[レポート/前編] PARAMOUNT 2019

PARAMOUNT 2019
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日時:2019年5月18~19日(土~日)
会場:群馬サイクルスポーツセンター
text : A-sk

今年の1月、iLINXのオーガナイザーであるタケちゃんの家で新年会がおこなわれた。タケちゃん家のパーティーのことを巷ではチョビ髭パーティーと称し、仲間内ではそれをさらに略してチョビパーと呼んでいるらしい。

そのチョビパーでキム君が話かけてくれた。彼は普段、パーティーでキムラヤというお店をやっている。

「エーちゃんって Festival Tripのパーティーレポート書いてますよね? いつも楽しく読んでますよー」

お!?  Festival Tripの読者とは、キム君もなかなか通な男じゃないか…。

「今度僕らのやってるパーティーのことも是非書いてくださいよ」

「うーん……、そうは言っても僕も結構忙しいからねぇ、フフ、ま、念のため聞いておくけど、なんてパーティーやってるの?」

僕は思わず上から目線で、タバコの煙を吐き出しながらそう尋ねた。

「PARAMOUNTってパーティーをやってます」

おッ!?  PARAMOUNT!!  2年前と3年前にも行ったやつだ!

「 玉キャンでやってたやつだよね!? 天気が良くて、新緑が気持ちいい季節で、デコもカッコ良くて、なにより音が良かった!めちゃくちゃ楽しかったパーティーだったって覚えてるなー。あのパーティーで初めてNESSとCLOUDIO PRCのことを知って、それからファンになったんだよね。2018年の夏のクロアチアで開催されたMo:Dem Festivalに行ったんだけど、NESSとCLOUDIO PRCは絶対聴きたいと思って行ったんだ。だからキッカケはPARAMOUNTなんだよ!!」

[レポート/前編] Mo:Dem Festival @ Croatia

「是非今年もPARAMOUNTに遊びに来てパーティーレポート書いてください! 」

おお!どうせチョビパーのレポートかと思いきや、PARAMOUNTだったとは!そいつは嬉しいぞ♪

「そしたら FestivalTrip主催のゴルゴ内藤さんも誘って、行けたら一緒に行ってもいいかな?」

「おおお!ゴルゴさんも来てくれるんすか? それは嬉しいですねー、是非一緒に遊びに来てください♪ 」

よし!早速ゴルゴさんに連絡してみよう。

 

 

text : Golgo Night

PARAMOUTというのは聞いたことのないパーティーだ。そもそもテクノ・オンリーの野外パーティーには行ったことないし、国内のパーティーに足繁く通っていたのはもう10年以上も前の話だ。しかし今回はA-skがパーティー・レポートを頼まれたらしい。俺のことも招待してくれるというので行ってみることにする。

事前にパーティーの告知INFOを載せることになっていたがA-skからは何の情報も届かない。せっかく招待してくれたのだから早めに告知してあげたいが、A-skのところにも連絡がないらしい。ま、ちょうどGWの時期で忙しいので、敢えてこちらからせっつく必要もないだろう。

と、思っているとRAでPARAMOUNTの告知記事を発見!A-skの友達のパーティーだというからてっきり身内ノリの草パーティーだと思っていたが、海外から8人ものアーティストを招聘するしっかりしたパーティーのようだ。GWのはじめに開催されたRDC(Rainbow Disco Club)で友人に聞いてみたところ、

「PARAMOUNTですか? いいパーティーですよ。確か以前はダークテクノ一辺倒のラインナップだったのが、最近はもっといろんなスタイルのテクノ・アーティストを呼んでるみたいですね」

とのことだった。テクノは詳しくないので超楽しみだぞ♪

お!? しかもこれ、OtOdashiがやってるのか! もう何年も前の話になるが、OtOdashiとはちょっとした思い出がある。いや〜、なんか嬉しいなぁ。

 

 

text : A-sk

ゴルゴさんとの初パーティーTripはとても楽しみにしていた。なにせ僕が若かりし頃、それは2005年くらいだから今から14年ほど前の話だが、今はなき渋谷HMVでCDを漁っていたときだった。お店のピックアップコーナーに気になる表紙の本を発見した。

