texts, photos and movies by CHUN
日時:2018年7月13〜16日(金〜月)
会場:Stölln(ドイツ)
(……前編からの続き)
7月15日(日)
日付が変わって、深夜00:30からはイギリスのEat StaticがMAIN FLOORに登場。個人的には2016年のインドネシア皆既日食フェスティバルのプレイが記憶に残っている。インドネシアでは皆既日食当日の朝の時間のプレイだったが、今回は逆に真夜中の時間だ。18番の宇宙人マスクを被ってのパフォーマンスなど、Antaris Projectの宇宙をイメージしたデコと相まって、ダンスフロアを宇宙空間まで導いていた。
Eat Static終了後もテントには戻らず、会場をあちこち徘徊していた。結局、朝日が昇りはじめる5:30頃まで起きていたが、あいにく空は曇天。美しい朝日は拝めなかった。加えて早朝は、MAIN FLOORにもALTERNATIVE FLOORにも、オーディエンスはまばらにしか残っていなかった。多くのパーティーやフェスティバルでは、日の出の時間は盛り上がることが多いのだが、数日間続くAntaris Projectではどうも勝手が違うようだ。テントに戻って、寝た。
お昼過ぎに起床。テントからのそのそと這い出して、ALTERNATIVE FLOORのTotal Eclipseを聴きに行く。シーン黎明期から活動するフランス人Stephane Holweckのソロ・ユニットで、Festival Tripにも最近のインタビューが掲載されているので参照して欲しい。
その後、デンマークのMorten GranauがMAIN FLOORに登場。近年、人気のある若手DJで、ヨーロッパ各国をはじめ、ブラジルなどでもプレイをしている。サイケデリックというよりは、どちらかというとプログレッシブなサウンドだ。 2016年のVoov Experienceで初めて聴いて以来、YouTubeで自宅リピートしていて、今回のAntaris Projectでも楽しみにしていたDJのひとりだ。ここドイツでも人気があり、多くのオーディエンスを集めていた。
続いてイスラエルのAstrixが登場。もはや説明不要のサイケデリック・トランスのトップアーティストだ。これまで国内外でAstrixのプレイは何度も聴いてきたが、今回のAntaris Projectでもダンスフロアを最高潮に導いていた。
Astrix終了後、MAIN FLOORは小休止(20:00〜21:00)だ。ALTERNATIVE FLOORに移動すると、ドイツのBuzz-Tがプレイしていた。
Buzz-Tは、DJとしての音楽活動以外に映像制作を長く続けており、Psynema名義で制作した『GOA:20 Years of Psychedelic Trance』はシーンの歴史を記録した名作中の名作だ。
movie by PSYNEMA
MAIN FLOORに移動すると、Mike Maguireがプレイしていた。Juno ReactorのオフィシャルDJとして、世界中のパーティーで活動を続けてきたベテラン中のベテランだ。2017年のSpace Gathering 20周年パーティーでも、Mike Maguireならではのオンリー・ワンなDJセットだったと聞いている。今回のAntaris Projectでも、日没の時間を確実にビルドアップしていた。
7月16日(月)
とうとう最終日を迎える。 午前のMAIN FLOORではドイツのAntaroがプレイしていた。ドイツ北部のハンブルグで老舗トランス・レーベル “Spirit Zone Recordings” を運営してきた大ベテランだ。日本ではなかなか聴く機会がないでの、地元ドイツで彼のプレイを聴けたのは嬉しい。
その後、MAIN FLOORでは、M-Theory、Earthling、Waioと続く。Waioは多国籍ユニットQuadrasonicのメンバーで、まだ23歳のブラジル人DJ。これからの成長が楽しみなDJのひとりだ。
Waioの後は、同じくブラジルのBurn in Noiseにバトンタッチ。Burn in Noiseをじっくり聴くのはこれが初めてだった。ブラジルの最高峰 3人組”The First Stone” のメンバーであるグスタボ(Gustavo)のソロ・プロジェクトだ。
そしていよいよ、イスラエルのAstral ProjectionがMAIN FLOORの最後のアーティストとしてステージに登場。
2016年のVoov Experienceでは、仕事の関係で最後まで滞在することができず、フェスティバルの途中で帰国しなければならなかった。今回は休みを長めにとり、最後まで滞在できるスケジュールにしているので安心だ。
そもそも今回Antaris再訪のきっかけとなったのは、ゴアでのニューイヤー・パーティーの後に立ち寄った日本食レストランで冷蔵庫に貼られていたAntarisのステッカーを見かけたことだ。
