[レポート/後編] Rainbow Disco Club 2019 ~10th Anniv.

RDC2019
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Header photo : Ken Kawamura

日時:2019年4月27~29日(土~祝月)
会場:東伊豆カントリーコース特設ステージ

(……前編からの続き)

[レポート/前編] Rainbow Disco Club 2019 ~10th Anniv.

 
【 Day 2 – 4月28日(日)】

ようやく夜が明けたようだ。

とにかく夜中は寒くてほとんど眠れなかった。背中がギシギシと痛む。部屋の外の気温がどれだけ低いかわからないが、とにかく太陽を浴びたい。

共同トイレで用を足し、そのまま日向を求めて徘徊する。昨夜到着したときはもう真っ暗で気づかなかったが、このキャンプ場は高低差があって敷地もそこそこ広い。そういえば、HPには五右衛門風呂があると書いてあった。薪は自由に使っていいから自分たちで沸かしてくれ、というスタイルのようだ。

3.11の原発事故の後、高知県の過疎集落に疎開した俺はしばらく五右衛門風呂の家で暮らしていた。五右衛門風呂の気持ち良さは、文字通り骨身に沁みわたるほど知っている。早速、管理人のオヤジに場所を聞きに行く。

「もう長いこと誰も使ってねえから、使うなら自分で掃除からやんなきゃ入れないよ、大変だよ」

明らかにオヤジは使ってもらいたくないような雰囲気だ。

「でも薪は使っていいんですよね? じゃあ場所だけでも案内してもらえますか?」

オヤジは面倒くさそうに立ち上がると、管理棟の入口から半身を出して指をさし、

「あそこに止まってるユンボの裏が通れるようになってるから、その先だよ」

と言うと再びカウンターに戻って座ってしまった。どうやら案内する気もないらしい。

行ってみると、囲いも天井もなく五右衛門風呂が剥き出しになっていて、風呂釜の底には20センチほど土や落ち葉が溜まっている。なるほど、確かにかなりの長期間使われていないようだ。

倉庫からスコップとホウキとデッキブラシを拝借し、早速掃除に取り掛かる。20センチの深さがあるとはいえ、踏み固められたものではないので柔らかく、手間もなく掻き出せる。小さな沢ガニが2匹ほど、たいして驚いた様子もなく土から顔を出す。風呂のすぐ脇の斜面からは塩ビパイプが突き出ていて、その先から流水がちょろちょろと絶え間なく流れ出ている。

溜まっていた土と枯葉をすべて掻き出し、鋳鉄製の風呂釜をゴシゴシとデッキブラシで擦り洗う。空は青空で、ダウンやトレーナーを着込んだ体がすぐに汗ばんでくる。

風呂釜がきれいになったところで塩ビパイプの先を風呂釜の上へと移動させ、流水を風呂に溜めはじめる。山の中を通ってきた天然水だ。薪置場に1年以上乾燥させたような調子のいい薪が、大中小さまざまな太さで揃っているのは確認済みだ。水さえ溜まれば、風呂を沸かすのは造作もない。

水が溜まるのを待つ間、家族の様子を見にバンガローに戻る。ちょうどジュリがバンガローからテラスに出てきたところだった。

「さみ〜〜〜〜〜、寒くて全然眠れなかったよぉ」

バンガローは狭くてミニマムなものだが、板張りのテラスはそこそこの広さがあり、木のテーブルとベンチが設え付けられている。

「五右衛門風呂あったからさ、掃除して今水溜めはじめたとこだけど、入る?」

「入る入る! もう体が冷え切っちゃってるもん!」

「なんか薪は豊富に揃ってたからさ、ちょっと水の様子見ながら火つけてくるよ」

「じゃ朝ごはん準備して待ってるね」

風呂に向かいながら、火付けによさそうな竹の枯れ枝をピックし、薪場で細いものから太いものまで薪をチョイスする。風呂に戻るとすでに予想より多く水が溜まっていた。

2017年の“原点回帰”のパーティー会場でリストバンドの代わりにもらった隠しライト付きライターで、重ねた竹の枝に火を付ける。竹は火力が強過ぎて薪ストーブには向かないが、火付け役には最適だ。間もなく細い薪から太い薪へと火が広がっていく。

