[レポート/前編] ZIPANG 2018

ZIPANG2018
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日時:2018年6月30日~7月1日
会場:白浜フラワーパーク(白浜、千葉)

ちょうど1年前。ZIPANG2017の開催前日、表参道の薬酒バー“GATOSANO”にいた。確かTERUBI(神眼芸術)主催のイベントだったと思う。GATOSANOではCOCALEROとのコラボレーションがはじまり、ZIPANGのクルーたちが運営をしていた。

gatosano

ZIPANGの会場となる白浜フラワーパークは房総半島の南端だ。行きたいのは山々だが自分の1番近い仲間たちには行く予定の人はおらず、移動手段のあてもないので半ば諦めていた。

店内で話していると「東京駅からフラワーパークの前までバスがありますよ」と教えてくれる人がいた。東京駅から乗り換えなしで行けるらしい。

「朝8時発のバスだと昼頃到着で、その後の午後出発の便だと到着するのは夜ですね」

むぅ……。諦めていただけに心の準備も荷物の準備も何もしていない。すでに夜は更けていて、これから帰宅して一から準備をはじめ、東京駅から朝8時の便に乗るのはややハードルが高い。かと言って、せっかく行くのに到着が夜になるのももったいない話だ。加えて天気予報は雨。無理して行って、誰も友達いなかったら寂しいしなぁ……。

ということで、結局2017年は参加せず。後から「雨は凄かったけど、ちょ~楽しかったよ♪」と聞いて地団駄を踏んだ。

gatosano

それから1年間、ずっと楽しみにしていたパーティーだ。その後も何度かGATOSANOに顔を出すたびに、カウンターの向こうで忙しく動きまわるジョージ高田(INDIGO TRIBE、ZIPANGオーガナイザーのひとり)から、

「ゴルゴさん! 招待するんで絶対遊びに来てくださいよ!」

と、かなり前のめりな勢いで声が掛かる。なんていい奴らなんだ♪

ということで、2018年待ちに待ったZIPANG当日。まだ7月にもなっていないというのに東京地方の梅雨は明け、天気に関してはまったく心配がない。

2018年梅雨明け

一緒に行く予定だったFestival Tripのスタッフが諸事情により急遽参加できなくなったので、旧友のToppyと出掛けることにした。俺がインドから帰国した直後からの付き合いだから、もう20年を越える仲になる。

知り合った当時は日本のトランスパーティー・シーンの黎明期で、EquinoxやVision Questのパーティーにも2人して足繁く通った。当時の野外パーティーは2泊3日がデフォルトだったが、我々はパーティー開始の2日前か前日には会場入りしてベスト・ロケーションにテントを張り、音が止まった翌日までステイするという、今考えるとかなり贅沢な(あるいはただの暇人的な)楽しみ方をしていた。ほとんど常に金欠だったから、リストバンドをD.I.Y.してその場をしのぐ、なんていうのも日常茶飯事だった。

Toppyはその後仕事が忙しくなり、身内の小さなパーティーや代々木公園の“春風”などを別にすれば、ここ10年くらいはほとんどパーティーに参加していない。俺が高知から帰ってきたあともいろいろと誘ったが、そのたびに「仕事が忙しくて……」との返信が返ってくるのが常だった。今回一緒にパーティーへ行くことができたのは、まさに絶妙のタイミングだったということになる。

ちなみにZIPANG2018のタイムテーブルは以下の通り(クリックで拡大)。

ZIPANG 2018 Time Table

14時過ぎ、待ち合わせ場所のセブンイレブンから到着のメッセージが入る。家の外に出ると、すでに猛暑のような暑さだ。セブンまで僅か数十メートル歩いただけで、もうクーラーが恋しい。

早速Toppyの車に荷物を放り込み、助手席に座る。しかしセブンまではクーラー切って来たのだろうか、車の中は予想に反して暑い。しかしエアコンのスイッチは入っているし、送風口からはちゃんと風も吹き出ている。少し走ればすぐに冷えてくるに違いない。とにかく出発だ。

千歳船橋を抜けて環八に出る。車の流れはまずまず順調だ。しかし……。もう出発してからかれこれ15分くらい経っているのだが……。ム、ムゥ……、

「なんか……、全然冷えてこないね……」

「バレた? この車エアコン効かないんだよね」

マージーかーッ! エアコンなしなの⁈ この激暑な日中に⁇ 窓開けて! 窓ッ! ていうか、なんで窓閉めてたのよ、汗だくだよ!

効かないエアコンは最強にしたままに、窓を全開に開ける。窓から入ってくる風はほぼ熱風だが、そもそも俺はあまりエアコン派じゃないし、窓全開で走る方が性には合っている。あ~~~~、夏だ!!

