[レター] a Letter from IBIZA, Introduction 2

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扉写真:映画『More』より

イビザ島とは…

スペイン・Valencia(バレンシア)の東約80kmに位置し、地中海西部のBaleares(バレアレス)諸島州に属する島。面積はバレアレス諸島の中で3番目に大きく(約571k㎡)、人口は約13万人。面積、人口ともに日本の淡路島とだいたい同じくらいだ。

気候は地中海性気候で1年を通じて温暖、降水量も少ない。

イビザ島 気候(出典:旅行.info

パーティー・アイランド

もともとはヨーロッパの富裕層向けののどかな夏のリゾート地だったイビザだが、1960~70年代になるとヒッピーたちの聖地として知られるようになる。

69年に公開されたバーベット・シュローダー監督の処女作品『More』は、イビザ島を舞台に “セックスやドラッグに溺れて破滅してゆく若者たちの姿を幻想的に描いた傑作” と言われているが、そのサウンドトラックを担当したのがPink Floydだった。ちなみに同じ60年代、イビザからフェリーで35分ほど離れたフォルメンテラ島にはボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスが訪れたということだから、きっとこの2人もイビザ島に立ち寄ったに違いない。

YouTube上には『More』のフルムービーが公開されている。当時のイビザ島の様子やヒッピーたちが漂わせる退廃的でアンニュイな雰囲気を堪能できる貴重な映像作品だ。

80年代にイギリスからヨーロッパに広まったセカンド・サマー・オブ・ラブのムーブメントも、そのもともとの発祥はイビザ島だと言われている。

その発祥は、スペインのイビサ島でプレイされていたマーシャル・ジェファーソン、フランキー・ナックルズなどのシカゴ・ハウスの楽曲群やその他のジャンルの曲を、そうしたジャンルを越えてプレイする自由なDJスタイルと言われる。そしてダニー・ランプリング、ポール・オークンフィールドらイギリスのDJがバカンスでイビサ島を訪れた際にそれをイギリスへと持ち帰り、世界的な流行の発端となった。
(出典:Wikipedia

いづれにせよセカンド・サマー・オブ・ラブ以降、イビザ島は再び脚光を浴び、ヨーロッパをはじめとして世界中からツーリストが集まるようになる。

その後、バレアリック・ミュージックが世界的に支持を受けるようになるにつれ、イビザがますますパーティー・アイランドとして注目を集めるようになったのは周知の通りだ。

複合世界遺産

しかし上記のヒッピー・アイランドやパーティー・アイランドとしてのイビザは島の1側面に過ぎない。

1999年、イビザ島は「自然遺産と文化遺産が共存する世界遺産(複合遺産)」として世界遺産に登録された。島は手つかずの自然や美しいビーチに囲まれ、モンクアザラシなどの絶滅危惧種をはじめとした貴重な生物が数多く生息しているらしい(一説によると、イビザの周辺にだけ生息する海藻があり、その海藻のおかげで多くの観光客が行き来するにもかかわらず海水がきれいに保たれているという話もある)。

また島の中心である旧市街(Dalt Vila)には、地中海的な白壁の建物が建ち並んでいる。小高い丘の上に建つイビザ城や、14~17世紀に建造されたカテドラルもある歴史的な地域だ。

イビザ島 地図

「訪れるならオフ・シーズンがいい」と言うイビザ通もいるように、クラブやパーティーだけでなく、静かにゆっくりと楽しむことも出来るのがイビザ島の魅力だと言えるかもしれない。

『イビサ』村上龍

村上龍の作品に『イビサ』という小説がある。89年~91年に連載され、92年に単行本として発売されたものだ。実際の世界に目を向ければ、91年11月にベルリンの壁が崩壊し、日本のバブルも90~91年を境に崩壊へと向かった。『イビサ』はこのような時代の転換期に書かれ、当時の村上龍の作品全般に流れているドラッギーで破壊的な空気が充満した作品だ。

主人公のマチコは新宿のホテルである男から「『パチャ』というディスコに行ってオカマのダンサーに会って礼を伝えて欲しい」と頼まれ、パリ、モンテカルロ、タンジェと移動してイビザ島へと辿り着く。『パチャ』とはもちろんイビザの老舗クラブ『Pacha』のことだ。

イビサ 村上龍

マチコがイビザ島に辿り着くのは最後の数ページのところで、作品全体を通してイビザ島の記述はほとんどない。「イビサにはスペイン全土の九割のフェラーリがある」と書かれているが、当然これもデタラメだろう。そもそも小説だから、書かれていることが本当かどうかは問題じゃない。とにかくこの小説を読んだ当時、俺はどうしてもイビザ島に行きたくて『イビザ特集』の企画書を持っていくつかの雑誌編集部を歩きまわった。結局どこの編集部も企画を採用してくれず、その後もイビザを訪れる機会を得られぬまま今に至っている。

 

[レター] a letter from IBIZA, vol.1 (written by HIDEYO BLACKMOON)

[レター] a letter from IBIZA, vol.2(written by HIDEYO BLACKMOON)

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