[レター] a letter from IBIZA, vol.1 (written by HIDEYO BLACKMOON)

イビザ島 IBIZA
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texts and movies : HIDEYO

日時:2019年2月吉日

世界屈指のパーティー・アイランドとして名高いイビザ島。スペイン・バレアレス諸島、地中海に浮かぶこの島は透明度の高いコバルトブルーの海、パインやオリーブなどの木々が美しい田舎風景、そして温暖な地中海気候で人々を魅了し、シーズンともなるとヨーロッパ各地や世界中から多くの観光客が訪れる人気のスポットです。

今はなきイビザの有名クラブ『Space』の2011年、クロージング ・パーティーの様子

 

1960年代からアーティストが多く訪れ、King Crimson や Pink Floyd などのサイケデリック・ロックバンドも滞在して作品を残し、ヒッピーの聖地として有名になりました。70年代に入ると現在のクラブ文化のはしりであり、今では老舗として知られる『Pacha』などがスペイン本土から上陸、その後も次々とディスコティークがオープンし、ヒッピー系のパーティーに加えてクレージーなクラブ・パーティーが展開されていったようです。

Solomun主催の『Pacha』でのレギュラーパーティー

 

80年代にはイギリスの若者がこぞって訪れるようになり、90年代にはバレアリック・ミュージックが世界中で人気を呼び、今ではエレクトロ・ダンスミュージックの聖地と称されるようになりました。観光客が訪れる時期も以前は6~9月上旬にかけてでしたが、今では観光シーズンが4月から10月にまで延長されている感じで、ピークの7~8月には観光客が溢れかえり、もはや留まるところを知りません。

Sven Vath, Marco Carola などがプレイする『Amnesia』や空港近くの『DC10』はクラブ目当ての観光客に大人気

 

イビザ島は日本の淡路島より少し小さいくらいの面積(571k㎡)で、パーティーシーズン中はヨーロッパのほとんどの主要都市からダイレクト便が飛んでいます。島の中心地、イビザタウンの中の歴史的建造物ダルトビラと、海の生態系の豊かさが認められ、99年に島全体が世界遺産として登録されました。

私がイビザ島を初めて訪れたのは2002年の8月下旬~9月上旬にかけて。日本のSolstice Music Festivalに出演した際、イビザから来ていたアーティストに出会って、その彼に呼ばれて来たのがきっかけです。当時、空港はとても小さく(日本の小さな地方都市の空港ぐらい)、荷物の受け取りターンテーブルは1つしかなかったように覚えてます(その後空港は2回ほどメジャーチェンジをして、とっても大きくなりました)。

その後、別件で2005年に1週間の予定で再訪したのですが、DJをしたり、曲のコラボレーションがはじまったり……、結局2ヶ月半も延長して滞在することになりました。旧知のDJミュージシャンも多く住んでいたし、新しい知り合いも増えて居心地の良い場所になり、いつの間にか住み着くまでに至りました。現在では、ここイビザを拠点に音楽活動しています。

2009年オープンの『Ushuaia』も盛り上がっています

 

イビザは島なので、基本田舎なのだけれど、流石ヒッピーの聖地と言われるだけあってさまざまな人種がモザイクのように存在し、コスモポリタンな雰囲気が漂っています。現在もヒッピー・カルチャーは色濃く残り、ヒッピーやボヘミアン・テイストなデザイナーも数多く、島のあちこちでヒッピー・マーケットが催されています。“フラワーパワー”というヒッピー・パーティーも大人気で、完全にヒッピーがビジネスになっています。昨今では、ニューエイジ・カルチャーとしても形を変えた感があり、ヒーリング・フェスティバルや、さまざまなリトリートなどが高額であるにも関わらず人気を集めています。

居住しているのはもともとのイビザの人(お百姓さんとか漁師の人たち……土地の値段が桁違いに上がってその多くは地主としてリッチになっています)、ヨーロッパの他地域から移住して来た人、その両親を持つ2世や3世たち、出たり入ったりしている人、新しく住みはじめる人、出て行く人(でも戻って来ちゃう率も多い)などなど、お百姓さんからセレビリティまで、パーティー・ピープルからリタイア組まで、とてもバラエティに富んでいて、そういうところが居心地の良さのひとつでもあります。

