[レポート/後編] Re:birth Festival 2017@鋸山採石場跡地

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Re:birth 後編
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日時:2017年5月12~14日 
会場:鋸山採石場跡地(千葉)

……前編からの続き。

焚き火に当たって湿った服を乾かしながら体を温める。雨は止んだ。会場全体が流されるんじゃないかと不安になるほどの土砂降りだったが、とにかく雨は止んだ。とういうことは……あとはアガるだけだ。

2日目もまた、我々の夜はヘンタイカメラ(AKIRA ARASAWA)からはじまった。今度はトランス・ステージではなくマーケット・ステージだ。ちなみに同じ時間、トランス・ステージではヘッドライナーの1人であるGAUDIがプレイしているはずだが向こうは2時間。ヘンカメのプレイは1時間だから、こっちを楽しんでから向こうへ行ってもまだ1時間の余裕がある。とにかく我々はヘンカメ好きなのだ♡

辺りが完全に暗くなり、夜が本格的になってくると思いのほか気温が下がってくる。風も吹きはじめた。夕方焚き火で乾かしたとはいえ、アウター替わりのレインウェアはまだしっとりと湿っているし、靴に至っては中まで完全に濡れたままだ。とにかく足が冷たい。

家を出る前から雨予報だったので、どうせ靴も泥だらけになるだろうからと、汚れてもすぐ洗えるようにビブラムのファイブフィンガーズとビーサンで来たのだが、夜寒くなるとは思わなかった。あとはアガるだけ……、だったはずだが。

教訓:靴が濡れると夜が最悪。口を絞れる長靴があると……すげー羨ましい。

KOTAROくん(Wonkavator)によるclubberiaでのインタビューによるとGAUDIはPCを使わず、マイクパフォーマンスやさまざまな楽器・エフェクターなどを使ったライブで知られているらしい。

GAUDIのLIVE

PCのシーケンスに並べた音をそのまま再生しているだけのようなラップトップ・ライブも散見される中、GAUDIは「毎回ライブで表現する際は、同じことを2度したくない」と語っている。その唯一無二のライブが今まさにトランス・ステージで進行中。急がねば、でも……。

「ごめんCharmmy、先行ってて……」

だって足冷たいのよ! 感覚痺れてきちゃってダンスどこじゃないのよ! ということで自分は一時車内に避難。Charmmyはひとりでトランス・ステージへと歩いて行った。

さて、昨夜も一睡もしていなかった俺は、気がつけばゆりかごのような車中でぐっすりと眠ってしまった。まぁ、車に戻った時点でこうなることは薄々予想していたが……、ていうか寝袋まで出してるし! はじめっから眠る気満々だったじゃん、俺!


movie by FULLMOON MONDO

「月出てましたよー」と言いながらCharmmyが車に戻ってきたときにはすでに深夜。GAUDIのライブが終わったどころか、もう日付も変わって3DAYSパーティーの最終日に突入していた。

5月14日(日)天気:晴れときどき曇り、そしてパーティー

Charmmyと入れ替わりで車の外に出る。風はまだ吹いているが、眠って体力が回復したせいか、意外と寒さは大丈夫そうだ。地面にはところどころに水溜まりが残ってはいるが、注意して歩けば水にはまることもないだろう。どっちにしろもうビーサンしか残ってないし、あと何時間か踊っていれば朝が来る。つまり、N・O・問・題。

トランス・ステージでしばらく踊っていると、もう夜空から闇が吸いとられはじめる時間だ。中央の池とその対岸に見えるマーケット、フリースタイル、テクノの各ステージ、そしてテントサイトの灯りが幻想的過ぎて、少しの間動きを止め、まわりの景色を眺める。光の速度で時間が過ぎてゆく。

明け方のフェスティバル会場

なんとなく何かが気になって、テクノ・ステージに向かって歩きはじめた。通りがかったフードエリアではご機嫌な外国人たちが花火を打ち上げてハシャイでいる。辺りはすでに白みはじめ、俺はマーケット・ステージを抜けてそのままテクノ・ステージへの坂道を上りはじめる。逆方向から千鳥足で降りてくる男。すれ違いざまに声を掛ける。

