[レポート/後編] Sunshine Festival 2017 @オートキャンプ銀河

Sunshine Festival 2017
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日時:9月16~18日
会場:オートキャンプ銀河(西伊豆、静岡)
TOP PHOTO by Cinematic Films

……前編からの続き。

9月18日(月/祝)天気:深夜大雨、のち晴れ

頭は疲れているが興奮していて寝付けない。脳味噌が高速で回転して次から次へと考えが浮かんできてしまう。

そもそものはじまりは台風だ。キャプテンの言うように台風情報がガセネタかどうかはわかならい。だけど実際に俺たちはパーティー会場にいて、昼間は爽やかに晴れ渡った。きっと東京や他の場所にいる人たちは「台風の中パーティーなんて大変だね……」と思っているに違いない。ところがどっこい心配なんてこれっぽっちもいらない。俺たちは間違いなく楽しんでいる。このうえなくHAPPYな時間を過ごしている。

sunshine festival rainy nightphoto by Cinematic Films

ミサイル発射なんて、そんなに騒ぐことじゃない。別に俺たちを狙ってるわけじゃないし、そもそも今にはじまったことじゃないだろ? 米国もイスラエルも、試射どころか実弾をバンバン撃ち込んでいたじゃないか。実際に家々は破壊され、大人も子供も殺された。非難するなら明らかにそっちだろ。ただ今回は相手が北朝鮮だから、自分より格下だと思ってる相手だからギャーギャー騒ぎ立ててるだけだ。憲法改正や軍事予算拡大の口実に利用しようとしてるだけだ。

冗談じゃねえ。平和はもちろん大切だが、それが特定の誰かの犠牲の上に成り立っている平和なら、そんなもんいらねえ。他人より上に立ち、権力を握って支配する……、そんな時代錯誤な行為はいい加減やめてくれ。俺たちは楽しくやっている。余計なことするのはやめてくれ。

小学校の教室では、みんなと仲良くしなさいと習ったはずだ。自分とソリが合わないから、考えが違うからって、のけ者にしたり、寄ってたかってイジメていいなんて習いはしなかった。子供たちには仲良くしろと言い、自分たちはすぐに「攻撃だ!」と取り乱す。みっともないったらねえぜ。

北朝鮮の人たちにも、韓国の人たちにも、中国の人たちにも、俺は個人的な恨みなど何ひとつない。むしろ集めた税金使ってやりたい放題やってる自国の政治家たちの方がよっぽど頭にくる。そもそも国という概念自体がとっくに時代遅れだ。「自国の利益のために……」とかふざけんな。自分の利益を守りたいだけだろ? わかったわかった、他人の金で美味いもん食ってセックスしたいならやってていいから。な。だから余計なことだけはするんじゃねえぞ。俺たちは楽しくやってるから。な。

Sunshine Festival 2017 timetable day3

雨はいよいよ激しくなってきた。台風ガセネタ説はガセネタだったか。とにかくテントで横になっていても眠れないことがわかった。小便もしたくなってきたしテントの外に出るか。確か傘を持ってきたはずだ……。

ところが傘が見つからない。イサPのタープの中だったか? テントの外に出ると大雨だ。急いでタープの下に入るがやっぱり傘は見つからない。おかしいなぁ、Re:birthのときの大雨で学習し、レインウェアの他に傘もちゃんと持ってきたんだが。

タープの中を隅々まで探していると今度は腹が減ってきてしまった。考えてみれば道中のうどん屋で食って以来、おやつ以外は何も食べていない。食料用のクーラーボックスを開けてみるとパンが2切れ残っていた。濡れてない椅子を慎重に選んで座り、むしゃむしゃとパンを食べる。もう1切れ食べたいが、もしかしたら誰かが腹を減らして起きてくるかも知れない。そうだ、とりあえず小便だ。

雨に打たれながらタープの裏で立小便を済ませ、再び椅子に腰かける。雨足はいよいよ強く、タープの中にまで吹き込んでくる。時間は深夜の0時過ぎ。イサPが呼びに来る時間までまだ2時間もある……。仕方なく椅子に腰掛けたままメディテーションを試みるが、そもそも脳味噌がリミッターカット状態のうえ腹は減ってるし雨は降りかかってくるしで、なかなか瞑想どころじゃない。早くイサP来ないかな……。

夜中は大雨のフェスティバル会場

うすのろな時間と追いかけっこを続け、ようやく時計の針が2時を指す。イサPはまだ現れないが……、ま、この大雨だから車の中で寝てるんだろう。確か車はだいぶ下の方に止めたらしいから、ここまで登ってくるのに10分やそこらかかるだろう。本来なら移動の時間も見越してアラームかけといて欲しいものだが、起こしてもらう分際でそこまで言うのも酷だしなぁ。

時計は2時15分を回る。雨はだいぶ小雨に変わってきたが、坂道だからね、急ぐと危ないからゆっくり登ってるんだろう。意外と慎重な男なんだよな、イサPも……。とにかく到着したらすぐフロアに行けるように準備万端整えて、と。

2時30分……。どこかで足でも滑らせたかな……、SHI・N・PA・I……、

なんてわけねえだろーーーーーッ!
絶対寝坊じゃねえかーーーーーッ!