太陽と風のダンス

なんだこれ? 手に取りペラペラとめくる。海外パーティーのことが書いてある。

なんだこれ!!! こんな世界があるのか!! めっちゃ面白そー。

速攻ゲットし、家で何度も何度もすり切れるくらい読んだ。僕が海外パーティーに行きたいと思うキッカケをくれた本である。こんなに一生懸命読んだ本といえば、小2のときに友達のお兄ちゃんから借りパクしたエロ本くらいだ。

とにかく当時は今のような情報はほとんどなく、ヨーロッパのレイブを知ったのはこのときが初めてだった。その本の著者であるゴルゴ内藤さんと一緒にパーティーで遊べるなんて夢のような話。一緒に太陽と風のダンスしたいなー♪

 

 

text : Golgo Night

話は変わるが、勤めていた事務所から数日前にクビを宣告された。ま、一緒に働いているのは嫌な野郎ばっかりだったし、たいして真面目に働いていたわけでもないからまるでショックもない。いつもの無職に戻るだけだ。しかし、東京で家族3人暮らしていかなきゃいけないと思うとやはり気分が重い。

それはそうとして、事務所で使っていたPCから自分のデータを削除または移行しなければならず、今までサボりながら編集していたパーティー関係の映像や夜中に違法サイトからダウンロードしていたエロ動画なども含めると膨大な量になる。しばらく編集作業はできなくなるから、溜まっている編集は事務所のPCが使えるうちにできるだけ進めておきたいし、他の引き継ぎもあるからこれから数日は相当帰りが遅くなりそうだ。

コツコツと作業をしていると、出発の2日前にA-skからメッセージが入る。

 

>>パラマウントですが、出店もあるので4:30AMくらいに出発したいのですが大丈夫ですか?

 

え? ええーーーー、yo! yo! yo!! 4:30AM!!! そ、そんな大人な時間に起きれるかなぁ……。しかもA-skは車を持ってないから当日車を出すのは俺。もちろん俺も自分の車なんて持ってないから、1度実家まで行ってかーちゃんの車を借りてこなきゃいけないし……。

 

>>あと、申し訳ないですが、荷物もたくさんあるので朝うちまで迎えに来てもらえますか?

 

マジか、早速パシリ扱いか……(//∇//)

 

 

text : A-sk

5月18日4:20AM、iPhoneのアラームが鳴る。目は覚めるが凄まじい眠気と吐き気で頭が激しく痛む。

昨晩、友達のパーティーに顔を出したのだが、ものすごい量のお酒を飲んでしまったせいで凄まじい二日酔いだ。しかも、うちに泊まって一緒に行くことになっていたともやも昨夜は別件の友達の誕生日会があったらしく、深夜を過ぎても戻ってこない。泥酔状態で家に帰った僕は、寝るにも寝れずにともやの帰りを待っていたのだ。

結局ともやが到着したのは深夜3時、だいぶ酔った様子でリビングのソファに倒れ込んだ。僕はともやが到着したのを確認すると、おかまいなしで昏睡状態のまま速攻ベットに入る。しかしアラーム設定は4:20AM。横になれるのはたった1時間だ。辛い… …。

しかし起きねば。今回はPARADISE HAIRの出店もすることになっているから、荷物の量が多い。ゴルゴさんが到着する前に荷物をマンションの前に降ろしておかないと… 。

半端ない頭痛の中、少しづつ荷物を玄関の外に出す。ガタガタ音でともやが目覚める。

「え、エーちゃん……、もうっすか?」

もうじゃねえよ、オマエ昨日から酒飲んで遊んで寝ただけじゃねえか、とっとと手伝えよ……。ともやの顔も頬がこけ、青白い。かなり辛そうにも見えるが、完全に自業自得なので無視して準備を進める。

ともやと2人で荷物を出しているとゴルゴさんから連絡が入る。

「A-sk、着いたぞ! 」

 

 

text : Golgo Night

PARAMOUT前日はギリギリまで事務所で作業をし、終電で実家に帰って車をゲット、そのまま家に戻って出発の準備をしてシャワーを浴び、30分ほど仮眠。あ〜、A-skんちまで行かなきゃいけないってことは、もうそろそろ家出なきゃなぁ……。

俺はわりと、待たすのも待たされるのも嫌いな方だ。この日も4:30AMピッタリにマンションの目の前に到着。下からA-skに電話する。

「A-sk、着いたぞ! 」

 

 

text : A-sk

ヤバい。ちょっとは遅れてくると思ったのでまだ準備が整っていない。

「すぐ降りますー」

と言いつつ、ともやと手分けして大量の荷物をエレベーターでエントランスに降ろす。あとは車に積み込むだけけど……。え? Fitすか?ママチャリじゃないすか。

う〜ん、こんなに大量の荷物載るかなぁ?と心配だったものの、きっちりと積み込んでいくと意外と車内スペースもあって、むしろ大人3人が乗ってもまだ少し荷物を載せる余裕があるくらいだった。流石、世界のHONDA!

