[レポート] GLOBAL ARK 2021

GLOBAL ARK 2021
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日時:2021年8月27〜29日(金〜日)
会場:ほたか牧場キャンプ場(群馬)

良質なテクノミュージックを主体に開催されてきた野外フェスティバル GLOBAL ARK が2021年で10周年を迎えた。とても喜ばしいことだし、素直に祝辞を伝えたいと思う。10周年おめでとうございます!!

 

※GLOBAL ARK 10年間の歩みについては文末のリンク先を参照

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

本来ならたくさんの祝辞で祝われる10周年だったはずだが、実際には波乱含みのイベントとなり、その影響は今も続いている。

 

フェスティバルは8月27日〜29日の3日間に渡って開催されたが、その2日目、8月28日の午前中に“「不織布マスクNG」ルールの音楽イベントにネット上で批判の声”と見出しのついたネット記事がヤフーニュースに掲載され、コメント欄で炎上したのだ。

 

問題となったのは、GLOBAL ARKのHPなどに記載してあったイベント参加時の注意事項のひとつ “シン・ドレスコード:おしゃれマスク” だ。夏場のマスク対策として推奨されるマスクがカッコ( )書きの中に記載され、最後に『不織布マスクはNG』という文言があったため、その部分だけが切り取られて炎上の火種となったようだ。

 

新規感染者数推移Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE(9/28配信)より

 

確かに今年の8月と言えば国内でもデルタ株が猛威を奮い、新規感染者数が連日で2万5000人を超える日もあった。そんな中で『不織布マスクはNG』という言葉だけを見れば非常識だと思う人もいるだろう。しかし『不織布マスクはNG』の理由については、注意事項欄の下部に細かく説明があり、それをきちんと読めば主催者の意図は伝わるようになっていた。

 

“ドレスコード:おしゃれマスク” にしても『不織布マスクはNG』にしても昨年の開催時にも記載があったもので、どうすれば参加者にマスクをつけてもらえるかに焦点を当て、感染防止対策を積極的に楽しみながら行ってもらうことを目的としたアイデアだ。実際、ダンスイベントはコンサートなどとは違って “ダンス” という体の動きが伴うため、マスクはすぐにズレてくるし、隙間なく正しく、そして長時間着用し続けることは難しい。もちろん会場では不織布マスクでもおしゃれマスクでもウェルカムだったし、マスクの種類にかかわらず着用を呼びかけるアナウンスが始終おこなわれていた。

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

そもそもGLOBAL ARKのイベントとしての規模は、過去最大の集客数であった昨年でも千数百人程度で、その多くは以前にも参加したことのあるリピーターだ。それ以外の人についても、スタッフやリピーターの友達の口コミで参加した人がほとんどだったのではないかと思う。つまり、もともと話のわかる仲間たちに向けた文章だった、とも言える。最初からイベントに参加する意思もないまったくの部外者が、ある一部分を切り取って勝手に誤解・曲解をし、面白半分で好き勝手に騒ぎはじめたというのが炎上の実情ではないだろうか。

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

フェスティバル開催中の3日間、自分はテントを張って会場で過ごした。「炎上しているらしい」との噂は耳にしたが、詳細はわからなかったし興味もなかった。実際に目の前に広がっている光景は平和そのもので、すみずみまで幸せに満ちていて、重要なのはそれだけだった。

 

フェスが終わって家に帰ってみると、ちょうど同じ時期に名古屋で開催されていた別の音楽フェスティバル『波物語』がさらに大きく炎上していて、その炎の余波もあってかGLOBAL ARKの炎上も予想より大きいものだった。マスコミやSNSではここぞとばかり「フェス叩き」が繰り広げらている状況だった。

 

そもそもパーティーやフェスティバルなどの芸術・娯楽イベントはコロナ禍のもとで“不用・不急”と位置付けられ、眼中なきものとして扱われてきた。GO TO TRAVELやGO TO EATはあってもGO TO PARTY!! なんて施策はいまもって聞いたこともない。我々が普段慣れ親しみ、大切にしてきた音楽やアートは生活に不必要なものとして切り捨てられたわけだ(とはいえ、イベント開催やアーティストに対する補助・支援などもないわけではない)。

 

そのような状況で、GLOBAL ARKの1週間前に日本最大の音楽イベントであるフジロック・フェスティバルが開催された。自分はフジロックには参加したことがないし、今年もYouTubeの配信で楽しんだだけだった。しかし驚いたのは、コロナ以降2年ぶりにようやく開催されたフジロックに対し、ツイッターで「#フジロックの開催中止を求めます」といったハッシュタグが広がるなど、開催そのものに批判的な人たちが大勢いたことだ。実際のところ大勢いたのかどうかはわからないが、少なくともそのように感じられた。象徴的なのは以下のnoteがツイッターでびっくりするくらい拡散されていたことだ。

