[レポート/前編] Rainbow Disco Club 2019 ~10th Anniv.

RDC2019
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Header photo : Masanori Naruse

日時:2019年4月27~29日(土~祝月)
会場:東伊豆カントリーコース特設ステージ

2010年に晴海埠頭の会場ではじまったRainbow Disco Club(RDC)は今年で10周年を迎えた。自分は第1回目に映像班として参加したものの、会場が伊豆に移動してキャンプ・インのフェスティバルになってからは1度も行ったことがない。毎回、今年こそは!と思うのだが、なかなかタイミングが合わずにいた。

RDCはDJでもあるLEONとSkiny Pants、そしてMASAとその仲間たちが中心となって創りあげているパーティーだ。

第1回目の開催時、当たり前だが、誰もRDCがどんなパーティーになるのかわからなかった。空は爽やかに晴れ渡り、東京湾が目の前に広がるダンスフロアに集まったのも泥臭さのない爽やかな男女たちだった。時間を追うごとにその数はどんどん増えていく。2階の展望テラスから撮影していると、隣にいたカズキが手摺りから身を乗り出し、遠くからエントランスまで切れ目なく続く長蛇の列を見て、

「MASAのやつ、伝説つくっちまったなぁ!」

と嬉しそうに笑った。

movie : Charmmy & Golgo Night

10年の歳月が流れ、その伝説は色褪せるどころかますます規模を大きくして成長を続けている。RAによれば、今やRDCは“世界で最も理想的なフェスティバルのひとつ”とさえ称されている。

MASAと初めて会ったのは2005年のバーニングマンでの会場だ。今ではPARADISE BOOKSを運営するジロケンやオーガニック農家を営むヨッシくんなんかも一緒にいた。ちなみにケンジ&コージのWエロジ・ブラザースと出会ったのもこのバーニングマンだ。世界最大の変態祭りなだけに、日本からも選りすぐりの変態たちが集結していた。MASAは元気で人懐っこく、ビデオカメラを向けるとエネルギーを全身にみなぎらせ、体を震わせながら大空に飛び出していきそうな勢いで踊った。

太陽と風のダンス3_YouTube(※残念ながら上記映像は諸事情により再生できませんm(__)m)

とにかくめでたい10周年。奇しくも平成最後となるイベントだ。あとで誰かから「最高だったよ~♪」なんて言われるのは、もうゴメンだ。周到に段取りを組み、なんとかGW中の予定を空っぽのままキープし続けた。

普段パーティーへは自分ひとりで行くことが多く、子供の都合がつけば子供と2人で行くこともある。以前は嫁さんのジュリともよく一緒にパーティーに行っていたが(前述のバーニングマンも一緒だった)、子供の凛成 りんせい が生まれて以降、ジュリはまったくパーティーに顔を出さなくなっていた。確かにあまりにドロドロとした土臭いパーティーに家族連れで参加するのは少々ハードルが高い。母親としてはなかなか安心して楽しめないという部分もあるだろう。

しかし今回はRDC! 世界で最も理想的なフェスティバルだ! 

ジュリに声を掛けてみると、27日(土)は午前中の仕事が終わった後耳鼻科に行かなくてはならないが、その後ならば一緒に行けるという。さすがはRDC!すでに10年近くもパーティーとは疎遠になっていた不動の山を動かしたぞ!

開催の2週間ほど前にMASAに連絡すると、プレス対応はすべてT氏が担当しているということだった。T氏は以前にもRed Bull Music Festivalの際、Major Force 30周年のイベントでお世話になったことがあるので心強い。

Red Bull Music Festival Tokyo 2018

早速連絡を取り、エントランスチケットの方はなんとかなったものの、すでにキャンプ券が売り切れの状態だ。試しにfacebookやTwitterで検索をかけてみると、なんと、同じようにキャンプ券を探し求める者たちが何人もいるようだ。ムゥ……、これはなかなか難問だ。自分ひとりならどうにでもなるだろうが、今回は家族と一緒だ。会場まで行ったはいいけど、結局テント張れませんでした~、えへ♪(*´з`) では済まされないだろう。

頭を抱えていると、再びT氏からメールが入る。

「以前に僕も南伊豆で温泉宿に泊まって3日間会場に通ったのですが、健康的でそれもかなり良かったです」

親切なことに、恐らくT氏が泊まったと思われる温泉宿のリンクも貼ってある。どれどれ、ポチッとしてみると……、むちゃくちゃ高そうなところじゃないかぁッ! しかもGWのこの時期に! 我が家は破産だよ!!