伊豆キャンパーズヴィレッジ

バンガローに戻ると、凛成もすでに目を覚ましてテラスのベンチに腰掛けていた。3人で出発前に作ったお弁当の残りとカットしたフルーツと温かいスープを食べる。とにかく天気がいい。確かそろそろDJはTAKIMIさんに変わる頃だ。早く移動して会場で時間を過ごしたいところだが……。

「風呂の湯加減見にいくからさ、凛成も一緒に行こうぜ」

「うん、行く行くー!!」

凛成は小学4年生。こちらが驚くほど慎重派だ。ちょっとした段差でも勢いよくジャンプしたりせず、下を確認して腰をかがめ、恐る恐る飛び降りる。たいした下り坂でもないのに「あ〜、サンダルで来ちゃったなぁ」などと不要な後悔をしている。

湯気を上げるワイルドな五右衛門風呂を見て、凛成は喜んだ。湯船に手を入れて掻き混ぜてみると、湯加減の方もいい塩梅だ。

伊豆キャンパーズヴィレッジ

「父ちゃんもうちょっと薪足してるから、もうお風呂入れるよーってお母さん呼んで来てよ」

「うん!」

湯船が小さいので、3人で入れ替わり立ち替わり順番に湯船に浸かる。皮膚の表面から骨の芯にまで浸み込んでくるような熱いお湯に、冷水を少しづつ注ぎ足しながらじっくりゆっくりと入っていくのが五右衛門風呂の仕来たりだ。とにかく初めは熱いが、体が首まですっぽりと入ると、ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと大きな溜め息とともに全身の力が抜ける。ああぁ、あったまるなぁ〜〜♪

伊豆キャンパーズヴィレッジ

すぐ横は斜面に沿ってワサビ畑になっていて、小さな竹林がところどころに広がっている。

「あー、タケノコあったよー!」

凛成が声をあげる。

「ホントだ、ホントだ!」

ちょうどいいサイズの筍があっちにもこっちにも顔を出している。早速先ほどのスコップを使って掘ってみる。

「ほら! これ、凛成ひとりで掘ったんだよ!」

伊豆キャンパーズヴィレッジ

空は青空で、昨日の雨で洗われた空間にワサビ畑を流れる沢の音が静かに響いている。ひと晩かけて凝り固まった身体は完全にふやけ、毛穴からは止めどなく汗が噴き出してくる。

さあ、いよいよ本日もRDCへ出発だ!

「カレー食べたい♪」

え? カ、カレー? いやいや会場にもいろいろフード出てたしさ、そうだ、凛成の好きなうどん屋もあったじゃん。

「さっき掘った筍入れてカレー作ってぇ」

「やっぱりキャンプはカレーだよねぇ」

早くも凛成とジュリの間で合意が成立しているぞ……。

「そうだそうだ、キャンプはカレーだ! よし、じゃ俺野菜切って米研いじゃおっかな〜♪」

なる早で会場に着きたいので、サクサクと手際よく動くしかない! 家族みんなで楽しむことがファースト・プライオリティ!!

野菜と筍が柔らかくなり、とにかくカレーが仕上がった。

「しばらく置いておかないと味が落ち着かないからさ、カレーは晩飯ってことにして昼は会場で食べよう。あー、腹減ったなぁ!」

ようやく2日目のRDCへと出発できるぞ(//∇//)

RDC 2019

14時近くに会場へ到着。天気は爽やかに晴れているが、昨日の名残りで部分的にはまだ泥がぐちゃぐちゃになったところも残っている。早速靴を脱ぎ、裸足になって土の感触を確かめる。ちなみに靴下はもちろんSTANCEだ。ジュリも凛成も、我が家は3人揃ってキャプテンcap-tainからもらったSTANCEで参加だ。履き心地抜群で足の疲れも少ない。とは言えやはり、裸足に勝るものはない。あぁ、これこれ。気持ちいい♪ 

