しもきた0円マーケット by Shimokita解放区Project

しもきた0円マーケット
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日時:2017年10月15日12:00~17:00
会場:Shimokita解放区(下北沢、東京)

以前の記事でも紹介したShimokita解放区Project。下北沢駅周辺のデッドスペースを自分たちの手に取り戻し、土地やそこを行き来する人たちのエネルギーの流れを正常に整え直す試みだ。

今回のイベントである「0円マーケット」は、あげたい人ともらいたい人とを直接つなぐ、ギフトエコノミーな空間だ。そもそも作家の鶴見済氏が毎月第2日曜日に国立で開催している「くにたち0円ショップ」が派生したもので、当日は鶴見氏本人も参加予定だ。
(※ 残念ながら鶴見氏は怪我のため参加できないそうです。どうぞお大事に)

くにたち0円ショップ

ギフトエコノミー(贈与経済)とは、即時等価交換が求められる現在の経済とは違った、もっと緩く、視野の大きな考え方だ。そもそも我々は常に“損か、得か”のみを瞬時に判断するように習慣づけられている。ひどい場合には友達付き合いさえ、この損得の価値観の中で営まれていたりする。

しかし”損か、得か”ということを唯一の(唯一とまでは言わなくても、最大の)価値基準にしてしまうと、人は自分や他人の感情に鈍感になり、それらを軽んじてしまうことになりかねない。鶴見氏や坂口恭平(新政府初代総理大臣)氏は、即時等価交換に代わるオルタナティブな経済としてギフトエコノミー(贈与経済)を支持している。

Barnigman

例えば世界最大の変態祭りとして有名なバーニングマンの会場では、お金の使用が禁止されている(ほんの一部の例外はあるが)。参加者たちは会場内で、誰かれ構わず自分の持っているものをギフトしまくる。作った料理を振る舞ったりもする。

もらった者は、もちろんその場で自分が持っているモノをお返ししてもいいし、ただ「Thank you ♪」と言って立ち去ってもいい。いづれにせよ、誰かが振る舞ったギフトは巡り巡って、形を変えながら会場内を浮遊する。誰から貰ったか、とか、何を貰ったか、とか、そんなセコいことはどうでもいい。

ポイントは贈与が繰り返されることによって、その場が”あげる喜び”と”もらう喜び”に満たされてゆくことだ。これこそがギフトエコノミーがもたらす最大の恩恵だと言っていいだろう。

自分は「お金」を決して邪魔なものだとは思わないし、むしろ感謝することも多い。誰かに与えることができるもの(それはモノであったり、才能を活かした歌や踊りや絵だったり、時間だったり、単純に笑顔だったりするかもしれない)がないとき、我々はお金を使って感謝の気持ちを伝えたり、他の人の役に立ったりすることも可能だからだ。実際、お金を使ってしまうのが一番”楽で簡単”な場合も多く、だからこそついついそれに頼ってしまったりもする。

自分は高知県の過疎集落に4年近く暮らしていた。ある程度の田舎であればどこでも同じだろうが、そこでは資本主義とギフトエコノミーとがなかなかいいバランスで共存していた。村内にはコンビニもスーパーもなく、村営の小さな商店と、それよりさらに小さな個人商店が数軒、小さな商いをしているだけだった。

高知県三原村

春になるとフキノトウやタラの芽を採りに出掛け、罠に掛かった夏の鹿は肉が柔らかいと重宝され、台風の時期には網箱で川蟹を捕獲し、秋にはキノコや山菜を探しに山に入る。至るところで家庭菜園の野菜が育ち、平地の大部分を占める田んぼは季節ごとにその色を変えた。釣り人に誘われて海へと降りれば、たいてい何匹かはグレやウミゴイなどの美味しい魚が釣れた。

海ゴイ

これらの恵みは、もちろんお金を介さずに村民たちの間を行き来する。自分もまた米を育て、自家製のビールを作り、たまにはお菓子を焼いたりして小さなギフトエコノミーに参加する。田舎暮らしをするにあたって唯一不安だった人付き合いだが、はじめてみればこれほど自然で、リラックスできる関係はなかった。

余談だが、例えば手作りの物を誰かにあげたときに「自分で作ったの? これ、売れるんじゃない?」などと言われることがある。恐らく本人は誉め言葉のつもりで言っているのだろうが、これほど無粋な誉め言葉はちょっと思いつかない。こちらが手間暇かけて作ったものと、お金さえ払えば誰でも買える商品とを同等に、もしくは商品の方を格上だとする無意識から出る言葉だろう。

もし仮に、自分がその手作りの品を相手が言った通りに売るとしたら、きっととんでもない値段をつけるに違いない。実際にそれだけの手間暇や想いがこもっているんだ。売りたくなんかないんだよ、はした金で。そんなことのために一生懸命作ったわけじゃないんだよ。

逆にもし、受け取った相手がそのお礼にギターでも弾いてくれたなら、自分はきっとあげてよかったと思うに違いない。長い年月をかけて上達したギターならなおさらだ。いつも世話になっている近所のおじちゃんやおばちゃんに声を掛け、一緒になってその音色に耳を傾けるだろう。