島の顔は常々変わり、それはちょっと東京っぽい感じでもあります。人々の入れ替わりが激しく、新しいレストランやらホテルやら、人気パーティーも次々と変わっていきます。条例もよく変わり、それに合わせてパーティーの形態も変わります。実は今、イビザのクラブ・シーンを巡る状況は日本の風営法並みにもの凄く厳しいのです(パーティー・アイランドなんですが、自治体は別の観光の道を促進しようとしてるようですね)。というわけで、さて今年のシーズンはどんな顔を見せてくれるのでしょうか。

2018年のパーティーでハイ・クオリティだった“StoryTellers”はローカルのパーティー・ピープルにも人気

 

……で、今はオフシーズンなので、半分以上の知り合いたちは暖かい場所、メキシコ、コ・パンガン、ゴア、バリなど、どこか別のヒッピーな場所に行ってしまっています。というのも、お店やレストランなど、観光客を相手にしたような場所の半分ぐらいは閉まっちゃうので、シーズン中だけイビザで働いている人たちが大勢いるわけです。

私は、今のこの静かなイビザが大好きなのでここに残っています。冬のイビザで何してんの? 暇じゃない? とか、いう人もいますが、いえいえ、この時期こそが素晴らしいのです。(私には)やっと、落ち着いて音楽制作などが出来ますし、ビーチへ行くと透明度も増して美しく、ビーチ独り占めです(寒中水泳だけどね)。

日本の冬って、植物が枯れきっちゃってる感じですが、こちらは逆に夏が暑すぎて土地が干上がってしまいカラカラの焼け野原状態になります。その分秋から春の間に野の花が咲き乱れ、1月に入ると桜によく似たアーモンドの花も咲いて、とてもカラフルで綺麗なんです(その年の降水量にもよるんですけどね。今シーズンは次から次へといろんな色の花が咲き乱れてます)。

というわけで、今回は近所の紹介でもしてみたいと思います。

家のはす向かいには、サンセットで有名な『ラ・トーレ』というホスタルがあります。門から前庭へと歩き、両脇に部屋が並んだ中庭を通って正面に目をやると、扉を切り抜いたようなデザインの奥に真っ青な海が広がっていて、まるで絵画のようです。

その絵画の内側は絶景のレストラン・カフェで、サンセットの時間になるとDJたちがプレイをし、まるで映画を見ているような、海に落ちていくドラマティックな夕日を見ることができます。当然、夕方ともなると近所は路駐の車でいっぱい。ただ、サンセット時は食事をしなくては入店できず、しかもディナーは結構なお値段なので、私はお店を通らずに裏道からこの絶景の崖へと入っていきます(なにせ家から30秒のところですから♪)。サンセット時だけでなく、お昼間に来てもとってもロマンチックなお店です。食事も美味しいですよ。

崖沿いを10~15分ほど歩くと、“Punta Galea(プンタ・ガレラ)”というビーチ(というか岩場)に着きます。観光スポットとしても有名ですが、実は私のお気に入りの場所でもあります。幾重にも層になった岩が段々になっていて、その自然の織り成した情景は、砂漠やキャニオン好きな私としては堪らない感じなのです。友人たちが訪ねて来たときには、よくここに連れて来ます。それぐらい、ずっとお気に入りの場所です。今いる場所に引っ越したとき、プンタ・ガレラから近いというのは嬉しい誤算でした。

真夏にここを訪ねるなら18時くらいがおススメです。日中は暑すぎるし、やはりサンセットが綺麗な場所なので。

このプンタ・ガレラとは反対側に行くと、Cala Gracio(カラ・グラシオ)という入り江になったビーチがあります。夏の間は行かない(というか人だらけで行けない)のですが、オフシーズンはいつも波が静かで最高なのです。

シーズン中は観光客を避けるため、名もなきスポットを数々抑えてあって、サクッと行って泳いで帰って来ます。あんまり長居はしません。

というわけで、海に落ちるサンセットに近い場所に住んでいるわけですが、イビザで2番目に大きい街 San Antoni de Portmany(サン・アントニオ)からも車で3~5分ほどという便利な立地です。サン・アントニオは島の中央西側に位置しています。

ヒッピー系、コンシャス系の人々は主に島の北~北東側に住んでいて、私も以前はずっとそうでした。サン・アントニオはイギリス人の酔っ払いが多いことでも有名で、イメージが悪くて寄り付きもしなかったのですが、最近ではだいぶ印象も変わって来ました。次回はこのサンアントニオの話でも。

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ホスタル『ラ・トーレ』
https://www.latorreibiza.com/en/

 

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