RDC2019_Map

メインフロアから斜面を上ったところがマーケットエリアだ。階段を上り切ると、真正面にオーガニックフードの“がじゅま〜る”がお店を構えていた。まさに一等地だ。

RDC2019

RDC_がじゅま〜る

RDC_がじゅま〜る

マサオとゆいちゃんの爽やか夫婦が何人かのスタッフとともにお店を切り盛りしている。

「ど〜も〜」

「お!? どーもどーも!!」

とにかくRDCにぴったりな爽やかな2人だ。マサオの透明感のある笑顔なんかも最高で、これならゆいちゃんが騙されるのも無理もない!と納得してしまう。

「もう何か食べました?」

「いや、今着いたとこなんだよ、俺は車でオニギリ食ってきたけど。凛成は多分うどんか唐揚げ食べるんじゃないかな、好きだから」

「ジュリさんはどうです? 好きなもの選んで下さいよ、ご馳走しますよ♪」

「いやいや、1周年パーティーでもお世話になってるし、ちゃんとお金払っていただきますよ♪  がじゅま〜るで食べるの楽しみにして来たんだから」

RDC_がじゅま〜る

五穀米、主菜、そして彩り豊かな数種の副菜が1プレートに並んだDELI PLATEをいただく。オーガニックな素材を丁寧に調理した料理は、味がどうとか栄養がどうとかいう領域を軽く超越した存在で、食材を仕入れるところから目の前に提供されるまでのすべての過程がそっくりそのまま体の中に入ってくるような感覚だ。優れた料理家に料理のポイントを尋ねれば、例外なく「愛情だ」という答えに行き着くが、がじゅま〜るの料理にも間違いなく愛情が隅々まで行き渡っている。

結局、“払う・ご馳走する”の押し問答を繰り返した末、3コ入ったエナジーボールまでいただいてしまった。

RDC_がじゅま〜る

RDC_がじゅま〜る

PARADISE BOOKSとPARADISE HAIRは下のキッズエリアで出店しているようだ。マサオたちとお礼のビールで乾杯し、再び階段を降りていく。

RDCはキッズエリアも広く、下が芝生なので見た目にも優しい。子供も親もゆっくり自由に過ごせる空間だ。実際RDCのオーディエンスは年齢層が広く、子供連れで参加しているファミリーも多い。ダンスフロアに常駐しなくてもそれぞれが自由に楽しめるのがいいところだ。

RDC_Jiroken

PARADISE BOOKS

PARADISE HAIRabove 3 photos : Jiroken 

相変わらずマニアな子供たちに人気のPARADISE BOOKSのすぐ隣で、A-skが女の子の髪を編み込んでいる。代々木公園での定例イベント『春風』から始動したPARADISE HAIRだ。

PARADISE HAIRについてはA-skによるLOOP2019のレポートで詳細が書かれているので、そちらを参照してもらいたい。

[レポート] LOOP 2019 @ おおばキャンプ村

脇目も振らず、忙しそうにしているA-skに声を掛ける。

「ビールでも飲む?」

「あー、それはありがたいですね!」

paradise hair_RDC

「凛成、父ちゃんビール買いに行ってくるけど、一緒にカキ氷買いに行く?」

「行く行く!!」

RDC_Masanori photo : Ken Kawamura

RDC_Kawamura

RDC_Kawamura

RDC_Kawamuraabove 3 photos : Masanori Naruse

昼間はキッズエリアで凛成と遊んだり、ふらふらとダンスフロアに行って踊ったり、久しぶりに踊っているジュリの姿を眺めたりして過ごした。キッズエリアはダンスフロアからまっすぐ続いた後方にあり、音もよく聴こえて遠目にダンスフロアの様子もわかる。踊ってもいいし、踊らなくてもいい。パーティー全体がレイドバックな雰囲気で居心地も抜群だ。

本日のトリは18時からDJ NOBUとWATA IGARASHIによるB2Bでの3hoursセット。さすがにこの時間はキッズエリアに置いたキャンプチェアをダンスフロアの脇に移動し、しっかりと踊れる態勢を整える。

硬派なテクノに一変したフロアには昼間にも増してオーディエンスが集まっている。徐々に暗くなっていく、いい時間帯だ。

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RDC_Masanori above 2 photos : Masanori Naruse

そろそろバンガローに帰りたい、という凛成をなだめすかし、騙し騙しなんとか20時頃まで粘ったもののもう限界の様子だ。最後まで聴けないのは非常に残念だが仕方ない。よしっ、帰ろう! 帰ってタケノコカレー食べよう!

