[レポート] ECLIPSE2012 at Cairns, Australia

eclipse2012 cairns,australia
Pocket

all photos by CHUN

日時:2012年11月10日(土)~16日(金)
会場:ケアンズ、オーストラリア
出演:D‐nox, Emok, Etonica, Ree.K, Kotaro, GMS, GAUDI, Giuseppe, GusTill, TsuyoshiSuzuki, SecretCinema, TAKA, OliverLieb, PerfectStranger, Tristan, Tipper, dubFX & flowerfairy, FreqNasty, TijuanaCartel,OKA, MASA, Psycatron, SpaceTribe, SolarFields, Ritmo,ShaneGobi, and more
公式サイト:http://www.eclipse2012.com/

今回のレポートは長年の仲間であるかつプロ(Katsu Projection)が書いてくれたものだ。文章は送ってくれたものをほぼそのまま掲載し、部分的に囲み文で補足をつけ足してある。写真はすべてworld travelerのCHUNが撮影したものを掲載させてもらった。

 

2012年11月、ついに皆既日食を再び見るチャンスを得て俺はオーストラリアのケアンズに到着した。

思い起こせば10年前の2002年に同じオースストラリアの“Outback Eclipse Festival 2002”で俺は初めて皆既日食というものを体験し、想像をはるかに超えたその美しさ、迫力に完全に魅了された。しかし、その時の皆既日食はたったの20秒。記憶には鮮明に残ったがなにせ短過ぎた。あの美しい皆既日食をもう一度見たい! それが俺の人生の次の目標となった。

コンピレーションCDちなみにかつプロは、仲間たちと一緒にOutback Eclipse Festivalの様子を収めたコンピレーションCDをプロデュースしている。また、その時の仲間のひとりはそのままオーストラリアに移住。メルボルンで日本食レストラン『WABI-SABI』を立ち上げ、今では2号店もオープンし、予約必須の超人気店となっている。

6年後、皆既日食ではないがそれに近い金環日食があり、日食気分を味わうべく日本の伊豆大島で行われた“金環日食フェスティバル2008”に参加した。しかし、蝕の瞬間は曇りで何がなんだか全然わからなかった。

まあ、どうせ皆既日食じゃなかったと気を取り直して翌年、2009年に日本の奄美大島で21世紀最長の6分42秒の皆既日食を見ることができる、“奄美皆既日食音楽祭2009”に参加。しかし、期待していた皆既日食の瞬間はまたまた曇り。皆既日食なのに、”よくある曇りの夕方”くらいにしかならず、こちらは想像をはるかに下回る迫力の無さに、唖然。7年間、心から楽しみにしていた瞬間があっけなく終わってしまった。

2009年の皆既日食で皆既時間が最も長かったのは悪石島の6分38秒(21世紀最長)で、奄美皆既日食音楽祭の会場での皆既時間は凡そ1分50秒程度。余談だが、2008年の金環日食フェエスティバルでも2009年の奄美皆既日食音楽祭でもDJ TSUYOSHIがプレイする時間帯は激しい雨だったという。本人気にし過ぎのため、業界内ではこの話はタブーだという……(;一_一)

判ってはいたが快晴じゃないとダメなんだ。皆既日食のすばらしさを100%きっちり体験するには運も必要であり、皆既日食がいかに貴重で尊い瞬間なのか、心から理解できた。この時、一瞬心が折れそうになったが、逆にこれをバネに皆既日食をもう一度見たい思う気持ちが更に強くなっていった。

そして2012年、俺は10年ぶりにオーストラリアの大地を踏みしめている。レンタカーでケアンズから北上し、約2時間ほどのドライブでフェスティバル会場へと辿り着いたのだ。

bus to eclipse 2012

eclipse village,cairns,australia

ケアンズからさほど離れてはいないが、熱帯雨林気候に属するケアンズと比べて空気は完全に乾ききっていた。草木はほとんど見当たらず、人がまったく住んでいない乾燥地帯だ。暑さと乾燥が過酷ではあったが、快晴であることがベストな日食観測の必要条件であることを考えると、この場所を会場に選んだのは正解に違いない。