「おいコラ、ちょっと待て」

「…… ( ゚Д゚)ハァ? 」

「遅いんだよ、登場するのが」

「???……、!」

俺たちは抱擁を交わす。そもそも今回Re:birthへ来ようと思ったきっかけは、この男から電話がかかってきたからだ。1ヶ月くらい前だったか、随分意気込んだ調子で誘ってきた。

「俺、Re:birth行くんでゴルゴさんも絶対来てくださいよ! 一緒に踊りましょうよ!」

Re:birth ARTpaint

実は4月の春風でも連絡を取り合っていたのだが、もの凄い人の数で結局会えずじまいだった。そもそもこいつとパーティー会場で会うのはいつ以来だろう?  トルコでの皆既日食フェスティバルのことはよく覚えている。オーストラリアのRainbow Serpentで会ったのはその後だったか? どっちにしても10年近く前の話だ。結婚式にも参加した。いや、ただ参加しただけでなく、結婚式の模様をビデオカメラで撮影し、あの世の手土産にも最適な感動的ウェディング・ムービーとして手渡しているのだ。初めての出会いは2005年のバーニングマン。いつも双子の兄弟2人で一緒にいた。

「兄貴はどうした?」

「いや~、昨日来てたみたいっスけど、仕事あるってすぐ帰ったみたいスよ」

兄:ケンジ、弟:コージ。2人あわせてWエロジ。DVD『デラシネ03』に収録されたバーニングマン映像のオープニングで、素っ裸のままオーストリッチの毛皮がどうだこうだと言ってるアホな2人組がこの双子だ。そして今回飛行機に乗り送れたCharmmyとのLINEのやり取りに名前が出てくるケンジというのは、まさにこのWエロジの片割れ、コージの兄貴のことだ。

「もうCharmmyには会ったのかよ?」

「いやー、俺昨日の夜着いたばっかで……、着くなり訳わからなくなっちゃって放浪してたとこですよ」

「車で寝てるから起こしにいこうぜ」

もともとCharmmyとWエロジは地元が近い。今はどちらも引っ越してしまっているが、震災の前後はよくつるんで遊んでいたようだ。日月神示で知られる麻賀多神社の前でも集まってひと暴れしたらしい。確か年齢も近いはずだ。

車内でぐっすり寝込んでいたCharmmyを起こし、3人で再会の祝杯をあげる。頭上を見上げればまだ曇り空だが、足元の水溜まりはほとんど消えている。夜を越え、1日がはじまった。

祝杯の勢いのままメインフロアに向かおうとすると、Charmmyが「その前にテント畳んじゃいませんか?」と牽制球を投げてくる。おお、そういえば2張りのテントのうち1張りは大雨の前に完全撤収済みだが、もう1張りは中の荷物だけ片付けてそのまま張りっ放しだ。

「じゃあ、俺も歯磨いたり準備してからフロア行きますよ」

「わかった、じゃあ後でメインフロアで」

我々2人はコージと別れてテントを回収しに向かった。まぁ、中身は空っぽだからパーティーが終わってからでもサクッと畳めるのだが……。

「それが……、昨日の晩テントサイトを通りかかったとき、我々のテントが糸の切れた凧みたいに暴れまわってたんですが……、なんなんですかねぇ」

「……?」

確かに昨夜は風が少し強めに吹いていたが、なぜ我々のテントが……? 中身は空っぽの我々のテント……って、そーいえばペグ打ってねえじゃん! 地面硬くて、3本くらいペグ折り曲げて諦めたじゃん! まぁ荷物あるから大丈夫だろって……でもその荷物、大雨の前に車内に全部運び込んだからテントの中は空。切り株みたいな重しにロープを1本絡めて辛うじて固定してあるだけで、そよ風が吹いてもコロコロと転げまわる状態だ。やっべー。ちょー忘れてた!