昨夜は激寒だったので、途中に寄ったコンビニでダンボールをもらって帰る。バンガローに帰り着くと、両隣の棟には宿泊客がいるようで明かりが灯っていた。

昼間研いでおいた米を炊き、カレーを温め直して3人で食べる。今夜は昨夜ほどには冷え込みが厳しくなさそうだ。

 

【 Day 3 – 4月29日(祝月)】

3DAYSのフェスティバルもアッという間に最終日。初日の夜ほどではなかったものの昨夜もやはり冷えた。まずは五右衛門風呂の焚き付けだ。

空には薄っすらと雲がかかっている。五右衛門風呂に行ってみると、昨日はチョロチョロと流れていた水が、今日はほとんど止まっている。むぅ……、これでは湯温の調整に支障をきたす。元は山水とはいえ、どこかに大元の栓があるはずだ。

管理棟に行ってオヤジに声を掛ける。

「風呂入ろうと思ってるんですけど、水がほとんど流れてないんで栓開けてもらえます?」

するとオヤジは明らかに不機嫌そうに

「今年は24年ぶりの水不足で水がないんだよ」

「いや、そんなこと言ってもすぐ隣のワサビ畑にはじゃんじゃん水流れてるじゃないですか」

「あっちは他人の土地だから。だいたい風呂使うのあんたらだけだから、ある水でなんとかやってくれ」

「いやいや風呂使うのが我々だけとか関係ないでしょ。HPにだって五右衛門風呂ありますって書いてあるんだし。風呂使っていいのに水はないなんて、そんなのあり得ないじゃん」

「とにかく炊事場の蛇口からバケツでも使って何とかやってくれ」

そもそも24年ぶりの水不足など他では聞いたこともないし、予約の時のキャンセル云々の話からしてこのオヤジは信用ならない。とは言え、こんなところで揉めても仕方ないのでバケツを借りて風呂に戻る。確かにあのオヤジもいい歳だ。これだけのキャンプ場施設を管理するのも相当大変に違いない。出来れば五右衛門風呂など使わず、割引券の入浴施設を使ってもらいたいというのが本音だろう。

このキャンプ場はチェックアウト時間というのが11時と決まっている。受付の際にも言われたし、オヤジの言動をみても時間はきっちり守っておいた方がよさそうだ。

バンガローに戻り、昨夜のカレーで朝飯を済ませ、荷物をパッキングして車に積む。キャンプチェアとバスタオルを持って五右衛門風呂に移動だ。途中、管理棟でバンガローの鍵を返却し、先にチェックアウトを済ませておく。

凛成は風呂周辺でもwifiが繋がることを発見し、チェアに座ってスマホゲームに夢中だ。ジュリと俺は代わる代わる湯船に浸かり、雲った空を眺める。そう言えば……、

「テラスに置いてあった筍って、あれ何なのかな?」

実は昨夜バンガローに戻ったとき、テラスの隅に遠慮がちに掘った筍が置いてあった。さっき荷物を片付けるときには隣のバンガローにも同じような筍が置いてあるのを見た。

「さぁ? 管理人さんからのお土産じゃない?」

むぅ……、あの気の利かないオヤジがそんなことをするとも思えぬが……。

「あ、そうだ凛成! 筍もう1本掘って、イサPにお土産持って行こうぜ」

風呂から上がり、着替えも済ませ、いよいよ最終日のRDCへと出発だ。ま、その前にオヤジに挨拶だけしておくか。

「どうもお世話になりました。風呂の火、もう完全にオキ火になってるから大丈夫だと思うけど、そのままになってるんで」

「おお、大丈夫大丈夫、あとで見ておくから」

「そう言えばテラスのとこに筍置いてありましたけど、あれって管理人さんですか?」

するとオヤジは少し照れたような笑いを浮かべ、

「ああ、お土産にと思ってね。バンガローのお客さんにね」

と答える。

「ありがとうございます。ところでこのキャンプ場って……、オヤジさんが創ったんですか?」

「あはは……、そうよ、24年前に仕事辞めてね、俺はトビだったから建物なんかは大工の友達に手伝ったりしてもらいながらね。だからユンボも置いてあるんだよ」

実はこのキャンプ場には五右衛門風呂の他にもう1つ別の木製の露天風呂があったり、沢に面したピザ窯付きの茶室があったりする。どれも長い間使われずに放って置かれたような風情だが、それにしてもこれだけの施設を自分たちで創り上げるとは……、よっぽど楽しかったに違いない!!