とはいえ、会場内にテントを張れないなら会場の外に宿泊場所を探すしかない。Google Mapで会場近くのキャンプ場を探しまわる。考えてみれば俺は1人用のミニマムなテントしか持っていない。家族3人である程度快適に過ごすには、やはりそれなりの大きさのファミリーテントが必用だろう。実際、最近のパーティー会場では豪華なテントやタープを装備したキャンパーがほとんどだ。ならばこれから慌ててテントを購入するよりは、むしろバンガローでも借りた方がいろいろと都合が良さそうだ。しかしGWだけに今から空きを探すのは望み薄だが……。

いくつかキャンプ場のHPをチェックすると、GW中のバンガローの空き状況が連日◎の場所が見つかった。いやいや、それにしても連日◎って……、それ多分情報更新されてないだけでしょ!? と思いながらも記載された番号に電話をかけてみる。

「いつから? 4月の27日と28日の2日間ね? ちょっと待ってよぉ……、キャンセルが出てたかなぁ……」

HPでは連日◎だったが、やはりキャンセル待ちか……。

「あぁ、キャンセル出とるね。3人さん? はいはい、わかりました。それじゃ気を付けていらっしゃい」

おお! なんとか宿泊問題は解決されたぞ!?

伊豆キャンパーズヴィレッジphoto : 伊豆キャンパーズヴィレッジHP

 

【 Day 1 – 4月27日(土)】

午前中、イサPの家に行ってテーブルやコンロなど、ちょっとしたキャンプ・アイテムを借りておく。昼過ぎには家に戻るが、なかなかジュリが帰って来ない。どうやら耳鼻科が混んでいたらしく、14時半ごろになってようやく帰ってきた。さて、ようやく出発か、と思うと炊飯器がピィ~~~と鳴る。え?

「じゃ、これからオニギリとお弁当作るからもうちょっと待っててね~」

お弁当?いやいやGW初日でさ、ただでさえ東伊豆は結構遠いし、その上道も混んでるだろうからとっとと出発しないとハービー聴けないだろ!!…なんてことは言わず、

「じゃ、オニギリは俺握るね~♪」とにこやかに笑いつつ、そそくさと握りはじめる。ジュリは昨夜タレに漬け込んでおいた手羽先を焼きはじめた。凛成はソファに座りながらスマホゲームに夢中だ。とにかく今回は家族が一緒。みんなで楽しむことがファースト・プライオリティ!!

結局出発できたのは15時過ぎ。これはマジで、かなりスムースに行かないと間に合わないんじゃないか?

RDC2019 TimeTable

東名高速は思いのほか順調で、大した混雑もなく進んでいく。出発したときにはチラホラと降っていた雨も止み、西の方の空には青空が覗きはじめる。時間はちょうど16時をまわったところ。会場ではDJがハービーに変わったところだろう。ああ、空も晴れてきたし、早く着きたいなぁ。

途中、小田原で高速を降りそびれてガッデームッ!! 沼津まで進んでしまうが、iPhoneでのナビによるとこちらの道の方がむしろ到着時間としては早い。とは言え、刻一刻と時間は過ぎていき、せっかく作ったお弁当を食べる余裕もない。高速を降りた後も次から次へと現れる有料道路を進み続けるが、だんだんと空には暗闇が迫ってきていた。ハ~~ビィ~~~~ッ……!!

運転をしながらオニギリを食べる。自分で握ったものだが案外と美味い。しかし時間はすでに19時。RDCの会場に直行したいところだが、キャンプ場の管理人がいなくなってはまずい。まずはキャンプ場でチェックインを済ませ、バンガローの鍵をゲットしなくては!

小さな郵便局のある角を左折し、あとは山道をくねくねと上り続ける。山奥のキャンプ場に辿り着いたときには、とっくに周囲は真っ暗闇だった。

管理人から鍵と温泉施設の割引券を受け取り、バンガローを目指す。もうこんな時間だから他のバンガロー客は夕食も食べ終え、ゆっくりとした時間を過ごしていることだろう……、と思ったが、キャンプサイトで焚き火を囲んでいるグループ客はちらほらいるものの、5棟並んだバンガローはすべて真っ暗。人の気配がまるでない。 電話口では「キャンセルが出てたかなぁ」なんてしらばっくれていたが、HPの情報通り、GW初日だというのにバンガローはオール空室だ!

とにかくサクッと荷物を降ろそうとバンガローのドアを開けると、ジュリと凛成が同時に「せまッ!」と声を上げた。俺は予想していたから何とも思わないが、バンガロー、バンガローとハシャイでいた2人は、もっと立派な中身を想像していたのだろう。しかし目の前の空間は6畳ほどのスペースが木材で囲われただけのただの箱。さ、10連休の最初の夜だよ♪

気を取り直して車に戻り、RDCの会場へ向かう。ナビによるとここから27分の距離だ。

無事会場へ到着し、車を降りて空を見あげる。

「うわ、星いっぱい出てるよー!」

「あー、ホントだ!」

エントランスチケットはQRコードになっていて、エントランスでは何のトラブルもなくスムーズに入場……、と思ったら、ぐちゃり、と右足が水溜まりにハマる。夕方まで降っていた雨でエントランス前一帯が泥沼のようになっている。

「うげ!この辺ぐちゃぐちゃだから気をつけて!」

子共を抱え上げ、肩車したまま滑らぬように進んでいく。右側の斜面には月を模したデコレーションとRainbow Disco Clubの文字が輝いている。ようやく辿り着いたぜ、7年ぶりのRDC!!