さぁ、出発だ! PARAMOUNTへのFestival Tripしちゃいましょ〜!!

と、陽気に宣言しながらシレッと助手席に座り込む。後ろを見るとすでにともやも後部座席で突っ伏している。ホント、すみません!! 半端なく頭は痛むし、まだ酔いが残ってるんス! これで運転代わったら飲酒運転で御用っスよ! チラリ…。

横目で見ると、ゴルゴさんはたいして気にせず運転している様子だ。ならば眠れる獅子を起こさぬよう、この話題には触れず、当たり障りのない天気の話題でもして気をそらせておこう。

「いや〜、いい天気になって良かったスね……」

そういえばさっきから、ともやがひと言も発していない。振り返ってみると、

photo : A-sk

うわー、眠ってるのは獅子じゃなくてともやだったんかーい! ま、どっちにしろあんまり役に立たない男なんで、とりあえず寝かせておきましょう♪

 

 

text : Golgo Night

げげ、なんでマリコちゃんじゃなくてともやがいるんだよ?

「いや、マリコは湘南の友達と一緒に行くことになったみたいで……、で、1人分空きができたから足のないともやも一緒にと……」

マリコというのはA-skがはじめたPARADISE HAIRのスタッフの1人だ。今回はそのPARADISE HAIRも出店するので会場まで一緒に行くことになっていたのだ。以前A-skが書いたLOOPのレポート記事にも登場するのだが、そこで公開されているマリコのDJ姿の動画が、萌えロリータ映像としてマニアの間で人気急上昇中になっている(推測)。

密かに楽しみにしていたのだが……、しかしそもそも何でこんな早い時間に出発しなきゃいけないんだ?

A-skの荷物はパッと見、明らかに許容オーバーだが、積み込んでみると意外といい感じで収まった。しかし2人の様子からは運転しようという気配がまったく感じられない。ま、事故など起こされても面倒なので、自分で運転することにする。

空は晴れていて、車窓の景色からは空気の爽やかさまでが伝わってくるようだ。関越の進み具合も順調だ。

Way to PARAMOUNT2019photo : A-sk

俺は他人の万引き話を聞くのが好きなのだが、A-skも小学校低学年から常習者らしく、腹が減っては近所のお店で万引きしていたらしい。初めて捕まったのは中学生になってからで、レンタルビデオ屋のアダルトコーナーで大人向きのビデオを引っ張ったところを店員に見つかったのだという。

警察沙汰にはならずに済んだが、家には通報され、母親がA-skを引き取りに来た。万引きだけでも十分ヤバいが、なにせモノはエロビデオだ。窮地に立たされたA-skだったが、そこは店員のお兄さんが気を計らい、母親が到着したときには盗んだものがエロビデオから『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にすり替わっていた……。

「お〜、それは助かったじゃん」

「いや、それがですね……」と、A-skの話は続く。

せっかく店員さんが気を利かしてすり替えてくれたビデオだったが、すでに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はA-skの家にあったのだ。わざわざ自分ちにあるビデオを万引きするはずもなく、かーちゃんはA-skが誰かに強制されて万引きしたに違いないと思い込んだ。いくら国籍不明の中国人であるA-skとはいえ、母親にとってはかわいい息子。うちのAちゃんはイジメられてるに違いないわ……、ということで、単なるエロビデオの万引きからイジメ問題へと、却って話がややこしくなってしまったらしい。

Way to PARAMOUNT2019photo : A-sk

結局、会場到着まで1人で運転を終えた。とはいえ、群馬サイクルスポーツセンターは都内からのアクセスが非常によく、実際に運転していたのは2時間ほど。途中で寄ったコンビニでは隣りがセルフのガソリンスタンドになっていて、他の2人がコンビニで買い出ししている間にサラッと給油をしておくなど、まるでAD並みの気の利かせっぷりだ。