「もう歳だからね、管理するだけでも手一杯よ」

「また機会があれば風呂入りに来ますよ、ありがとうございました」

「はいはい、ありがとうね。気を付けて帰ってね」

「オヤジさんこそ体に気を付けて!」

車のトランクには凛成が掘った筍とオヤジがそっと置いていった筍が、古新聞に包まって2本仲良く並んでいる。さぁ、最終日だ。

まずはチェアを持ってキッズエリアに直行だ。腹は減ってなかったが、昨日がじゅま〜るでもらったエナジーボールを食べてみる。おお!これは超美味いぞ! しかも食べた直後からエナジーみなぎる感覚だ。これはイサPにも土産に持ってってあげないと!

早速がじゅま〜るに行こうと歩いていると、ちょうどトイレの前で呼び止められる。振り返れば……、おお!ヨルメ社長!

太陽と風のダンス(太田出版)』を読んだことのあるナイスガイなら覚えているかもしれないが、ヨルメ社長とは2001年ザンビアでの皆既日食フェスティバル Solipse2001の会場で出会い、一緒にシャンパングラスで乾杯した仲間だ。さらにその翌年ギリシャのSamothraki Dance Festivalにも来ていて、しかしその時には帰りのフェリーの日付けを間違えて買ってしまったらしく、最終日より1日早く帰国してしまうというダンディな男だ。

ザンビア関係の仲間とは最近でもときどき偶然どこかのパーティーで顔を合わせたりしているが、社長と会うのは相当久しぶりだ。しかしほとんどまったく変わっていない! 再会して3秒くらいの間は互いに驚いたものの、その後はもう馴染んでしまい、いつものパーティー仲間と一緒にいるような錯覚を感じてしまう。

「俺ちょっと便所寄ってから行くから、ちゃんとスピーカー前で待ってろよ」

と言われて別れると、今度は本部の前で関谷とクロちゃんに会う。2人とも1回目からずっと関わっているRDCのオリジナルメンバーだ。イベント自体がどんどん大きくなっても、こうしてオリジナルメンバーが変わらず揃っているのは安心感もあるし、何より単純にとても嬉しい。10周年ともなると2人ともそれなりに貫禄があり、クロちゃんなんかは知らなければ近寄り難い雰囲気だ。関谷に至っては結婚して、子供が生まれ、そして離婚までしているというのだから、まったく大したものだ♪ それぞれの個人が持つ、別々の月日の流れを交換できるのもミーティングポイントであるパーティーの醍醐味だ。

RDC2019_Jirokenphoto : Jiroken

がじゅま〜るに行こうと思って歩いていたが、懐かしい仲間たちと再会しているうちに少し踊りたくなってきた。社長も待っていることだし、まずはダンスフロアに立ち寄ってからにしよう♪

スピーカーの前まで進んで行くと、どこで抜かされたのか、すでにジュリが社長の横で踊っている。ジュリも2002年のサモスラキに来ていたので社長とは以前から顔見知りで、それどころか俺以上に社長のことを慕っている。とにかく昔ながらの仲間と一緒に踊るのは特別な感覚だ。

RDC_Masanoriphoto : Masanori Naruse

RDC_Kawamuraphoto : Ken Kawamura

ザンビアで社長グループと一緒だったシンちゃんやハッシくんもすぐ側にいて、すでにお酒がまわっていい感じに出来上がっている。シャボン玉のOnchiが、半分に割ったスイカのようなミラーボールを頭に被ったカンタと一緒にダンスフロアを歩き回っている。ときどき手に持ったスリッパでカンタの頭に載ったミラーボールをペシペシと叩いているが、全然面白くもなんともないので目を合わせずにスルーしておく。がじゅま〜るの2人はどうしてるかな?