アクアラインを抜けて千葉県に入ると景色は一変する。道の両側を緑豊かな山々に囲まれ、建物とアスファルトに埋め尽くされた都市がいかに息苦しく、クレイジーであるかに気付かされる。窓から入ってくる風は明らかに優しくなった。

最後のコンビニで買い出しを済ませ、白浜フラワーパークに到着したのは17時過ぎ。正味2時間半ほどのドライブだ。

車を止め、路上からフラワーパークを見下ろすと、会場のほぼ全景を見渡すことができた。スラリと立ち並んだヤシの木とどっしりとした楕円形のドーム。その向こうでは太陽に照らされて水平線が輝いている。異国情緒&トロピカル感満点だ。

ZIPANG2018

ZIPANG2018

会場へと降りていく。大島エレク総業のデコレーションで飾られたゲートをくぐる手前で、いくらパーティー会場とはいえ、明らかに周囲の空気から浮き上がっている2人組と遭遇する。誰かと思えば、女のコの方はZEN〇の元奥さんのカナちゃんだ。おツレさんは外国人のようだったのでどこから来たのか聞いてみると……、

続いて、上の路上からも見えていたPARADISE BOOKSのテントに直行する。確かPARADISE BOOKSは1回目のZIPANGから開館していたはずだ。

JIROKENはここ数年サウナにハマっているようで、facebookにもときどきサウナ関連の情報を投稿している。この会場にも「Sauna Camp.」の野外サウナがあるらしい。入れる時間が決まっているということなので、後ほどチェックしておこう。

ビーチからの夕日を眺める前にJUNGLE FLOORに入ってみる。巨大な楕円形ドーム型植物園のようなスペースで、バナナの木やソテツなど熱帯を思わせる植物が規格外に大きく育っている。入口は複数のアーティストによるZIPANGの看板アートを制作するスペースになっていて、その奥ではAKARiYAがロウソクに火を灯しはじめていた。

AKARIYA@ZIPANG2018

ビーチに移動するとちょうど夕日の時間帯で、Onchiが海に向かってシャボン玉を飛ばし、すぐそばには踊絵師の神田さおりちゃんもいた。空気が澄んだ日には富士山も見えるということだが……、さすがに夏だし難しいかな……。

夕日は途中からガスに隠れてしまって最後まで見られなかったが、とにかく天気はまったく心配なさそうだ。夏! 間違いなく本日より夏がはじまりました~~♪

すっかり夜になったので、マーケットエリアを覗いてみる。いつも一食ぐらいは会場の出店で食べようと思っているのだが、踊りはじめると飯どころではなくなり、道中で買い出ししたお菓子や軽食で済ませてしまうことになる。食べるなら今がチャンスだ。

ZIPANGにはフロアが3つある。先ほどチェックした植物園ドーム内のJUNGLE FLOOR、プールサイドのZIPANG FLOOR、そしてエントランスゲート脇のHIGHLIFE FLOORだ。まだ時間的にはまったりムードなので、先にHIGHLIFE FLOORを覗きに行ってみる。MIND OFFのDani Savantがプレイしているところだった。

プールサイドの方に戻ってみると、先ほどカレーを食べた『チャイ屋ヨギー』の前で誰かが演奏中で、人だかりが出来ている。パーティー会場で、こういうタイムテーブルにはないゲリラ・パフォーマンスは嬉しい。

実はバケツドラマーMASAを知ったのはこのときが初めてだった。ディジリドゥを吹きながらドラムを叩く姿はバイロンベイ出身のA.B.Didgeridooを思い出させるが、なんといってもMASAはバケツドラマーだ。楽器になっているのは空になったオイルバケツとカラフルにペイントを施した塩ビパイプ。まさに路上のミュージシャン。

このレポートを書く数日前(2018年10月初め)、西武新宿駅前の広場でバケツドラマーMASAが演奏しているのに偶然出くわした。新宿のネオンをバックにバケツを叩く姿はカッコよく、通りすがりの人たちも足を止めて彼の演奏に聴き入っていた。演奏がひと段落したときにちょっとだけ声を掛けたのだが、まるで格闘家のようにゴツイ身体をしていたのが印象に残っている。

プールサイドに戻るとDIGITALBLOCK DJs(CHOKO&DAIJIRO)の時間だ。夜空にはくっきりと月が輝いている。

ミラーボーラーのデコレーションが気になるので、夜のJUNGLE FLOORに入っていく。ちょうどmedicalがプレイ中だったが、ミラーボーラーの幻想的な光の世界とmedicalが創りだす幽玄な音空間がマッチして独特の世界観に包まれていた。

medicalは随分前に、TOFU+イサP+俺の3人でやっていたパーティーでもプレイしてもらったことがあるのだが、その頃からすでに独自のスタイルを築きつつあった。ちなみに普段から、泳ぐときには1度に数キロ泳ぐというストイックな女性だ。

夜はまだ長いので、少し車で休むことにする。短い時間で軽く仮眠をとりたいところだが、気分が高まっていて眠れない。そういえば家を出るときに、サルバドールでゲストハウス『なお宿』を経営するナオヤから超久しぶりにメッセージが入った。日本に戻ってきているらしく、ZIPANGにも手伝いに入るが夜には会場を出て東京に向かうとのことだった。

もう会場にはいないだろうが念のためメッセージを送ってみると、なんとナオヤも今まさに駐車場にいるという。車から外に出て駐車場を端々まで歩きまわると、何年かぶりにナオヤと再会することができた。