 

 

text : A-sk

関越自動車道は空いていて、朝7時を過ぎた頃には月夜野インターチェンジから降りていた。スーパーはまだ開店していないので、次に見つけたコンビニに立ち寄る。と……、

HappyShake号photo : A-sk

早くもHappy Shake号を発見!しかも隣りにはPARADISE BOOKSのジロケンもいる!パーティー気分が高まるなー。

コンビニから約15分程で会場に到着。早速PARADISE BOOKS&HAIRの設営に取り掛かりたいところだ、が、その前にビールで乾杯しよう! 天気も最高だし、プシュッ、ビールでも飲みながらゆっくりやりましょう。

頭痛はまだ取れないものの、運転する必要がなくなった途端さっきまでの二日酔いのような感じはなくなった、フィ〜〜〜♪

まずはPARADISE BOOKSの位置を決めて、その隣りにPARADISE HAIRを立てることにする。お、なんかちょうどすぐ後ろに満開のしだれ桜が咲いている。

「よかったじゃん、Aちゃん、ちょうどデコに使えるじゃん」

いつものエロいサングラスをかけたままジロケンが言う。確かに!

東京ではとっくに桜の季節は過ぎているが、ここの会場は標高が高いためか、しだれ桜が満開だ。お花見気分でビールを飲みつつ、手分けして設営してみると、まさにちょうどいい感じでPARADISE HAIRと桜の花がコラボしているぞ!まだ何もはじまっていないというのに感無量だ!

PARADISE ファミリー@PARAMOUNT2019photo : A-sk

PARADISE HAIR@PARAMOUNT2019photo : JIROKEN

 

 

text : Golgo Night

今回はジロケンの運営するPARADISE BOOKSとA-skのPARADISE HAIRが並んで出店するらしい。我々PRADISEファミリーにあてがわれた場所は会場へ入ってすぐの角地、しかもすぐ背後には狂い咲きのごとく満開に花をつけたしだれ桜。まさに一等地だ。

みんなで手分けしてテントやタープを立てていくと、なんとも豪華な基地が仕上がった。俺は自分用のミニマムなテントをそっと隙間に張り、本日2本目のビールをプシュッ!!とやる。気持ち良く晴れた空の下で、昼間から飲むビールはいつだって最高だ。

 

とりあえずこれでやることはなくなった、と思っているとA-skのもとにスタッフの1人がやってきた。どうやらHidai君というDJのようだが……。

「ゴルゴさん、覚えてますか? OtOdashiの……」

おお! キミはOtOdashiの!? ってことはあのとき、あの場所に!?

「もちろんいましたよ! あのときはいろいろと大変でしたよね!」

そう! OtOdashiと俺には忘れられない思い出があるのだ!

PARAMOUNT 2019

2009年(お、今からちょうど10年前か!)、渋谷センター街で営業していたCDショップ『QUINTRIX クイントリックス』が閉店した。QUINTRIXを運営していたのはKei Fujishiroで、Keiはそれ以前にも下北沢でTIME TO GALAXYというレコードショップを手がけていた男だ。DJもやれば、パーティーをオーガナイズしたりステージマネージャーを引き受けたりと、まさにトランス・カルチャーの中心にいた人物の1人だ。

QUINTRIXはただのCDショプではなく、店の奥ではカウンターバーも営業していて、いろいろな人が立ち寄っては情報交換したり、噂話に花を咲かせて帰っていく、そんな交流の場所だった。ひと言でいえば文化を生み出し、そしてそれを育んでいる場所だった。東京でトランス・シーンに足を踏み入れている者であれば、誰もが1度は立ち寄ったことのあるような、そんな場所だった。

余談になるが、この頃のセンター街にはZomboさんが運営するセレクトショップ『フランク雑貨』もあって、両方の店をハシゴしてまわるのを楽しみにしていた人も多いはずだ。

しかし時とともに音源はオンラインで、データで入手するのが主流の時代となっていく。QUINTRIXもフランク雑貨もほぼ同時期に閉店となった。繰り返すが、この両店はただ物を販売するだけでなく、文化そのものを醸成していた場所だっただけにとても残念だ。

その頃、俺はマイクロバスをキャンピングカー代わりに使っていた。奄美皆既日食音楽祭へ行ったのも、3.11の後に東北へボランティアに行ったのもこのマイクロバスだ。

QUINTRIXが閉店するというので、店内の壁に使っていた木材をマイクロバスの車内装飾用に引き取る約束をしていた。約束の日、お店に行ってみるとすでにトンカチ、トンカチと解体作業が進んでいたのだが、その解体作業をしていたのがOtOdashiだったのだ。そう、OtOdashiはサウンドシステムを操り、あちこちでパーティーをオーガナイズするだけでなく、解体屋として立派な会社組織にもなっているのだ!