まったく、about usページでの紹介では写真はこっちじゃなくてこれ使ってくれだの、文章はここをこう直してくれだのうるせえことばっか言いやがって! 俺は眠れないっつーのに全然遅刻かよ! 俺起きてなかったらどうするつもりだよ!

ということで一人でタープの外に出る。幸いなことに雨はピタリと止んでいる。まったくイサPなんて待つ必要なかったぜ。

急いだお陰でなんとかHAYATOのDJ中に間に合った。そして夜のこの光景もこれで見納めだ。いよいよパーティーは佳境へと向かっていく。

HAYATOからHATTAへとDJが変わる。HATTAとの出会いは2002年のOUTBACK ECLIPSE FESTIVALにまで遡るが、実は原点回帰にも行ったことないし、きちんとDJを聴くのもこれが最初の機会だ。期待値が異常に高い。

HATTAは独特のリズムで小刻みに体を震わせながらプレイする。余計なパフォーマンスがなく、クールなスタイルがいい感じだ。CDだけを使ったOLD SCOOLなDJスタイルも個人的には好みだ。

フロアでカメラを回していると背の高い男がすぐ横に立つ。
「HATTA、カッコいいっすねー」
誰だ、てめえ?
「い、いやぁ……、な、何時くらいにフロアに来たんですか?」
あ? ちゃんとHAYATOの時間から来てるよ。
「あ、そ……そうですか。腹、減ってないスか?」
ん? 腹はまだ減ってるが。
「それじゃパンもサラダも持ってきたんで、ちょっと食い行きますか?」
ちっ……。
時計をチラリと確認し、俺たち2人はタープを張った基地へと戻っていった。

「これと、あとその椅子が濡れてないから」
「あ、そうスか。いや~、しかし深夜は雨凄かったですねぇ……」
「で? 何時に起きたわけ?」
「いや……、あれ……、なんか雨でアラームが……、パンどうします? 焼きます? 焼いた方がいいですよね? 焼きましょ焼きましょ、あれ?なんか濡れちゃったのかな、点火しないなぁ。ライターライター、ライターどこいったかな?」
「何時に来たんだよ?」
「え? あ、ライターあった。いや……、2時過ぎ……、いや、2時半だったかな? ん~、3時半……、あ、ほらサラダとチーズも買ってきたんで、あとペンネと。パンに挟んで食ったら美味いスよ。パン焼けたかなぁ? あ、まだ裏っかわがまだだな」
「コーヒーでも淹れるか?」
「あ、いいスねぇ。コーヒー淹れましょ、コーヒー」

とにかく雨は止んだ。ガリガリと豆を挽きはじめると、早速コーヒーのいい香りが漂いはじめる。キャプテンのテントは静まり返ったままピクリとも動かない。3日間のパーティー最終日の朝が明けていく。植物や昆虫たちが目を覚ます時間が近づいてくる。

イサPの焼いたパンにサラダとチーズとペンネをサンドして食べてみると、予想以上に美味くて止まらない。

「もう1枚焼きます?」
「焼こう焼こう、あと2枚焼こう♪」

調子に乗ってむしゃむしゃ食べていると、今度は食い過ぎで気持ち悪くなってしまった。うげー、胃がもたれる……。夜明けの時間にチーズとか、ちょっと重過ぎたかなぁ。時計を見るとすでに朝6時。ごそごそとキャプテンがテントから起きてくる。

「いいんじゃないですか、気持ち悪いなら少し休んでから行けば……」
「いや、行く。俺、Daijiro楽しみにしてたんだから」

イサPとキャプテンを残したまま、ダンスフロアへの坂道を上っていく。

Sunshine festival 雨も上がり気持ち良い天気photo by Cinematic Films

Daijiroのプレイで真っ先に記憶に浮かぶのは、横浜ベイホールでのアフターパーティーだ。確か2007年か2008年か、それくらいだったと思うからちょうど10年くらい前になる。

