texts, photos and movies : CHUN
日時:2019年2月8〜10日(金〜祝月)
会場:Hill Top(ゴア、インド)
……前編からの続き。
Hill Top Festival 最終日の3日目。この日も昼を過ぎてからの入場だ。
メインフロアではオランダのJimboがプレイしていた。彼もHill TopのパーティーでよくプレイしているDJだ。
チルアウト・スペース(Alternative Stage)を覗くと、Raja Ram、GMSとともに1200 Microgramsのメンバーとして知られる米国のChicagoがプレイしていた。いつものフルオンではなく、ダウンテンポでのプレイだ。
メインフロアではデンマークのWoos、イスラエルのFadersと続いた。特にFadersは、2日目のImagine Marsと同じく、夕日から日没後のメインフロアをいい感じにアゲていた。
Fadersのラストは、 “Astral Projection – Mahadeva(Faders Remix)”。Astral Projectionの有名曲のRemixで、ダンスフロアはかなり盛り上がっていた。
Fadersの後のメインフロアには、ブラジルのBurn In Noiseが登場。一方、Alternative Stageではイギリスのベテラン、Eat Staticがプレイ。BPMは遅めだが、味わいのあるサイケデリックな選曲で、フロアで踊るオーディエンスも喜んでいた。
Alternative Stageに寝転がって、夜空を眺める。日本で仕事をしていると毎日の仕事が忙し過ぎて、ゆっくり夜空を眺めることなんて、まずない。休みの日は休みの日で、これまた夜空を眺めることは、まずない。
「こうやって、ゆっくり夜空を眺めるのもいいもんだな。Hill Topからも意外と星が見えるもんだな。しんのすけさんが言ってたようにUFOも見えるかもしれないなぁ……」
しんのすけさんというのは東京の浅草でオーガニックなカレー店をやっていた友人で、今回、奥さんのさなみさんと一緒にゴアに長期滞在していた。彼の作るカレーは日本1、いや世界1個性的なカレーで、見た目も味もスペシャル。テレビや雑誌にも何度も取り上げられていた。今は浅草の店を他人に譲り、しばらくの間インドに移住することにしたらしい。
彼はUFOをときどき見かけるらしく、
「UFOは、星みたいな感じで夜空にいるんですよ。星かな?と思ってみていると、ちょこちょこ動き出すんで、あっUFOだ!ってわかるんです」とのこと。
僕は残念ながらUFOを見たことはないのだが、しんのすけさん曰く、何となく出そうかなぁと思って夜空を見上げると、やっぱりUFOを見かけるのだという。
メインフロアに戻ると、しんのすけさん、さなみさんと合流。2人とは昨日も何度か会場で会っていて、特に探さなくても、お互いによく会う感じだった。2人ともとても楽しんでいて、僕も彼らの笑顔を見てエナジーをもらっていた。
最終日のトリはスイスのAjja。ここ数年はHill Topのパーティーでも毎年のようにプレイしており、最近はよく来日もしているアーティストだ。ベテランのRaja Ram、Eat Static、Tristanではなく、Ajjaが大トリをつとめるということは、彼がHill Topの顔、現在のゴア・トランスの顔だと言っても過言ではないのかもしれない。事実、Hill Top Festivalで僕が参加した2日間の中で、大トリのAjjaの時間が1番盛り上がっていた。
Ajjaのプレイが終わり、22:00でHill Top Festivalは終了となった。
「チャイ屋で少し休憩しましょうか」
Hill Topのチャイ屋で、しんのすけさん、さなみさんとチルアウトしながら談笑。
「9Bar(ナイン・バー)で、アフターやってるみたい」
「サウス・アンジュナのShiva Valleyでもアフターやってるらしいですよ」
「Hill Top Festivalのオフィシャル・アフター・パーティーもあるねー」
ここ数年のゴアでは、デリーから赴任した厳格な警察署長の規制で、22:00以降の深夜のパーティー開催が難しくなっているそうだ。大規模なHill Top Festivalは、深夜営業規制に従ってか、22:00きっちりに音が止まったが、複数の別会場で深夜のアフター・パーティーをやっているとは……、往年のゴアを思い出させるような賑わいで嬉しい。