RDC_Jirokenphoto : Jiroken

ジロケンとA-skが、それぞれPARADISE BOOKSとPARADISE HAIRを、そしてFestival Trip1周年パーティーでオードブルを提供してくれた“愛菜食堂がじゅま~る”のマサオたちも出店しているはずだが、着いたばかりで会場内の配置がわからない。時間は20時過ぎ。DJ Harveyの5時間セットも残り1時間。とにかくメインフロアに直行だ。

晴海埠頭で開催された第1回目のRDCでメインアクトを務めたのが、そのとき8年ぶりの来日を果たしたDJ Harveyだった。Harveyの伝説的な経歴については改めてここで触れるまでもないが、彼はまたRDC伝説そのものの生みの親とも言える。そのHarveyが10周年を迎えたRDCで、まさに目の前で5時間セットを繰り広げている。感慨も深い。

RDC_Kawamura

RDC_Kawamuraabove 2 photos : Ken Kawamura

DJブース周辺にスモークが焚かれ、Harveyの姿がその煙の向こうに霞む。もうあと僅かで初日のメインステージがクローズというタイミングで、黒いピラミッド型をしたステージの裏から小さな飛行体が浮かび上がってきた。明らかにドローンだが、いったい何を……?と思っていると、頭上でホバリングをはじめたそのドローンからミラーボールが現れ、ダンスフロアへ向けてキラキラとした輝きを拡散しはじめたのだ!

Woooooooo, It’s Rainbow Disco Club!!

RDC_Masanori

RDC_Masanori

RDC_Masanori

RDC_Masanoriabove 4 photos : Masanori Naruse

メインステージは21時で終了。その後はインドアのRed Bull Stageで深夜0時まで音が続く。

こちらのRed Bull Stageも、言い訳程度につくったサブフロアといったものではまったくなく、恐らく1000人近くのキャパはあるんじゃないかという大きな体育館のような建物だ。天井も非常に高く、都内で普通に大箱のクラブとして使われていても遜色ない雰囲気に仕上がっている。

RDC_Suguru

RDC_Suguru

RDC_Suguruabove 3 photos : Suguru Saito

が、子連れの我々は中の様子を一瞥し、後ろ髪引かれる思いで車へと向かった。家族みんなで楽しむことがファースト・プライオリティ!!

RDC_Suguruphoto : Suguru Saito

事前の情報で予想はしていたが、夜の外気はどんどん冷えていく。冬に使っていたダウンジャケットやカシミアのベストを着込んでいるが、それでも油断できない寒さだ。

キャンプ場の受付時に割引券をもらった温泉施設は21時までの営業だという。完全に間にあわないので、途中コンビニに寄っただけでキャンプ場へと戻っていった。

当然、受付を済ませたときと同じく5棟のバンガローはひっそりとしてひと気がなく、GWの浮かれた感じは微塵もない。電気が点いているのは我々のバンガローのみ。体が冷えてしまうと、もう体温を戻すには翌朝太陽が昇ってくるまで術がないので、そそくさと室内に入り寝袋を広げる。

「でも、なんだかこの部屋も好きになってきたなぁ♪」

凛成が寝袋に入りながらボソッと言うのを聞いてホッとする。ジュリも上着を着込んで寝袋に潜り込む。俺はギリギリのスペースに、イサPから借りてきたロールテーブルとローチェアを置いて、キャンドルランタンに明かりを灯す。

iPhoneを確認すると、入口近くでなんとか2本アンテナが立つ。家から持ってきたBluetoothのポータブルスピーカーを窓際にぶら下げ、Mixcloudで山頂瞑想茶屋のチルアウト・ミックスを選んでローチェアに腰を下ろす。最近ハマっている薄皮付きのピーナッツをポリポリしながら、コンビニで買ったポケットボトルをホットウイスキーにしてクピクピとやる。ふぅ……。

すぐに凛成の寝息が聞こえてくる。ジュリは寒くて寝付けないのか、頭まで寝袋を被ったままちょくちょく寝返りを打っている。バンガローの中だというのに、しんしん、しんしんと気温が冷えていく。とにかく、家族3人揃ってキャンプなんて本当に久しぶりだ。

後編に続く……)

[レポート/後編] Rainbow Disco Club 10th Anniv.

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