その日は前日の夜からパーティーをやっていて、朝になるとそのまま同じフロアでアフターパーティーに突入した。Daijiroはアフターの初っ端のDJだった。パーティー自体は、Daijiroからザビエル(Xavier Morel)へと続いたところで、地元のゴロツキから苦情が入ったとかで中止になった。Daijiroはオープニングからクリアで硬く、隙間のない音で攻めていた。フロアで踊っていると、目つきの悪い痩せた男がフラフラと近づいてきて、DJブースを指さしながら「コイツ、キチガイでしょ♪」と言ってニヤリと笑った。こんなアル中のような男にキチガイ呼ばわりされるとは……と思いつつも、まったく的を得た意見だったので、俺はつられて笑ってしまった。

以来、Daijiroのことは気になっていて、mixcloudでも音源があがるのを楽しみにしていた。特にお気に入りは以下のミックスだ。高知に住んでいるときにも何度も聴いた。アイコンの写真もカッコいい♪

実際にDaijiroと初めて喋ったのはRe:birth 2017だから、つい最近のことだ。会って話してみると、キチガイどころか爽やかな好人物だった。ベイホールの話をすると、本人も苦笑していた。その後、オレゴンのエクリプスでもTRIP自体を満喫していたようだったし、今回のSunshineでのプレイにも期待がかかる。

フロアへと続く最後の階段を上りはじめると、すでに調子のいい音が鳴り響いていて自然と体が動き出す。フロアに出てみると、頭上で花開くデコレーションの向こうには青空が広がり、夜中の大雨で洗われた空気が気持ちいい。ただちょっとだけ、さっき食い過ぎたことが悔やまれるが……。

俺を含め、この時のDaijiroのプレイでピークを迎えた人も多かったはずだ。フロアの女子率も微妙に高かったような気もするし……。いづれにせよパーティー会場ではこの後、ヘッドライナーのVertical ModeからラストのCYLONまで、晴れあがった空の下でHAPPYな時間が続いていく。

Sunshine Festival 天気は晴れ♪photo by Cinematic Films

「前売りは売り切れだしさぁ、当日券も100枚しか売り出さないみたいだからかなり早めに出発しないとヤバいな……」と心配していた友人のMOMOも、体中にエネルギーをみなぎらせて踊っている。オレゴンでも顔を合わせたが、ダンスフロアで一緒に踊るのは相当久しぶりだ。驚いたことに履いているのは、もう10年以上前にフロアで会ったときと同じイッセイミヤケのプリーツパンツ。しかし新品のような風合いだから、同じものを何着も持っているにちがいない。もはやMOMOのユニフォームだ。

「台風だったからさ~、今朝出発してさっき着いたとこよぉ」と暢気なことを言いながら登場したのは、ラムダス関係の翻訳者として知られる大島陽子・片山邦夫妻だ。着いたばかりだというのに、すぐさまダンスフロアに馴染んでしまうあたり流石の変態っぷりだ。

シャボン玉のOnchiは、今度はボディペイントを持ち出してフロアをうろついている。頼みもしないのに誰彼構わず声を掛け、地面にこぼした塗料でペイントしまくっている。まったくもって多芸で、賑やかで、サービス精神旺盛な男だ。

3人の子供たちも、キャプテンと一緒にフロアにやってきた。楽しんでるのかいないのかよくわからないが、放っておけばいいだろう。しかし、しばらくするとうちのコが「お腹空いたぁ」と寄ってくる。何度かは上手くスルーしたが、しつこくまとわりつくので諦めてフードエリアに連れて行くことにする。キャプテンの子供たちもいないか見まわしてみるが見当たらない。

「お金まだ残ってるか?」
「うん」
「いくらあるの?」
「う~ん、だいたい1200円くらいかな……」

げげ、こいつまだそんなに持ってやがったか。家を出るとき、お年玉の中から2000円を持ってきたはずだ。途中のうどん屋で食べた狸うどん以外、何も使ってないのか。とにかくお金は足りそうだ。

フードエリアにあがるとすぐ正面にはうどん屋が。うちのコはうどん好きだし、ここで決めてくれれば楽でいいが。

「うどん屋あるぞ! うどんにすれば、うどんに!」
「うん!」

よし。

「冷たいのもあるよ。冷たいのがいいんじゃん?」
「うん、冷たいのにする!」

よし、よし。

「じゃ、お姉さんにお金払ってさ。ここの日陰のとこで食べたらいいんじゃん?」

順調だ。最小限の動きで収まってるぞ。なんか俺も冷たいものでも飲みたいな~、ビールとかコーラじゃなくて、もっとヘルシーでエナジーな……。

「ゴルゴさ〜ん!」

ん? おっとー! このベストなタイミングでHAPPY SHAKEの登場か! 
HAPPY SHAKEについてはあちこちで出店しているようだし、ここで説明するまでもあるまい。むしろ自分は前週の神眼芸術エキシビジョンで会うまで知らなかった。とにかくその日は俺の誕生日で、今度Sunshineの会場でBirthday Shakeをご馳走してくれるという話だった! ホントにいいのぉ~?