まずはHill Topから1番近い9Barにバイクで向かう。昔の9Barは夕方から音を出し、22:00で終了。ガンガン踊り倒すというよりも、アンジュナ、バガトール、チャポラなど周辺に滞在しているパーティーフリークたちが集まり、パーティー情報を収集する場所だった。
以前はFacebookなども普及しておらず、SNSによるパーティー告知はまったくなかった。ゴアの町中にポスターやフライヤーで告知しているパーティーもあるにはあったが、多くの場合パーティーがいつどこで開催されているかは9Barなどに行って口コミに頼るのが常だった。9Barはバガトールビーチの崖の上にあるので、アラビア海に沈む夕日も見どころのひとつで、チルアウトがてら夕方の時間に来る人もいた。
23:00頃に9Barに到着。音は往年のゴア・トランスだったが、複数のアフターをやっていたためかフロアに人はまばらで、あまりお客さんは入っていなかった。
9Barを早々に切り上げて、サウス・アンジュナのShiva Valleyに向かう。しんのすけさん、さなみさんと別れ、1度宿に戻った後、同会場にバイクでひとりで向かった。
昨年のニューイヤーで訪問していたので、何となく道は覚えていたが、スマホでGoogle Mapを見ながらよそ見運転をしていると、誤ってバイクを転倒!! 幸い対向車もなく、スピードも出していなかったので、擦りむく程度の怪我で済んだが、今回新しく購入して持参したデジタル一眼カメラの外付けマイク(約50,000円)が、ゴアのアスファルト道路に叩きつけられ、ぶっ壊れてしまった……。
ゴアのバイク事故、本当に多いので、細心の注意を払って気をつけてほしい。
Shiva Valleyに到着後、しんのすけさん、さなみさんと再び合流。ここもあまりお客さんは入っておらず、人はまばらだ。ビーチ沿いのテーブル席で、ご飯を食べながらチルアウトする。
「しんのすけさん、さなみさんは、ゴアの後どうするの?」
「Hill Top Festival が終わったからハンピに行って、またゴアに少し戻って、その後インド北部のバシストに行こうと思ってます。バシストでお店やろうと思ってて」
バシストとはインド北部の山間部、マナリにほど近い村で、温泉で有名な知る人ぞ知るチルアウト・スポットだ。
「浅草のお店も繁盛してたのに、すごいチャレンジだよねー」
「インドの、しかも山奥で店はじめるのはかなりギャンブルですよね(笑)。東京でお店やるのはこれまで長くやってきたんで、今度は別の土地でチャレンジしたくなったんですかね。ずっと同じことをやっていると、このやり方が正しいと思いこんでしまいがちですけど、他に良さそうな道や方法があれば、やり方を変えてでも、状況を見ながら柔軟に対応していきますよ」
しんのすけさん、さなみさんとも、さすがにお店をやってるだけあって、穏やかで人当たりがいいというか、どんな人にもどんな状況にも合わせられる柔軟さがあると感じる。
仕事もパーティー通いも長くなると、このやり方が正しいと思い込んでしまいがちだ。日々の仕事が忙し過ぎて、休みの日はマッサージに行くのがここ数年の慣習になっている。
「肩も肩甲骨もガチガチに固いですね……」と毎回言われながら、セラピストの方に身も心も揉みほぐしてもらい、多少柔らかくしてもらっているのだが、頭のマッサージはあまりしないためか、ただでさえ固い頭が、自分でも気づかないうちにますます固くなっているのだろう。頭がガチガチに固くなるのは多忙な仕事のせいにしたが、自分自身の内面の問題でもある。
2人を見習って、柔軟に対応しなきゃな。気づきのゴア(笑)。気づくだけじゃなくて、実践しなきゃな。そんなことを考えつつ、夜のビーチで2人と話しながら、ゴアの波の音を聞いていた。
お客さんもまばらなShiva Valleyを後にし、今度は3人でHill Top Festivalのオフィシャル・アフター・パーティーに向かう。会場は2013年12月にオープンしたというゴアでは比較的新しい、Chronicle Goa(クロニクル・ゴア)だ。バガトールにあり、さっき行ったばかりの9Barのすぐ近くだった。9Barから真っ直ぐ行けばすぐだったが、寄り道・回り道もまた人生だろう。