流石はプロの解体屋、テキパキとした動きでどんどん床や壁を剥がしていく、と思っていると、突然水が噴き出してきた! 誰かが誤って水道管をぶっ叩いてしまったらしい!

水はもの凄い勢いで噴き出し、アッと言う間に店内は水浸しだ。マズいことにQUINTRIXはビルの2階にあり、1階では別の洋服屋が営業している。床に溜まった水は1階の天井から雨漏りしはじめ、すぐに下階からクレームが入る。実際にはたいした雨漏りでもなかったのだろうが、1階の連中はここぞとばかり騒ぎはじめる。店の入口にカラーコーンを置いてお客さんを締め出し、漏れた水で汚れた商品を山のように積み上げる。

「誰かッ、タオル大量に買ってきて!」

OtOdashiの1人が大声をあげ、別の1人が店の外ヘとダッシュする。Keiはあちこちに電話し、水道の元栓の位置を探る。ほどなくしてタオルを買いに行った男が戻ってくる。手にした買い物袋から取り出したのはタオルではなく……、大量の紙オムツだった!!

「こっちの方が絶対水分吸収するでしょ!」

おおおおお!!!
なんと機転の利く男なんだぁッ!!!

話にはまだ続きがある。OtOdashiメンバーの機転のおかげでなんとかその場はひと段落し、とりあえず一息だ。1階の洋服屋への補償や賠償といった問題もあるのだろうが、それはまた後の話だ。じゃあ、それそろ俺も車(今回使ったFitだ!!)に板積んで帰るから、と店を出て階段を降りていくと……、ガーン! マジすか!? こんなときに駐禁って、いやホントにそれ鬼でしょ!!

すごすごと店に戻り事情を説明、駐禁の罰金はOtOdashiが肩代わりしてくれることになったのだが……、咄嗟の判断で紙オムツを買ってきた彼らの機転に比べ、こんなときに駐禁切られる自分のダメっぷりは今考えてもお恥ずかしい……。

「いや〜、よく覚えてますよ♪」

ひとつ良かったことと言えば、こうして何年経っても忘れない思い出ができたことだ。OtOdashiとKeiと俺との3者の間で記憶を共有できたことだ。いや本当にそう思う。

「俺PARAMOUNT初めてだからさ! 超楽しみにしてるから!」

PRAMOUNT 2019photo : Festival Trip

 

 

text : A-sk

自分たちのテントや休憩用のタープなんかを設営し終えて一服すると、時間は13:00を過ぎていた。寝不足と設営で疲労困憊だけど、なんだか目が覚めてしまい眠れる気がしないのでフロア散策に行くことにした。

タイムテーブル@PARAMOUNT2019

PARADISE BOOKS&HAIRの位置から少し坂をあがっていくとサーキットコースがあって、そこが昼間の時間に音を鳴らすMAIN FLOORになっていた。L字に囲むように出店ブースがあり、飲食店からのHAPPY SHAKE、物販のお店が並んでいる。1番奥がDJブースだ。

 

PARAMOUNT 2019

PARAMOUNT2019above 2 photos : Yumiya Saiki

今の時間はNOCOがプレイしている。

NOCO@PARAMOUNT2019

PARAMOUNT2019above 2 photos : Yumiya Saiki

昼下がりのフロアには人が集まりだし、パーティーがはじまったばかりだというのに、もうしっかり踊っている人たちもいる。

続いてのDJはA Made Up Sound。人は徐々に増え、初日の昼間だというのに早くもフロアは盛り上がっている様子だ。

a made up sound@paramount 2019

paramount 2019above 2 photos : A-sk

フロアの最前線で気持ちよく踊っている人たちもいれば、芝生でゴロゴロ遊んでいる子供たちや大人たちもいる。なんとも平和な空気が流れている。

PARAMOUNT 2019photo : Yumiya Saiki

あ、そういえば誘ってくれたキム君のキムラヤを見にいってないな。飲食店のブースを歩いていくと、お店らしきものの中にキム君がいるのが見えた。

「あー、エーちゃん!まだ忙しすぎてキムラヤの出店の準備が完了してないんすよー、さっきからお客さんに棚屋さんですか?って言われるんすよー」

確かに、まだ棚の上に無造作に棚が積んであるだけだった。パーティーのオーガナイズと出店同時はめっちゃ大変に違いない。 邪魔にならないように、僕はテントに戻ることにした。