今更ながら足早にテントへと向かう。すると我々のテントはその場にきれいに畳まれていた。むぐ……、これは……、恐らく近隣のテントの住人が凧のように周囲に迷惑をかけまくっている我々のテントを見かねてササッと畳んでくれたに違いない。うわー、やっちまったぁ。

まだ朝早いからか、周囲に人影はない。テントの上に置かれていた2本のポールを折り畳み、もう一度周囲を見回すと、隣のテントから女のコが出てきたところだ。サッと彼女に近づき、謝りつつ事情を説明する。しかしテントを張ってペグを打たないなんてマナー違反もいいところだ。

ただでさえタープの代わりにドンキで買ったペラペラのブルーシートをだらしなく張ったりして周囲の景観を損ねていた。遠くから見ても近づいて見ても、そこだけ工事現場のような雰囲気を漂わせていた。挙句に凧騒ぎだ。周りの人たちは大迷惑だったことだろう。我々はとにかく頭を下げ、そして後ずさりするようにその場からフェードアウトしたのだ。

教訓:…………ていうか、ホンットごめんなさい! そしてテント畳んでくれた方、ありがとうございました!

さて、済んだことは済んだことで気を取り直し、我々はメインフロアへと向かった。何はともあれテントも回収したし、もう心配事はない。

威勢のいい音に合わせてドカドカ踊っていると、スピーカー前に見慣れた面影が。向こうも気づいてニヤリと笑う。かつプロだ。出会いは2002年、オーストラリア大陸の不毛の荒野アウトバック。皆既日食を祝うフェスティバル会場だ。そして2006年酷暑のイタリア、SONICA FESTIVALでも再会した。EPSON時代にブレイク直前の優香ちゃんをCMに起用した輝かしい過去を持つ男、KATSU PROJECTION。略してかつプロ。本名は知らないが、とにかくおもてなし上手な男だ。

俺はビーサンを脱ぎ、裸足で踊り出す。昨日の大雨で地面がまだところどころ柔らかい泥のようになっている。足の指でその泥を掴むようにして踊る。地面から足の裏へ、エネルギーが伝わってくる。

ステージ上にはSYSTEM7の2人が登場し、それに合わせるようにMAGUとYUMIYAの2人もカメラを手にして現れた。歯を磨きに行ったまま行方不明になっていたコージもようやく戻ってきた。

舞台は整った。俺たちは踊る。そして待ちに待っていた太陽が、ここでキタかーっ! 雲を突き破ってダンスフロアに降り注ぐ。それぞれが、それぞれの物語の途上でこのダンスフロアに立ち寄り、足を踏みならす。この場所と、この時間に辿り着くまで、いろいろな道のりがあったはずだ。その道のりのすべてがダンスフロアで渦を巻き、エネルギーとなって上昇する。次の旅がはじまるまで、ほんのしばらくの間だけ俺たちは時間と空間を共有し、極彩色の夢を見る。太陽が照り付け、シャボン玉のように音が弾ける。パーティーだ。それぞれがパズルのピースを持ち寄り、Re:birthに集まった全員でパーティーを創りあげる。P・A・R・T・Y。

SYSTEM7とSON KITEのMarcusがこの場限りのセッションを披露し、MarcusからYUTAへ、YUTAからPSYCOPODへ、そしてDAIJIROへとバトンが引き継がれていく。

よかった。3DAYSのフェスティバルに参加するなんて何年ぶりかわからないけど、ホント来てよかった ♪ と満足していると、「ゴルゴさん、あそこ、あの上行きました?」とかつプロが聞いてくる。

「え?」

「あそこですよ、あの岩が途切れてるとこ」

かつプロが指さす先は、まさにマチュピチュでいえばワイナピチュ山の麓にあたる場所。今いるトランス・ステージからグルっと回って駐車場を通り過ぎ、さらに上へ上へと進んでいった辺りだ。

「あんなとこまで行けんの?!」

「行けますよ。駐車場の道をずっと真っすぐ歩いてれば20分くらいで行けますよ」

「20分じゃ着かないだろー、駐車場までだって結構かかるぜ」

「いやー、男の脚だったら20分で行けますって、ちょっと速足であるけば」

「ふーん……」

しかしダンスフロアもいい感じだ。もともと今プレイしているDAIJIROは好きなDJだし、この後はGROUCHだろ? 