そのときのニューイヤー・パーティーでもAstral Projectionは最高だったのだが、その後調べてみると、大好きなAstral Projection をはじめとして、他にも見たいアーティスト・DJが複数Antarisにラインナップされていたので、こうしてドイツまで来ることになったのだ。
今回のAntaris Projectでのプレイも最高だった。 “Hallucinogen – LSD(Astral Projection Remix)”、“People Can Fly”など、定番の名曲ももちろんプレイ。
ラストは先日のゴアでもプレイした歴史的名曲、The Age Of Love の“The Age Of Love”だった。今回プレイした曲もジャーマン・トランスの雄Jam & Spoonによるミックス“The Age Of Love(Jam & Spoon Remix)”だったと思う。
以前イスラエルを旅行していた時に、隣国レバノンのDJユニットR.E.G. ProjectのCDがイスラエルで販売されているのを見かけた。ご存知の方も多いと思うが、イスラエルとレバノンは継続的に戦争を続けており、国交はない。イスラエルの入国スタンプがあると、国交のないレバノンには入国できない。当時イスラエルで会った旅行者にこのことを話すと、
「CHUNくん、音楽は国境を越えるって聞くよ」
と言われたが、ドイツのAntaris ProjectでのイスラエルのAstral Projectionによる“The Age Of Love(Jam & Spoon Remix)”のプレイは、「音楽は国境を越える」というか、国家や民族の壁を越えていくといった意味合いが少なからずあったのかもしれない。
先日のゴアでは、フランシスコ・ザビエルや天使たちに導かれるかたちで昇天してしまったが、今回のAntaris Projectではしっかり足を付けて、国家や民族の壁を越えた多幸感に満ち溢れたダンスフロアの様子を動画に収めてきたので、是非ご覧いただきたい。今回イチ押しの動画だ。
ダンスフロアでは、14年前のAntaris Projectでも会ったドイツ人にも再会した。お互いに顔は覚えているはずなのだが、最初は気恥ずかしくて、お互いに気づかないふりをしていたが、フロアで目が合った時に「I remember you ! 」と声を掛けると、相手も急に打ち解けた笑顔になり、ハグをして再会を喜んだ。
他にもブラジルのパーティーでよく会ったブラジル人カメラマンも見かけたが、とうとう声を掛けられず仕舞いだった。次に見かけた時は、思い切って「I remember you ! 」と声を掛けてみたいと思う。
Astral ProjectionでMAIN FLOORは終了となったが、あまりに良すぎて放心状態だった。
「確かまだAmbient Areaはやってたな…」
Ambient Areaに向かい、しばらくチルアウトして、ALTERNATIVE FLOORの隣りにある金色のモニュメントが設置された小高い丘から夕日を眺めて、テントに戻って、寝た。
7月17日(火)
一晩寝た後、テントを片付けてフェスティバル会場を出た。シャトルバスは昨日で終了していたはずだが、エントランス付近から出ていた臨時便に乗って最寄り駅のRathenow駅へと戻ることができた。 こうして4泊5日のAntaris Projectは終わった。
Antaris Projectは24年も続くドイツの老舗トランス・フェスティバルということで、 豪華なラインナップ、サウンドシステム、完成度の高いデコレーション、充実のマーケット&フードエリア、広々としたキャンプサイト、シャワーやトイレなどの施設、そして何よりもフェスティバルに集まったパーティー・フリークたち……、どれをとっても素晴らしかった。
ひとつ注意しておきたい点があるとすると、夏とはいえども、夜はかなり寒くなるということだ。 フェスティバル会場があるドイツ北部Stöllnは、北海道の最北端である稚内市よりも北にある。 日中はそれほど暑くならず過ごしやすい気候だが、日没後、夜間と早朝はかなり冷え込む。10℃ぐらいまで気温が下がるのではないだろうか。分厚いダウンジャケットと暖かい寝袋は忘れずに持参してほしい。
今夏のヨーロッパは、ポルトガルのBoom Festival とハンガリーのOzora Festival が多くのパーティー・フリークを集めていたようだ。世界3大トランス・フェスティバルに数えられる両フェスティバルと比較すれば、Antaris Projectはひと回りふた回り小さなトランス・フェスティバルかもしれない。それでも、わざわざ日本から足を運ぶに値するトランス・フェスティバルだと感じた。年末年始に参加したゴアのHill Topのニューイヤー・パーティーと比較しても甲乙のつけ難い、最高のパーティーだったと思う。日本から離れたドイツのフェスティバルに毎年行くのは少々ハードルが高いが、またいつの日か再々訪したいと思った。
来年2019年は25周年を迎えるAntaris Project。世界を旅するFestival Tripperなら、是非一度は足を運んでみてほしい。
(以下の関連記事もお読み下さい♪)