 

 

 

text : Golgo Night

まだ人がまばらなMAIN FLOORを1人でぶらついていると、

「ゴルゴさん!」と呼び声がする。

「覚えてますか!? 俺、OtOdashiの……」

おお、キミもOtOdashiの!ということはやはりあの場所に?

「もちろんですよ〜〜♪」

お、そういえばちょっとぷっくりとした体型と眼鏡とニコニコ顔……、思い出してきたぞぉ、確かQUINTRIXのあの日は青っぽいツナギを着ていたような……。名前を確認すると、

「ター君って呼ばれてます」

そうか、ならば俺もター君と呼ばせてもらおう。

「ゴルゴさん、ビール飲みます? 仲間が手作りビールやってるんでご馳走しますよ」

「お? マジ? じゃ、いただいちゃおっかな〜♪俺も高知にいるときはビールキット買って自分で作ってたんだよね〜」

ということで、乾杯〜! パーティー会場で仲間と飲むビールはいつだって最高だ。それが手作りビールならなおさらのことだ。

飲んだことのある人ならわかるだろうが、手作りビールは市販のビールと違って角がない。味わいが丸く、柔らかいのだ。それは例えば、食塩と天然塩の違いのようなものだ。前者はただの塩化ナトリウム(NaCl)でトゲトゲしているだけで味気ないが、後者は複数の微量ミネラルが含まれ味に深みと丸みがある。

手作りビールも素となるビールのネタや追加する砂糖の種類、熟成させる場所や季節、熟成期間などによって味わいはまさしく千差万別だ。さらに言えば、同じネタで同時に仕込んだビールでも1本ごとに微妙に味が異なる。同じ木になったミカンの果実でもそれぞれ味が違うのと同じことだ。ビール酵母は生き物で、つまりそれはビールそのものが生きているということだ。ター君の友達が仕込んだ手作りビールも、微妙な味わいがあってとても美味い。

PRAMOUNT 2019photo : Festival Trip

 

 

text : A-sk

やはり睡眠を取っていないから体力的にキツイ。 パーティーはまだまだこれからなので、しばらくタープの中のコットでゴロゴロしながらゆっくりすることにした。

PARADISE BOOKSは子供たちやそのファミリーが自由に出入りし、安定のチルスポットになっている。

paradise books

paradise booksabove 2 photos : JIROKEN

YUMIYA@PARAMOUT 2019photo : Yumiya Saiki

PARADISE HAIRの方はまだオープンさせる必要もない。今回はキム君に頼まれたレポートを書くのも目的なので、お店の方は会場のオブジェ的な役割を果たしてくれればそれでいい。そういうつもりで設営だけはしっかりと頑張った。とにかく少し休もう。

 

 

text : Golgo Night

ここ数日睡眠時間が短く、特に昨日は30分しか寝ていない。MAIN FLOORにはA-skもともやもジロケンも見当たらないし、長いパーティーを楽しむためにもひと眠りしておきたい。

テントに戻って横になるが、気持ちが高ぶっているのか一向に眠りが訪れない。ほんの10分くらいだけでも完全に眠れればリフレッシュできるのだが……。

ん〜〜〜〜〜、ダメだ!フロアが気になって眠れやしない。時間的にはもう少ししたらJames Ruskinに代わる頃だ。ともやが「いい!」って言ってたDJだ。どうせ眠れないならフロアで音を聴きながらRuskinの出番を待つことにしよう。

フロアに行ってみると、すぐ前を見慣れた後ろ姿の3人組が歩いていた。

「ど〜も〜♪」

と声を掛ける。コマっちゃん、ナオちゃん、ゴードンの3人だ。野外のいいパーティーにはたいてい顔を出している。

そもそも俺はナオちゃんとザンビアの皆既日食フェスティバルで出会い、その後も国内外のあちこちのパーティーで顔を合わせている。コマっちゃんはナオちゃんの旦那さんで、そしてこの2人といつも一緒にいるのがゴードンだ。