凛成の様子も気になるので、1度キッズエリアに戻る。PARADISE BOOKSの前でチェアに座ったままポテトフライを食べていた。

空は相変わらずの曇り空だが、雨予報も出ているらしい。PARADISE BOOKSもPARADISE HAIRも雨が降り出す前に早めに店仕舞いするということで、片付けを少し手伝う。A-skの声がかれているので尋ねると、昨夜ZIPANGのオーガナイザーであるジョージ高田や、PARADISE HAIRのスタッフであるマリコちゃんというコらと大騒ぎしていたらしい。

「お母さんはぁ?」

ポテトを食べ終えた凛成が聞いてくる。

「前の方で踊ってるよ。久しぶりに気持ち良さそうに踊ってるんだから邪魔しちゃダメだぞ」

と言ったものの、そもそもお母ちゃんコの凛成はダンスフロアに向かってダッシュして行ってしまった。パーティー会場とはいえ、凛成はOnchiくらいしか友達がいない。がじゅま〜るに寄ってからフロアに戻ろうと思っていたが、心配なのでチェアを持ってすぐにあとを追う。追いついたときにはジュリの横にベッタリと貼り付いていた。

RDC_Masanoriabove 3 photos : Masanori Naruse

この会場にはキッズエリアの他にも大人と子供で遊べるエリアがあるらしい。凛成はすでにジュリと一緒に遊んだようで、

「一緒に行こう?」

とこっちの手を引いて先に歩いて行く。ちょうどメインステージの真裏が遊べるエリアになっていて、なだらかな芝生斜面にツリーハウスやクライミングウォールなんかが立っている。広いスペースに人も少なくて快適だ。

凛成の後についてツリーハウスに上り、クライミングウォールでジャンケン陣取り合戦をし、裸足になってロープ仕立てのジャングルツリーに挑む。普段動かさない体の筋肉を使っているようで、体と同時に脳味噌の可動域まで広がっている気がする。上からの眺めも気持ちいい。

RDC2019

RDC2019

再びダンスフロアに戻って踊りはじめる。イサPにメールしようと思って写真を撮るが、回線が混み合っているのか写真の添付が全然進まず断念する。がじゅま〜るの2人に会いに行こうかな? しかしダンスフロアも調子よく、なかなか離れ難い。

PARADISE HAIRのマリコがやって来る。さっき中途半端に紹介されたばかりの初対面だが、ノリがいいうえ最上級に人懐っこい。無防備な笑顔を見るだけでこちらもアガる。

向こうからフラフラと歩いて来たのはフォトグラファーのYUMIYAだ。いつもはデカいレンズをつけたカメラをぶら下げているが、今回は完全遊びで参加ということで珍しく手ブラだ。

胸に『Rainbow Disco Club拾周年』とプリントされたオフィシャルTシャツを着ている若者がすぐ近くで踊っているので声を掛ける。

「カッコいいTシャツ着てるねぇ、ここで買ったの?」

若者は嬉しそうに頷く。

「Rainbow Discoのファンなんだ?」

「いえ、今回初めてなんです!」

え? Tシャツは10周年だけど、キミは1年目なんだ!?

よく見れば、彼の他にもRDCに憧れて初めて遊びに来ました、といった感じの若者が何人か踊っている。なんだか初々しく、そして微笑ましい。彼らの表情を見る限り、きっと期待以上に楽しい思いをしているに違いない。

DJはフェスティバルの最後を飾るANTALとHUNEEのB2Bセットへと移行。ダンスフロアはますますいい調子だ。

RDC_Masanori

RDC_Masanoriabove 2 photos : Masanori Naruse

う〜ん……、ここまで調子良くなってくると尚更がじゅま〜るの2人に会いたい。ていうか出来れば一緒に踊りたい。しかしフロアを離れるのもちょっと……、と思っていると、

あッ!! サングラスにあの笑顔は!?

「いや〜、19時まで閉店にして踊りに来ちゃいましたよ♪」

マサオ〜〜〜〜〜〜ッ!
ゆいちゃ〜〜〜〜んッ!

がじゅま〜るの青春2人組がダンスフロアに登場!! 最高じゃないか。もうこれで何も心配いらない。

「父ちゃ〜ん、もうそろそろ帰ろうよ〜」

げッ!!?? しまった!凛成が退屈しはじめている!!

昨日と同様、ジュリと2人でなんとかなだめすかして粘ってみるものの……。

「なんか子供がもう帰りたがってるんだよね〜」

と社長に声を掛けてみると、

「そりゃ当然だろ」

と無下もない返事が戻ってきた。そぉか〜〜。

子連れFestival Tripperのミホコは、

「経験上言っとくけど、子供は放っといて大丈夫だから。放任しとけばいいから」

と断言するが、会場内に友達もいない凛成をこれ以上付き合わせるのも可哀想だ。なにせファースト・プライオリティは……!!