入口の階段から降りていくとダンスフロアがあり、その奥には砂浜のビーチもあって休憩スペースになっていた。さすがにHill Top Festivalのオフィシャル・アフター・パーティーだけあって、お客さんの数も多く、かなり盛り上がっている様子だ。僕らが着いた深夜2時頃は、ちょうどHill Top Festivalの大トリを務めたAjjaがプレイしていた。Hill Topよりもフロア面積はひと回り、ふた回り小さかったので、さすがにダンスフロアはすし詰めだった。Tristan、Imagine Marsなど、Hill Top Festivalの出演者も踊りに来ていた。だいぶ混んでいたので、しんのすけさん、さなみさんともはぐれてしまった。
Ajjaの次は、イスラエルのIlluminationが登場。Xerox & Illuminationの名前で長く活動してきたアーティストだ。アフター・パーティーの様子も動画に収めてきた。バイク事故で外付けマイクがぶっ壊れてしまい、カメラの内蔵マイクでの録音なのでだいぶ音質は劣るが、アフター・パーティーの雰囲気は伝わると思うので、是非ご覧いただきたい。
アフター・パーティーは少なくとも朝までやるそうで、昼ぐらいまで続くかもしれない。この日のお昼にはアンジュナのホテルを出発し、ゴア空港に向かう必要があったので、後ろ髪を引かれつつも、夜明け前のまだ暗い時間にアフター・パーティーの会場を後にした。
昼前に目覚めると、まずはアンジュナ交差点でバイクを返却。荷造りを済ませ、前日に宿のフロントで頼んでおいたタクシーに乗って、ゴア空港へ向かった。ムンバイ経由で帰国の途へ。こうして、今回の弾丸ゴアTRIPは終わった。
※ ※ ※
前回のHill Topのニューイヤー・パーティー同様、Hill Top Festivalは “ゴア・トランスの殿堂” の名に相応しく最高だった。Ace Ventura、Tristan、Raja Ramがプレイした初日から参加できればもっと最高だったに違いない。
今回いくつかパーティーをハシゴして、あまりお客さんの入っていないパーティーもあったが、そんなパーティーがあるのもゴアらしくて面白かった。ゴアのパーティーのすべてが盛り上がっているわけではなく、ハズレのパーティーもゴアでは昔からよくあったと思う。
さすがのクオリティのHill Top Festival、大入りだったオフィシャル・アフター・パーティー、ハズレのパーティーも含めて、前回のニューイヤー同様、ゴアのパーティー・シーンはかなり盛り上がっている印象を受けた。
「ゴアはサイケデリック・トランスのメッカ(聖地)なんだよ…」
今回のHill Top Festivalにも出演し、世界各地のパーティーやフェスティバルで、世界中のオーディエンスを盛り上げているAce Venturaが、Hill Top Festival 2018のオフィシャルムービーで語っていた言葉だ。
Hill Top Official Movie
前回のニューイヤー・パーティー、今回のHill Top Festivalと、短期間ながらも参加してみて、Ace Venturaの言葉のとおりだと思った。
5年、10年、20年……としばらく行ってない人も、これから初めて行く人も、サイケデリック・トランスのメッカ(聖地)であり、ゴア・トランスの発祥の地であるゴアに足を運んで、聖地巡礼してみてはいかがだろうか。何かしらの気づきがあったり、ターニングポイントになるかもしれない。
毎年ゴアのパーティー・シーズンは4月上旬頃で終了となるが、その後はインド北部の山間部マナリのシーズンと聞く。残念ながら、僕はマナリ周辺のパーティーには行ったことがないのだが、今回のゴアでご一緒させてもらったしんのすけさん、さなみさんの新しいお店(レストラン)のあるバシストもすぐ近くだ。
『SAZANAMI(さざなみ)』
インド北部バシストのレストラン
※2019年5月オープン予定
バシストからはヒマラヤの展望も良いらしく、温泉もあるそうだ。ゆっくりチルアウトするのにもうってつけだ。期間限定で「Festival Tripを見た!」で1品サービスもあるとのことで、是非訪れてみてほしい。
世界を旅するFestival Tripperなら外すことのできないインドのゴア。僕はまた聖地巡礼のチャンスを狙っている。インド北部の山間部のパーティーも、近い将来、足を運んでみたいと思っている。
Life is a Trip, a Festival Trip.
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