Eclipse2012

会場はとにかく広く、ステージもテントサイトもたくさんあって迷子になりそうだ。そして俺が辿り着いたテントサイトからメインフロアへの道のりは、カンカン照りの砂漠を歩いて20分ほど。一度テントを出ると、よほどのことがない限り戻りたくはない距離だった。

eclipse 2012 map

会場内ではたくさんの日本人を見かけた。ケアンズは日本から直行便も飛んでるし日本からアクセスしやすいからだろう。大きなキャンパー・バンをレンタカーしているグループもいて、みんなそれぞれフェスティバルを楽しんでいるようだ。

バーガー屋、eclipse 2012,cairns,australia

chillstage,eclipse 2012,cairns,australia

eclipse festival 2012,cairns,australia

(タイムテーブルはクリックで拡大)

そして、ついにその瞬間が2012年11月14日の朝7時過ぎに訪れる。空は快晴。日食サングラスをかけて太陽を見るともう99%は欠けていて超極細の三日月のようだが、弧になったそのわずかな太陽からは直接目で見る事ができないほどの強烈な光が出ていて、サングラスを外せば普通の昼間となにも変わらない。太陽のパワーのすさまじさを感じる。

日食を見つめる参加者たち

just before total eclipse

そして、最後の1%も完全に欠けて皆既日食となった瞬間、全てが劇的に変化した。

黒い太陽が白いコロナを発して空に浮かんでいる。空の大部分は暗くなり星がみえる。一瞬でこの世は反転したんだ。俺が見たかったものがやっと今、10年かかって目の前に姿を現した。

eclipse2012 cairns,australia 皆既日食の瞬間

気がつけば俺は号泣していた。まさか泣くとは思ってもみなかった。皆既日食のあまりの美しさ、尊さに自然に涙があふれとまらない。途中で写真を撮るのもやめた。ひたすら、目の前の黒い太陽をこの目で見て、脳裏に焼き付ける事だけに集中した。そして最後は皆既日食で最も尊い瞬間といえる、ダイヤモンドリング。暗黒の世界から通常の昼間に戻る瞬間だ。

皆既日食と瞑想 eclipse2012,cairns,australia

白く見えたコロナの輪の一部が、ほんの一瞬だけ温かいオレンジ色の光を放つ。最高に綺麗な現象だ。天照大神伝説が自然と頭の中によぎる。昔の人はこれを見たんだ。ある日突然、太陽が黒くなり、この世の終わりと慌てふためいて神に祈り、その願いが通じて太陽がひょっこり岩の間から顔を出し人々は安堵の表情へと変わる。ダイヤモンドリングの温かいオレンジの光は、そう解釈するのにぴったりだった。

皆既日食フェスティバルの会場

皆既日食が終わり、近くにいた友人や初めてその場であった人々と抱き合い、その感動を分かち合った。皆既日食フェスティバルの良さはここにある。そこにいる大勢が強烈な体験をシェアすることで心が一つになれる。英語も日本語ももはや関係ない。ダンスフロアの誰とでももはや壁はなく仲良くなれる。同じ皆既日食を共有した仲間として。

dancefloor,eclipse2012,cairns,australia

すっかり気分の高揚した俺はその後20時間メインフロアで踊り続け、自身の持つ最長フロア滞在記録を更新した。

皆既日食フェスティバル会場、cairns,australia,2012

皆既日食フェスティバル、cairns,australia,2012

皆既日食フェスティバル、cairns,australia,2012
イベント終了後、会場には行かずケアンズの街で皆既日食を見る決断をした友人に会って感想を尋ねたが、なんと街では曇りで皆既日食は見る事ができなかったとのこと。会場とケアンズの町はさほど離れてはいないので、まさに明暗を分けた決断だった。

もし、これでまた曇りで皆既日食が見る事ができなかったら俺はどうなっていたのだろう。きっと、グレてアンチ皆既日食運動家にでもなっていたかもしれないな。
(終わり)

Pocket