小径のノエル ~Christmas Candle Night in Shimokitazawa~

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日時:2019年12月21、22、24日
会場:下北沢駅周辺(下北沢、東京)

 

 

つい先日、小4の息子が宿題で書いたクリスマスについての作文の下書きを読む機会があった。

 

「ぼくは、なぜ12月の終わりごろにクリスマスがあるのかぎもんに思います。なので今回はそのことについてぼくなりに考えてみました。

なぜ12月の終わりごろにクリスマスがあるのかというと、12月は1年の終わりで1月からは新年なので、1年の最後をかざってみんなに新年もがんばれという、気持ちを高めてもらうためなのではないかなと思いました。ぼくはクリスマスは1月にむけてのエールのようなものなのかなと思いました」

 

 

この下書きを読み、

「ハハ……、クリスマスはキリストの誕生祝いで、だからキリストの誕生日とされている12月25日に祝うことになってるんだよ」と、余裕ヅラで話してあげたいのをぐっと堪え、作文帳に書く前に自分で1度調べてみるようにと伝える。

子供がiPadで調べるのを横で見ていると、なんと、そもそもクリスマスの起源は太陽神を祭る祝祭にあり、キリストの誕生より遥かに古いものらしい。12月25日はほぼ冬至にあたり、1年のうちで昼の時間が最短となるこの日を境にして日増しに日脚が伸びていくことから、冬至に新しい太陽の誕生を祝うという習慣は昔から世界各地にあるのだということだ。

さて、このように地球のあちこちに起源をもつクリスマスを静かに祝うイベントが、下北沢で開催される『小径のノエル』だ。

小径のノエル

 

下北沢で小さな商いを続ける古本カフェ『気流舎』のホリム・ベイ(冒頭の動画を編集したのも彼だ)から連絡があり、送られてきた小径のノエルのホームページを開くと、そこには前述したクリスマスの起源について、よりわかりやすい説明が書かれていた。

 

クリスマスの起源は、世界の様々な地域に太古からある、「冬至」のお祭りだと言われています。
太陽の力が一番弱くなり、自然は生命力を失い、世界がすべてのバランスを失うこの時期、人間の力の及ばないところから精霊たちがやってきます。
彼らは恐ろしい姿をしてこの世界に現れますが、私たちからすれば、新しい生命をもたらしてくれる存在なのです。
異界から来る精霊たちは、自然のとても強い力を運んでくれます。
わたしたちは彼らをこころよく迎えて手厚い贈り物をおくり、祭りが終わると精霊たちはまたあの世に帰って行く、というのが冬至のお祭りです。

世界中には冬のお祭りにやってくる様々な精霊がいます。
北欧のユールトムテは、クリスマスに家事を手伝ってくれ、お世話になった家ではお礼にお粥やスープをプレゼントします。
北米南西部に住むネイティブ・アメリカンのカチーナは仮面をかぶって村を訪れ、子供たちに贈り物をしたり罰を与えたりする、祖先の霊や神です。
オーストリアのクランプスは恐ろしい怪物の扮装をして、鞭を持って町を練り歩き、子供たちによい子で親の言うことを聞くように諭します。日本のナマハゲなどもその仲間です。

また、お祭りの時には生命の樹である、常緑樹のもみの木や樫の木、ヤドリギなどを飾りました。

これがクリスマスのお祭り、サンタクロースやクリスマス・ツリー、クリスマス・プレゼントの由来でした。

クリスマスのこの時期、精霊たちへの贈り物として、キャンドルに命の象徴でもある火を灯し、太古から続く死と再生のお祭りをともに祝いましょう。

 

「キリスト教徒でもないのに……」とか、

「本場のクリスマスはね……」とか、

さんざん聞かされてきたが……本場も何も、そもそもクリスマスなんて名前がつく前からずーっと地球のあちこちで祝われていたんだよ!!

太古の昔に起源をもつ小径のノエルは、今年で10周年を迎える。

 

ちょっぴりイベントの由来など……

2010年の秋に、下北沢の雑貨屋「Rhythm9」の店先で、南伊豆に工房を持つキャンドル・アーティストの「AKARiYA」のキャンドルを灯す企画が持ち上がりました。それならば「気流舎」でも、と一緒にキャンドルナイトをやった事から、その年のイヴの夜にもイベントをやる事を思いつきました。先ほど引用した『火あぶりにされたサンタクロース』にも強く影響を受け、商業化されたお祭りとしての「クリスマス」ではなく、太古の冬の祭りを意識して、ラテン語の「誕生」という言葉に由来する「ノエル」と名前をつけました。2010年のイヴの夜に1回目が行われ、今年で10回目になります。

小径のノエル

 

キャンドルナイトといって思い出すのは、3.11の原発事故の後、計画停電によって町が真っ暗になった夜のことだ。電気が消える瞬間、そのとき住んでいた川口駅の駅前歩道の上からロータリーを見下ろしていたのだが、突然真っ暗になった駅周辺を見て「こんなに綺麗になるなら、今後も毎月1回計画停電を続けてくれればいいのに……」と思ったものだ。震災から8年以上が経つが、この国はまだ死に切ってもいなければ、再生もしていない。

小径のノエル

 

小径のノエルの舞台となる下北沢は以前の記事でも紹介した通り、駅前市場が取り壊されたり、小さなお店が立ち退きを迫られたりする一方、新駅舎が完成するなど町自体が大きな変化のただ中にある。冬至の夜、下北沢駅前広場に集まった小さな炎たちを見つめながら、遠い昔どこかで出会った記憶や今ここで繰り返される死と再生について、ゆっくりと物語を辿っていきたいと思う。

 

下北沢でこうしたイベントをやる理由

「クリスマス」は、そもそもキリスト教のお祭りではなく、太古から続く冬の祭りを起源とする、生命の再生や豊穣を願うお祭りでした。

近年商業化されてしまっているクリスマスですが、できれば下北沢らしくいきたいものです。大通りのイルミネーションよりも、小径の多い下北沢にはキャンドルの炎が似合う気がします。

下北沢のお店は、何十年もやっている老舗でも、出来たばかりの新しいお店でも、みんなこの街が好き、この街を大切にしたい、という意識が強いと思います。下北沢は小さなお店が沢山あって活気があるようにみえますが、小田急線の地下化や道路問題で駅前の旧い市場が取り壊されたり、大手資本が入ってきて家賃が上昇するなど、個人のささやかなお店は成立しづらい状況にあります。

小さなお店が集まって、小さな明かりを灯す。それだけのことがつながって街を素敵なものにしていけたらいいな、と思います。

ゆらゆら揺れるキャンドルの灯火を頼りに下北沢の小径を歩いてまわってみてください。

小径のノエル

 

 

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