア様まで飛んでいってしまったかのようだった。まさにAstral Projection(アストラル投射)。ゴアの地でそこまで持っていくとは……、さすがはイスラエル・トランスの大御所。自分の中では今回一番のピークだった。わざわざゴアまで来た甲斐があったというものだ。

太陽が高い昼間の時間になってくるとダンスフロアの砂埃がひどくなってくる。その砂埃を落ち着かせるためにホースで水をまくのは、ゴアのみならず、世界各国のパーティーでもお馴染みの光景だ。

フロアに水まく人 HillTop, GOA

前日の夜中から遊んでいたので、さすがに疲れてきた。South Anjunaのニューイヤー・パーティーでもそうだったが、ゴアのパーティーではたいてい、インド人のおばちゃんがヤシの木の下にゴザを広げてチャイ屋を出店している。チャイを頼めばそのゴザに座って日陰で休むことができるので、椅子や敷物を持っていく必要はない。

早速チャイを注文し、最初は座って休んでいたものの、終いには靴まで脱いで裸足になって寝転んでいた。“ぶっ倒れていた”という言い方が正確かもしれない。他の国だったら、フロアのすぐ近くで寝転がるのは憚られるパーティーもあるだろうが、ゴアではまったく問題ない。ゴアのパーティーでは、ダンスのみならず、ゴロゴロしながらパーティーが楽しめるのも醍醐味のひとつと言えるかもしれない。とはいえ、ゴザにおしっこをしたインド人のお客さんがチャイ屋のおばちゃんに怒られていたので、最低限のマナーは守るべし。

チャイ屋で休む GOA

以前はゴミはポイ捨てが習わしだったが、今回はフロアにゴミ箱が設置されていた。ただそれでも、ビール瓶などをフロアにポイ捨てする人もいるため、割れた瓶の破片がダンスフロアに散乱していることもある。裸足やビーチサンダルで楽しみたいところだが、安全のため、パーティーへ行くときには底がしっかりとした靴を選んだ方が無難だ。おそらく割れたビール瓶を裸足で踏んだのだろう、泣き叫ぶ白人の女の子を周囲の人たちが必死で落ち着かせている光景を目にした。足元には十分な注意が必要だ。

ゴアは観光客が多い分、彼らを狙った泥棒も多い。パーティーでぶっ倒れるのは自由だが、気づいたときに財布やカメラがなくなっていた……などということがないように、バックに南京錠で施錠するなりして、貴重品にはくれぐれも注意してほしい。

休憩中 HillTop, GOA

パーティーの後半は休んだり、踊ったり、会場を出て散歩に行ったり、再入場してまたチャイ屋のゴザでゴロゴロしたり……、結局音がストップした1月1日の22時までHill Topにいた。

パーティー終了後、バガトールとチャポラの間にある日本食レストラン『Sakana(サカナ)』で遅い夕食をとる。イスラエル人のご主人と日本人の奥さんが運営する店で、日本風の内装も素晴らしく、壁には日本酒のラベルがたくさん貼り並べられていた。冷蔵庫の隅にはドイツの老舗フェスティバル ANTARIS のステッカーも見える。もちろん食事も美味しい。

sakanaの壁の貼られた日本酒ラベルとantarisのステッカー

前日の昼間にも来ていたためか、お店のご夫婦がわざわざ声を掛けてくれた。ゴアでお店をやるのは大変なことも多いだろうが、今後も頑張っていただきたい。ニューイヤーの夜はたくさんのお客さんで賑わっていたし、元旦昼間のHill Topで熱いプレイを聴かせてくれたAstral Projectionのメンバーもチルアウトに来ていた。

ゴアの日本食レストランsakana

翌日1月2日には、もう帰国だ。宿で呼んでもらったタクシーに乗り、ゴア空港に向かう。ゴア空港まで約1時間、タクシー代は1400ルピー(約2520円)だった。

空港への道中、運転手と少し話をした。地元ゴアのアンジュナ出身で、マンチーズ・レストランでも10年間働いていたそうだ。マンチーズは1996~2012年までアンジュナ交差点近くで営業をしていたが、現在は閉店。店のオーナーはバガトールで宿(Munchies Inn)をオープンし、その宿にはレストランも併設されているらしい。次回の訪問時には是非立ち寄ってみたい。

GOA お土産

近年のゴアには日本人やイスラエル人は以前ほど多くなく、ここ10年ほどはロシア人トラベラーが多いようだ。実際、今回のHill Topのニューイヤー・パーティーには2000~3000人のオーディエンスが入っていたように思うが、その中で日本人は10人ぐらいと少なかったように思う。イギリス人、ドイツ人は相変わらずたくさん来ているということだ。