とは言え粘りに粘って17時半までは自由に踊っていい約束をとりつける。あ〜〜〜〜、もう残りあとちょっとダァ〜〜〜ッ!

しかしこの残りの延長時間中にダンスフロアでMASAを発見! ジュリと一緒に10周年のお祝いと今回のお礼を伝えることが出来た。いやしかしホント、あのバーニングマンの男がこのような世界に誇れるフェスティバルをメイクしてしまうとは……、音楽の魔法というやつは素晴らしい。MASA、本当にありがとう&ビッグ・リスペクト!!

RDC_Kawamuraphoto : Ken Kawamura

さ、約束通り17時半キッチリに撤退だ。テッターーーーイッ!!

仲間たちに別れを告げ、会場を去る。去り際にがじゅま〜るの2人からエナジーボールを手渡される。イサPのお土産に買って帰ろうと思っていたものだが、結局また好意に甘えていただいてしまった。マジ、いっつもありがとね♪  そしてこれであとは干物を買って帰れば、イサPへのRDCツアーお土産セットはコンプリートだ。

RDC_Jirokenphoto : Jiroken

帰り道、助手席の凛成も後部座席のジュリも速攻で眠ってしまった。ToppyからコピーしてもらったCDを静かに聴きながらハンドルを握る。帰り道にはいつも思うが、伊豆は地図上のイメージより随分デカく、走っても走ってもなかなか高速入口まで辿り着かない。

RDCへの参加を決めてMASAへ連絡してからの日々を思い返す。どれもこれも一筋縄ではいかなかったような気もするが、振り返って見ればきちんと1本の道筋が見えている。今回はその道筋を、スゴロクでも振るように家族3人で1つづつ進んできた。1マスも飛ばすことなく進んできた気がする。

T氏からのアドバイスに従ってキャンプ場を予約し、初日ギリギリの時間に会場へと辿り着き、キャンプ場の管理人と一悶着しながら五右衛門風呂に浸かり、A-skやマリコやジロケンの仕事ぶりを眺め、昔懐かしい仲間たちと踊り、マサオ&ゆいちゃん夫婦の笑顔に癒され、眠りについた家族と2本並んだ筍とともに我が家に向かっている。

会場で過ごした時間はそれほど長くはなかったかもしれないが、とにかく満喫した。もちろん会場のテントで寝泊まり出来ればベストだが、T氏のいう通り、凛成やジュリにとっては会場外のバンガローというのもベターな選択肢だったような気もする。どちらも存分に楽しめたことは確かだ。毎回のことだが、本当に感謝しかない。本当に感謝しかない。

噂通り、RDCは“世界で最も理想的なフェスティバルのひとつ”に間違いなかった。すべての人に門戸は開かれ、会場のどこにいても自由に楽しめ、踊っても踊らなくても気持ち良く、だけどやっぱりダンスフロアに向かってしまうようなパーティーだ。10周年の祝宴に参加できて本当に良かったと思う。家族揃って参加できて本当に良かったと思う。

拾周年おめでとうございます!!
MASA、よくやった!!スッゲーよ!!

RDC_Masanori

RDC_Masanori

RDC_Masanoriabove 3 photos : Masanori Naruse

 

高速の入口はまだまだ先だ。会場を出て最初の土産物屋で干物も買った(残念ながらすでに冷凍物しかなかったが)。渋滞具合にもよるが、今日中にイサPに渡せるといいな……と思いながらアクセルを踏む。

Life is a Trip, a Festival Trip.

 

【 P.S. 】

そう言えば、T氏からは「基本的に動画の撮影はNGですから」と釘を刺され、いつも撮影しているカメラは家に置いていった。しかしせっかくのパーティーレポートなのに、音がまったくないのも寂しい話だ。

手元には初日の夜にiPhoneで撮った90秒ほどの短い動画が残っている。せっかくなのでその動画だけでも掲載したいと思う。きっとT氏も苦笑いしながら許してくれるだろう。

PEACE(^_−)−☆

 

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