 

フジロック2021に、音楽ファンはもっと怒っていい

※現在リンク先の記事が削除されているようです

 

記事のタイトルを読んだとき、自分は「そうだそうだ!フェスの中止だとか延期だとか、自粛ばっか要請しやがって!我々は自由なんだ、この状況に対してもっと怒っていいんだ!」と心の中で頷いたのだが、記事の内容を読んでまったく真逆の主張だったことに愕然とした。しかもこの筆者は「ちょっと前まで、音楽イベンターをやっていた」らしい。自分は業界内の人間ですよ、と言いたいのだろう。もちろん個人がどのような意見を持っていようと自由なわけだが、この記事のひどいところは「音楽ファンは……」などとタイトルをつけることで“音楽ファンならこう考えるべき”という方向づけを行い、フェス開催への批判の旗振りをして音楽ファンの分断を煽っているところだ。ちなみに記事の書き出しの一文はこうだ。

 

「これから苗場の人だけが2週間経過する亜空間に飛ばせないかな……GANTZ的な感じで……」

 

そしてGLOBAL ARKの件が炎上しているころ、割りと自分もリスペクトしていたDJがGA開催について批判的なツイートをしているのを見かけてがっかりした。どちらにも共通しているのは、書いた本人は会場にいないということだ。実際に会場でどんなことが起こっていて、会場にいる人たちがどんな気持ちで過ごしているのかまったく知らずに書いているということだ。

 

前述のようにこの時期はマスコミやSNSで「フェス叩き」が横行していた。パーティーやフェスティバルを開催するオーガナイザーにしろ、そこへ遊びに行く参加者にしろ、どんな判断をすればいいのか迷いや不安があったはずだ。それでも自分の考えはハッキリしていたので「フェス叩き」へのカウンターとして以下の文章をツイートした。

 

 

実際、自分にあるのは100%の感謝だけだ。「チッ、なんでこんな時期に……」なんて考えは微塵もない。

 

パーティー関係者の中にも前述した『波物語』に関しては「さすがにあれはちょっと……」と考えてる人も少なくないようだが、とにかく自分は会場にいなかったのでいいも悪いも判断できないし、拡散されている動画を見ただけで安易に批判などするべきじゃないと思っている。

 

さて、ここで少し“そもそもの話”にも触れてみたい。 そもそもコロナ禍とは何なのか?

 

2019年12月に中国の湖北省武漢市で最初の症例が確認され、瞬く間に世界中に広がっていったコロナウイルス。我々は何もわからず、ただただ不安な日々を送った。Festival Tripではすぐに特集を組み、ベルリン、ロンドン、メルボルンなど世界各地で暮らす仲間たちから当時の現状を伝えてもらったりもした。

[ Life under COVID-19 ] 日本 JAPAN (TOKYO)

[ Life under COVID-19 ] オーストラリア AUSTRALIA(MELBOURNE)

[ Life under COVID-19 ] イギリス UK (LONDON)

[ Life under COVID-19 ]タイ THAILAND (KOH PHA NGAN)

[ Life under COVID-19 ] ブラジル BRAZIL (SãO PAULO)

[ Life under COVID-19 ] ドイツ GERMANY (BERLIN)

[ Life under COVID-19 ] インド INDIA (GOA)

 

「正しく怖れる」「三密を避ける」などという急ごしらえのスローガンのもと、ステイホームと言われればきちんと家の中で過ごし、外食禁止と言われれば黙ってテイクアウトを持ち帰り、パーティー自粛と言われれば大人しくそれに従った。まるで忠犬ハチ公のように忠実に……。ソーシャルディスタンスを保つため、他人との適切な距離感も失った。

 

だけどそもそも、そうまでして怖れていたものは何だったのか? 身のまわりの者が次々に感染し、みるみる衰弱して命を落とし、または回復したもののいつ治るかもわからない後遺症に苦しみ……的な光景でなかったか? 

 

現実には自分の友達でこれまでに7人がコロナウイルスに感染したが、1人残らず、全員が2、3週間後には回復し、その後はいままでとまったく同じようにパーティーに遊びに来てはダンスフロアで爆踊りしている。「コロナ発症中はとんでもなく辛かった」と彼らは言う。だけど……、だけど我々が数ヶ月もステイホームしてまで怖れていたものって、そもそもこんなものだったっけ??