お金はとても便利だ。ギターも弾けず歌も歌えず、大した才能など何も持ち合わせていない自分のような人間でも、とりあえず1時間労働すれば1000円近いお金が手に入る。何もなければそのお金で感謝の気持ちを伝えることが出来る。これはある程度はフェアで、ギフトのない者(本来誰にでも何がしかのギフトがあるのものだが)にとってはありがたい救済措置だ。

以前、坂口恭平氏がしていた話を紹介する。彼はミュージアムか何かの仕事でアフリカのどこかの町に滞在する。地元の人間と仲良くなり、ディスコへ出掛けようということになった。しかしその地元の男はお金を持っていない。持っているのは坂口さんだ。坂口さんは男の分まで入場料を支払うべきか躊躇する。それを見ていた男は当然のようにこう言う。

「俺は踊りが上手い。踊りで女のコを楽しませることができる。お前は踊りで人を楽しませることが出来るか? 出来ないんだろ? でもお金は持ってるんだろ? じゃ、お金ぐらい払えよ」

2人は坂口さんの払ったお金でディスコに入り、男は上手な踊りで女のコを喜ばせる。ちやほやされるのはその男ばかりで、お金を払った坂口さんは、”お金しか持っていない男”として扱われる。しかし彼は、持っていたお金でこの機会を提供し、だからこそその場に一緒にいることが出来たわけだ。

お金は便利だが、他と比べて特別優秀なわけではない。問題は、お金は万能だと勘違いされているせいで、多くの場所で実際の価値よりも高く見積もられていることだ。1000円支払って聴くことができる歌よりも、1000円札そのものの方が価値があると思われていることだ。便利であるがゆえに偏りも酷い。”ある程度はフェア”と書いたものの、お金を手に入れる手段や実際手に入れられる額というのは多種多様で差が大きく、あまりにもバランスを欠いていると言わざるを得ない。これは当のお金にとっても失礼な話だし、単純に残念だと思う。

だいぶ話が長くなってしまったので、この辺でShimokita解放区に話を戻そう。

今回の「しもきた0円マーケット」は予約や申込など不要。誰でもあげたい物を持参して、ふらりと自分のお店を開くことができる。物はモノでなくてもいいかもしれない。小噺屋があってもいいだろうし、得意な芸でその場を盛り上げてもいいだろう。すべては0円だ。

「お金」の存在価値は決して否定しないが、たまにはその便利なお金を使わずに、他の人たちとやりとりをしてみよう。最初は何か照れ臭かったり、ぎこちなかったりするかもしれないが、それでいいんだ。そもそもコミュニケーションとはそういうものだし、少なくとも、資本主義の隙間に設けられたShimokita解放区では、その照れやぎこちなさを含めたすべてが歓迎されるはずだ。

(※ 実際に「しもきた0円マーケット」に行ってみたレポートは下の記事をご覧ください)

[レポート] しもきた0円マーケット by Shimokita 解放区 Project

 

 ■ しもきた0円マーケット ■

終戦直後にはじまったマーケット=下北沢駅前食品市場
だったShimokita解放区に、
新しいマーケットを開きます。

モノの溢れる世の中。まだ使えるモノ、
捨ててしまう前に、シェアしましょう。
お金を介さない無料ゼロ円マーケット、really really free marketと題して、世界でも広がっています。

貰う、あげる、
コミュニケーションを楽しみ、
人と人のつながりを大切に。

そして、大量消費するだけでなく、
地球環境にも優しく。

シェアをする、ギフトエコノミーの気持ちを持ちよりましょう。

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2017年10月15日(日) 12:00~17:00

\\ 参加するにはー?! //

\ あげたい人 /
「0円ショップ」を開こう!
誰でも、どなたでも。
まだ使える、誰かに使ってもらいたいと思う不要品を持ってきてください。
入れる時間、好きなだけのスペースで、お店を開けます。
コミュニケーションも楽しみましょう。
敷物なども持参ください。
残ったものは、基本は持ち帰りをお願いします。

ずっといるのが難しい方は、「くるくるひろばスペース」に置いてててね。
※30cm以上の大きい物や本は、受付られません。

\ もらう人 /
誰でも、どなたでも。
ほしいもの、使いたいもの、をもらいましょう。

○参加の申込等は不要。お店を開きたい人は来れる時間に来て、空いたスペースでお店を広げてね。

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■ 0円マーケット、ほかにも!!

<nu☆manによる、シルクスクリーンWS>
0円マーケットでゲットした服やバックなどにシルクで刷ってオリジナルをつくろう。(持参したものでもOK)
参加費:投げ銭

<Little Free Library>もあります。
<Free Tea space>もあります。

18:00以降、ポトラック(持寄りご飯会)を開催します。誰でも参加歓迎。

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■ 同日夕刻から↓ (別企画、0円ではありません)

<身体とパフォーマンスWS - 場・解放・記憶・私>
シスタシスネによる、身体を使ったワークショップ。身体を解放させ、場を感じ、記憶と私、これからをつなごう。
時間:16:30~18:00
参加費:千円以上の投げ銭 ※子どもは無料
※身体が動かしやすい、多少汚れても気にならない服装で、ご参加ください。

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主催:Shimokita解放区 Project
協力:くにたち0円ショップ、くるくるひろば
(出典:facebookイベントページ

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