「だからぁ~、20分で行けますよ。帰りは下りだからもっと早いし」

「いや、見るからに遠いし!」

しかし確かにこの会場の象徴のようなあの岩壁の、すぐ近くまで行けるというのは魅力的だ。聞けばかつプロは昨年のRe:birthでもあの場所まで足を運び、今回のRe:birthでもすでに2回ほど上っているという。とは言っても絶対遠いよなぁ……。

「そんなにいいの?」

「いいですよ。絶対行った方がいいですよ」

わかったよ、もう。それだけ誘ってくれるなら連れてってもらうよ。俺はCharmmyにも声を掛け、3人でフロアを離れて歩きはじめた。フードエリアを通り過ぎ、マーケット・ステージを越えて歩き続けている間にかつプロの友達の女のコ2人とすれ違う。

「あれ? かつくんどこ行くのぉ?」

「この2人まだ上に行ったことないっていうからさ、連れて行ってあげるんだよね。よかったら一緒に行かない?」

「……、行こうかな」

なんと、彼女たちもすでに目的の場所まで行ったことがあるというのに、もう一度一緒に歩いていくという。えぇ?  結構な距離だよ?

とにかく我々は総勢5人で歩き続けた。途中、上から降りてくる人と数人すれ違ったから、やはりこうして上まで歩いていく人もいるようだ。意外と活動的なのね、みんな。

トランス・ステージから見上げたときは遥か遠くだと思ったが、実際に歩いてみると結構ぐいぐいと近づいていく。確かにあの岩壁の切れ目から下を見下ろせば、それなりの景色には違いない。実際かつプロやこの女のコたちも1度ならず何度も足を運んでいるのだ。などと考えていると、だんだん歩くペースが早くなってくる。もう、早く見てみたい♪

そして、ようやく辿り着いた。ちょっと小高くなった縁に上って下を見ると……、
お……、
おおおお~~~~~。
いいねぇ~~~~~〜〜。
確かにいいね~~~~~~~。

「どうですか?」

「いいねぇ~~~~~」

「でしょ?」

かつプロと上るフェスティバル会場Re:birth

左下で女のコに挟まれて笑っているのが、かつプロだ。まぁ、この写真を見てもたいしたことないと思うかもしれないが、確かに歩いて行く価値のある場所だった。かつプロの話ではここから見るパーティー会場の夜景もいいらしい。次回のRe:birthでは早速初日の夜から歩いてきてみよう。かつプロ、ありがとね♪

結局トランス・ステージのGROUCHは聴き逃した。昨夜のGAUDIもそうだし、2日目の大雨でDachamboもMIRROR SYSTEMも逃してしまった。他にも聴きたかったのに聴けなかったアーティストはたくさんいる。でも、もちろんそんなことは大した問題じゃない。

高知から来たCharmmyと久々に長い時間一緒に過ごせたし、16年ぶりにMAGUとも再会した。JIROKENのPARADISE BOOKSに初めて足を踏み入れたし、YUMIYAと知り合うことも出来た。コージはいつの間にかフェードアウトしてしまったが、歯磨き前に力強いハグを交わした。ヘンタイカメラは相変わらずいい調子だったし、最後はかつプロに会場の隠れスポットを案内してもらった。もちろん他にも書ききれない程いろいろな出来事があり、それらひとつひとつは俺の体がしっかりと記憶してくれているはずだ。

Charmmyが飛行機に乗り遅れるところからはじまった今回のTRIPも、名残惜しいがこれにて終了だ。少しだけ色と形を変えた自分のピースを手土産にして、それぞれの旅へと戻っていく。そして1年後、俺たちはまたこの場所で出会うだろう。その時、仲間たちがどんなピースを持ち寄ってくるのか、今から楽しみでしょうがない。

そうだ、最後にRe:birth2017のAFTER MOVIEを紹介したい。と思ったが、何故かまだYouTubeには見つからずfacebookの公式ページでしか見られないようだ。最後の感動的なドローンのカットはMAGUが撮影したものだ。思わず涙ぐんでしまう (//∇//)

 

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