ZIPANG会場MAP(MAPはクリックで拡大)

ナオヤは無類の女好きだが、凝り性というのか、妙に芯の強いところもあり、一時期はペルーのサンフランシスコ村でアヤワスカにのめり込んでいた。修行好きな性質なんだろう。そもそも『なお宿』のあるサント・アントニオはサルバドールで最も有名な観光地ペロリーニョを抜けた先にあり、治安的にはギリギリ微妙なところだ。実際ナオヤからも、宿に強盗が入ったという話を聞かされたことがある。そんな場所でゲストハウスをやり続け、カーニバルのときには自ら太鼓隊を組織してゲリラ的に街を練り歩くというから相当タフな男だ。ブラジルではUniverso Paralelloで少しだけ絡んだが、すでにフェスティバルが終わった後で、ダンスフロアでは1度も絡んだことがない。

駐車場で立ち話をしたところ、ナオヤは結婚して日本に戻ってくるということだった。すでに嫁さんの実家がある鹿児島で新生活を試みたが、うまくいかなかったようだ。今さら地球の裏側からライフスタイルを一変させようというんだから、まったく頼もしい限りだ。まだまだこれからだぜ! といったところだろう。とにかくいろいろと急展開な男だ。

残念ながらナオヤは明朝から東京で仕事があるらしく、車で少し仮眠してそのまま会場を出るということだった。今回も一緒にスパークできなかったが、ほんの少しでも話ができてよかった。

さて、プールサイドのZIPANG FLOORではそろそろDJ NOBU(Future Terror)の時間だ。2009年の奄美皆既日食フェスティバルで1度聴いたきりだったので、今回最も楽しみにしていたアーティストのひとりだ。プールに飛び込み、身を引き締めてからフロアに足を踏み入れる。

NOBU@ZIPANG2018

諸事情あってNOBUの映像は撮れなかったが、流石は世界的に評価の高いベテランだ。浮かれた様子のフロアをしっかりとグラブし、ぐいぐいと深いところへ引きずり込んでいく。Toppyも調子よさそうに踊っている。

ずっぽりと3時間のNOBUワールドに浸っているうちに、すっかり朝になっていた。昨日までの日常で体内に溜め込んでいたものを大汗と一緒に流し出し、ひと仕事終えた気分だ。

そういえばJUBGLE FLOORではNOBUと同じ時間にEYE(BOREDOMS)が演っていたはず。Toppyと一緒にJUNGLE FLOORに移動するが、すでにEYEのプレイは終わり、次のDJのShhhhhも終わり間近のところだった。

6時半からはじまるHOBOBRAZILも気になるアーティストのひとりだが、いかんせんJUNGLE FLOORは暑い! 躍らずに座っているだけでもじっとりと汗が浮かんでくる。蒸し暑いうえに無風だ。とにかく1度プールに入ろう。

プールで再び汗を流して踊り出す。NOBUで1度突き抜けているせいか、身体が軽く、調子がいい。明け方は少し靄がかかったような空だったが、もはや完全に快晴だ。目の前にはいつでも飛び込めるプールがあり、さらに100メートルほど先にはどこまでも続く海が広がっている。どれだけ暑くなろうと、何も心配いらない。

DJはNOBUからフロアを引き継いだCMT。トロピカルな会場と、エンドレスサマーがはじまったばかりの7月第1日目の朝……、そんなロケーションにぴったりの選曲で軽やかに踊らせてくれる。とにかく気持ちがいいったらない! ニヤつくなって方が無理だぜ。

極めつけにかかった曲はThe Emotionsの『Best of My Love』! この曲がプールサイドに響き渡っている間、会場はどこか甘酸っぱい国のハイスクールへと豹変し、その場にいたすべての男女が誰ともわからない相手に向かって恋をした。心の奥が理由もなく疼きだすこの感じ……。確かに経験したことのあるこの感覚……。もう、ホント最高♪

俺は踊りを止めて、プールサイドに立って自分のまわりを見まわしてみる。ダンスフロアからは笑顔が溢れ落ちそうなほど沸き上がり、プールに目を向ければプリプリした水着姿の女のコたちが水飛沫をあげてハシャイでいる。ウォータースライダーでは子供たちが、さっきから何度も何度も何度も無限ループのように滑っては上り、滑っては上りを繰り返している。俺はもう1度周囲を見まわし、すぐ隣りに立っていた見ず知らずの青年に声をかけた。

「ここはパラダイスってことで、いいかな?」

青年は突然の問い掛けに一瞬ギョッとし、そして笑顔で頷いた。

俺はもう1度、今度はひとつひとつ指さし確認しながら自分のまわりを360度確認し、そして問い掛ける。

「こっちも、こっちも、こっちも、こっちも……、やっぱりどこを見ても、ここはパラダイスってことで間違いないね?」

「間違いないっスね♪」

そう、間違いなくZIPANGはパラダイスだった。

 

後編に続く……)

[レポート] ZIPANG 2018(後編)

 

 

 

 

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