ゴードンはなんというか、もう見ているだけで安心感のあるような人物だ。パーティー会場でもよくREDのシネマカメラで撮影しているから知っている人も多いだろう。とにかく彼は映像センスがよく、パーティー映像にしてもカッコいいだけでなく、気持ちの伝わる映像を作っている。YouTubeでもいくつか公開しているので是非観てみて欲しい。きっと気に入るはずだ。

Movie : Gordon Pace

「今日は撮らないの?」

「ンン、今日ハカメラ持ッテキテナイヨ、自分ハ?」

「友達がレポート頼まれてるからね、ちょろちょろ撮影するつもりだよ」

「本当ニ?ガンバッテネ♪」

と、そうこうしているうちにJames Ruskinがはじまった。ダンスフロアの邪魔にならない位置に三脚を立て、録画ボタンを押す。よしっ!あとは踊るだけだ!

 

 

text : A-sk

そろそろ夜に向けてPARADISE HAIRのライト点けなきゃなー。

電源をすべて入れて光らせる。おおー、夜のPARADISE BOOKS&HAIRいい感じに形になったなー。HAIRの方はしだれ桜がいい感じのデコになっていい雰囲気になった気がする。狙い通り、会場のオブジェになってるぞ♪

PARADISE BOOKS @PARAMOUNT 2019photo : JIROKEN

PARADISE HAIR @PARAMOUNT 2019photo : A-sk

今回のPARAMOUNTでは海外アーティストを8人呼んでいる。 諸事情で1人来られなかったという噂も聞いたが、いづれにしてもヨーロッパを中心に活躍するテクノ・アーティストたちを聴けるのは本当に楽しみだ。

タイムテーブルを見る限りこれから休む暇などなさそうだ。ならばもう少し体を休ませておこう。

タープ内に戻ると仲間たちが出たり入ったりして、気づけばどうでもいい話をしていた。ふと時計を見ると、あれっ!もう20:00過ぎてるじゃん! やべー、James Ruskin終わっちゃうじゃん!

Ruskinは今回メインのアーティストだ。急いでフロアへ向かう。

夜のフロアは暗がりの中、オーディエンスたちの踊っている姿が波のように見える。 DJブースはレーザーの光とVJに照らされて幻想的な感じだ。フロアの中に入っていくとかなりの盛り上がりを感じる。

above 2 photos : Yumiya Saiki

最前線までたどり着くとJames Ruskinがギュンギュンにあげている。オーディエンスの熱気もヤバい。

うおー!きたーー!
PARAMOUNTにきて初めて踊り出す。
これこれー!! 

photo : Yumiya Saiki

無我夢中で踊った。そして……、すぐに終わってしまった。フロアへの到着が遅すぎたのだ。うおーーー、 悔しーーぃっ。

無駄にダラダラし過ぎてしまい、フロアの盛り上がりを体感できたのはラストの20分だけだった。しかしその20分はめちゃくちゃカッコよかった。フロア最前線にいる人たちはみんな口を揃えて流れがヤバかったよねー、とか、めちゃくちゃ良かったねー、とか言っている。 最後の熱気を感じられたのは良かったが、もっと早くからフロアに行くべきだった。

踊り足りないまま自分たちの基地に戻ってみる。と、ゴルゴさんも戻ってきた。

「Ruskin? ちゃんと映像撮っといたよ」

おおー、流石ゴルゴさん♪
ありがとうございます!

 

 

text : Golgo Night

James Rsukinは硬派でシビれる内容だった。だが、残念ながら本日のMAIN FLOORはこれで終了。これ以降のプログラムは屋内のNIGHT FLOORへ引き継ぎだ。

タープに戻るとすでにA-skも戻っていた。気分は高揚したままだが、休むとすれば今がチャンスだ。流石にこのまま明日の終了まですっ飛ばせる気がしない。

「Ruskin? ちゃんと撮っといたよ。それはそうと俺、ちょっと横になるわ」

俺はゴソゴソとテントに入って横になった。

 

後編へ続く……)

[レポート/後編] PARAMOUNT 2019

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