「ゴアは終わった」

そんな声は以前からよく聞いた。確かに欧米人のヒッピーばかりが集まっていた時代はすでに過ぎ去ったのかもしれない。初めて訪問した2000年初頭のゴアのパーティーは、夜の時間はインド人が多く、夜が明けると欧米人ヒッピーが増えてくる感じだった。しかし近年では夜も昼もインド人のお客さんが多く、今回のHill Topのニューイヤー・パーティーでも、外国人とインド人の割合は半々ぐらいだったように思う。

ゴアのパーティー

5000ルピー(約9000円)の入場料を払えるインド人の多くは中産階級以上で、デリー、ムンバイ、バンガロールなどの大都市から来ている人も多い。かつては欧米人を中心とする外国人のカルチャーだったが、地元インドにも根付いてきたということだろうか。出演していたインド人DJ・アーティストもなかなか良かった。

音自体も1970年代のプログレッシブ・ロックやサイケデリック・ロックと、1990年代のゴア・トランスではまったく異なるだろうし、現在のサイケデリック・トランスも1990年代の音とはやはり異なる。デコレーションにしても、以前はサイケデリックなバティックなどを中心とした簡素なものだったが、映像を観てもらえばわかるように今では最新のテクノロジーを反映した凝ったデコやVJにパワーアップしている。

時代とともに変わり続けるゴアのパーティー。若いインド人のお客さんも多いが、年配の欧米人のお客さんも相変わらず集まっている。今回メインで参加したHill Topのニューイヤー・パーティーは“ゴア・トランスの殿堂”という名に相応しいクオリティで、個人的にはオレゴン皆既日食フェスティバルと同じぐらい満足感のあるパーティーだった。

HilltTop でのトリスタン

Hill Topはオフィシャルムービーの制作にも力を入れていて、YouTubeでも視聴可能だ。ムービーでも盛り上がっているように見えるが、今回の訪問で、現地のパーティーが実際に盛り上がっていることを実感することができた。ベテラン・アーティストも定期的に訪れ、ゴアを盛り上げていることは事実だし、Full Power、Full Energyのパーティーは健在だ。

Hill Top Official Movie

ゴアにはパーティー慣れしている人も多いが、初心者も多い。慣れていなくとも、多少の醜態をさらしてしまってもまったく問題ない。僕にもゴア・デビューの際におかした、ここでは紹介しにくい初心者ならではのお恥ずかしいエピソードがたくさんある。

ゴアのパーティーで変わらないのは、初心者でもベテランでも、どんなフリークスをも受け入れる懐の広さ、自由な雰囲気、南国の開放感だろう。実家の段ボールを探してみると、2001~2002年のHill Topのニューイヤー・パーティーの写真が出てきた。それらの写真を見ていると、パーティーの雰囲気や本質的な部分は今でもあまり変わっていないように思う。

GOA NewYear 2001 HillTop

GOA NewYear 2002

GOA NewYear 2001 HillTop

今回はわずか2泊3日のショートトリップだったので、行けなかった場所も多かった。もちろんもう少しゆっくり滞在したかったが、それでも結果的には大満足のゴア訪問だった。1週間から2週間、出来れば1ヶ月……、と滞在期間を長めに取れるのが理想だが、ニューイヤーや2月のHill Top Festivalの時期を狙って行けば、短期間の弾丸TRIPでも十分に楽しめることがわかった。

ゴアからの帰国

今もなお多くのトラベラーを惹きつけるゴア。その輝きは決して色褪せてはいない。5年、10年、20年……、しばらく行っていないリピーターの人も、これから初めて行く人も、Festival Tripperなら是非現在進行形のゴアのパーティーを体験し、その醍醐味を感じてほしい。

 

【参考】
★今回のフライト・スケジュール

▶往き
12月30日(土) ‪
 東京(成田)11:15‬発 – ムンバイ18:25‬着
12月31日(日)
 ムンバイ02:10‬発 – ゴア03:20‬着 
▶帰り
1月2日(火)
 ゴア15:20‬発‪ – ムンバイ‪16:35‬着
1月2日(火)
 ムンバイ20:00‬発‪ – 東京(成田) 翌‪07:15‬着

★ゴア空港からアンジュナへは空港内タクシーカウンターの利用が安心
 定額料金で片道1400ルピー(約2520円)前後

ゴア空港 タクシーカウンター

★弾丸TRIPの場合、現地の宿もネット等で予約がベター(クリスマスや年末年始は1泊シングル6000円前後が目安)
agoda
Booking.com

宿、ゴア、アンジュナ

 

 

~~~レポートここまで~~~

 

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