お陰でエナジーが充填された。冷たいHAPPY SHAKEでエナジー補給なんて、まさに理想的以外の何物でもない。子供も「ここのうどん屋、ダシが効いてて美味しかったよ」なんて妙に大人びた感想を口にして満足気だ。俺は再びダンスフロアへと駆け降りていく。

吟遊詩人の朗読や小鳥たちの歌声と同じように、ダンスは神への捧げものだ。鶴見済氏が著書『檻の中のダンス(太田出版)』で書いていたように、ダンスという行為はまったくもって非生産的で、何時間踊り続けたところで1円のお金にもならないだけでなく、何ひとつ生み出さないし、それどころか同じ場所から一歩も前に進まない。

しかしこの、一見ただの無駄にも思える膨大なエネルギーは、まわりの木々や、水たちや、微細な空気の粒子たちによって吸収され、ささやかな贈り物として宇宙そのものに還元される。我々はただ気持ちいいから踊っているだけだが、まさにその気持ち良さと自由気ままな体の動きそのものが、感謝の現れとなって“いま”という時空に溶け込んでゆく。あぁ……、気持ちいい……♪  自由勝手に動きまわる俺の体……。

Sunshine festival 最終日photo by Cinematic Films

3日間のフェスティバルのトリを務めるアーティストはCYLONだ。CYLONとの出会いも古い。長らく会わない間に、あちこちの国々へツアーでまわるような売れっ子アーティストになっていた。ステージ上ではマンガから飛び出してきたようなキャラクターだが、実際には腰の低い丁寧な人物として慕われている。こうしてまたパーティー会場で会えるなんて嬉しい限りだ。とにかく場数も豊富に踏んでいるし、きっちりとパーティーを〆てくれることだろう。

楽しみにしていた3日間のパーティーだが、終わってしまえばアッという間だ。ゆっくりできたような気もするし、慌ただしく過ぎていったような気もする。ただ1つ、確実に言えることがある。3日間ムチャクチャ楽しかったということだ。雨が降っても、風が吹いても、朝になると必ず太陽が現れて俺たちを祝福してくれた。脱ぎ捨てたTシャツの下の地肌で、降り注ぐ日差しを満喫した。

1つだけ心残りがあるとすれば、オーガナイザーのトッシー君に会えなかったということだ。これだけ楽しませてもらったのに感謝の言葉すら伝えられていない。この場を借りてお礼をさせていただく。

どうもありがとうございましたーーーーーーっ!

そしてもう1つ。すでに書いたように今回三脚を持ち出すのを忘れ、道中で購入した中古の三脚はどう見ても苦しいショボイものだった。そんなヤバい状況の俺に自分の三脚を貸してくれたのはCinematic FilmsのYUKIだ。YUKIとは過去に2回ほど会っただけで、今回再会したときも、互いにどこで会ったのか思い出すまでだいぶ時間がかかるような状況だった。にもかかわらず三脚を好き勝手に使わせてくれたおかげで、俺はいつも通り自由に撮影することが出来た。本当に助かった。さらに言えば、このレポートでも随所にYUKIの写真を掲載させてもらっている。どうもありがとうm(__)m

ちなみに今回のパーティーの様子はCinematic Filmsがショートムービーとしてまとめることになっているようだ。どの時間も、YUKIは大人な動きできっちりと撮影していた。センスもいいから、きっと素敵な作品が出来あがるに違いない。完成したら、是非このサイトでも紹介させてもらいたいと思っている。いや~、楽しみだ♪

では、ダンスフロアで出会った愛しき仲間たちよ、次のパーティーでまた会おう。大丈夫、俺たちは最高だ☆ 今度もまた踊り倒そうぜ。

アスタ・ラ・ビスタ♪

Sunshine Festival 2018

[movie] Sunshine Festival 2017 映像アーカイブス pt.1

[movie] Sunshine Festival 2017 映像アーカイブス pt.2

[movie] Sunshine Festival 2017 映像アーカイブス pt.3

 

 

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