 

例えば今日(12/29)の東京の新規感染者数はグッと増えて76人。50人以上になるのは10月16日以来ということだ。それでも東京都の人口は約1400万人だから確率でいえば0.00054%だ。こんなのマスクなしで歩こうがホテヘル呼んで超濃厚接触しようが、コロナに感染してこいって方が無理な話だ。そして万が一、どころか1400万分の76の確率で感染したとしても2、3週間後にはほぼ間違いなく回復しているだろう、よっぽど特殊な事例を除いては。

 

確かに、いっときの間、情報や事例があまりにも少なかった期間には我々は「正しく怖れる」必要があっただろう。例えそれが過剰だったとしても仕方がない。社会全体が未知のものに対する怖れの中にあったのだから。だけど、もうだいたいわかっただろう。アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、そしてオミクロン株……と、まるでウルトラマンシリーズのように次々と名前を変えて恐怖心を煽り続けようとしているけれど……、いや、でもそれただのコロナでしょ?

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

GLOBAL ARKに話を戻そう。つまり我々は、音楽でダンスする以前に茶番に踊らされていたわけだ。空気のきれいな野外のフェスティバル会場でマスクをしろ? 冗談じゃねえ! なら満員電車を今すぐ止めろ、ソーシャルディスタンスのたてまえはどこいった?

 

自分はすでにナンセンスだと思っていたが、それでも我々は律儀に山の上のダンスフロアでマスクをしていたし、GLOBAL ARKのスタッフもことあるごとにオンマイクでもオフマイクでもマスクの着用を呼びかけていた。不織布マスクかそれ以外かとか、そんなのどっちだっていいだろ?

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

不織布マスク信望者も結構いるようだが、当然あたりまえだが、不織布マスクもピンキリだ。特にコロナ禍以降、マスクの需要が沸騰したのだから質の悪い物が一気に市場に出回るのも当然だ。不織布マスクが布やウレタンなどのものより感染防止効果が高いとは一概には言えない状況だ。しかも、我々は待ちに待ったGLOBAL ARKの10周年を祝いに行くわけで、お葬式に参列するわけじゃない。主催者が“おしゃれマスク”着用を呼びかけたとして何が悪いんだ?

 

とにかく、あの3日間、GLOBAL ARKの会場はコロナ禍における地上の楽園だった。不安を煽る奴もいなければ、自粛警察もいない。子供たちも安心して走り回るような平和で幸せに満ちた空間だった。あの会場でコロナに感染した人は未だに報告されていないし、結局のところ1人の感染者も出してないということだ。

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

少なくとも現段階で、コロナは我々が当初怖れていたようなウイルスではないことは明白だ。確かにヨーロッパなどではまたしても感染が拡大しているようだが、もし仮に感染してしまったら2週間ほど辛い思いをして、1ヶ月後には仲間とメシでも食いながら笑い話にすればいい。どうせそのうち、誰もが一度くらいは感染することだろう。

 

コロナ禍はいろいろなことを教えてくれた。自粛警察、マスク警察、●●警察……、とにかく頼まれもしないのに自分から警察気取りの犬コロになりたい奴がわんさかいるらしい。正義感を振りかざし、平気で他人を傷つける奴らと一緒に暮らしているということだ。戦争でも起きれば、即座に喜んで赤狩りでも何でもはじめるだろう。そんな状況で「戦争反対……」なんて口にしようものなら家ごと焼き払われる勢いだ。

 

マスコミもSNSもみんなが一瞬だけわーっと盛り上がれるネタがあればいいだけだ。オリンピックで誰が何色のメダルを取ったか、なんてもう誰も興味もないし覚えてもいない。盛り上がるだけじゃなく、上から目線で批判して、安全な場所から相手を叩きのめせればストレス発散にもなって最高だ。みんなでやればへっちゃらだし、相手がどうなろうと知ったこっちゃない。

 

GLOBAL ARK 2021GLOBAL ARK 2021

 

GLOBAL ARKが10周年を迎えたということは、関わってきたスタッフやアーティストたちがこの10年間交渉を重ねたり、試行錯誤を繰り返したりしながらパーティーをこつこつと育て上げてきたということだ。そして今回起こったことは、現場に来たこともない野郎どもがネットやテレビで面白おかしく騒ぎ立て、10年間で積み上げてきた信用や信頼を台無しにしたということだ。無責任にもほどがある。お陰でGLOBAL ARKは来年開催するための会場探しに難航を極めていて、主催者であるDJ MIKUやDO SHOCK BOOZEらのアーティストとしての活動にも支障をきたしまくっているらしい。これはGLOBAL ARKだけの問題じゃない。我々がほとんど人生のすべてを賭けて楽しんでいるパーティーシーンそのものに関する問題だ。

 

テレビも新聞も信用するな、ツイッターに踊らされるな、現場にいもしないのに判断するな、どんな状況でも楽しみを邪魔する力には抗え。

 

音楽はいつも我々を助けてくれた。来年、GLOBAL ARKが11周年を開催できるよう、今度は我々が音楽を助けるんだ。

 

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10 Years History of GLOBAL ARK

 

 

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