[レポート] FESTIVAL de FRUE 2021

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日時:2021年11月6~7日(土、日)
会場:つま恋リゾート彩の郷(掛川、静岡 )

FESTIVAL de FRUEはおそらく日本で最もユニークなラインナップで知られるフェスティバルのひとつだろう。

 

特に自分はアーティストに詳しくないのでFRUEのラインナップを見ても、たいていいつも名前を聞いたこともないアーティストが大半を占めている。ただ第1回目(2017年)のヘッドライナーとして初来日した JOUJOUKA だけは本当に聴いてみたかったので、それ以来、毎年ラインナップが発表されるのを楽しみにしていた。

 

そんな自分が去年(2021年)初めてFRUEに参加してみた。予想通りとても素晴らしいフェスティバルだったので、これから参加を検討している人に少しでも役に立てればという思いで、自分に書ける範囲のレポートを書いてみようと思う。先述したようにアーティストには詳しくないし、音楽的なことはすでに素晴らしいレポートが公開されているのでそちらを読んでもらいたい。

 

FRUEにいる大きな生きもの | 松永良平

■FESTIVAL de FRUE 2021 雑感 | 大西穣

■《ふるえ》の源泉 | 瀧瀬彩恵

 

さて、まずは会場へのアクセスだ。FRUEは第1回目から「つま恋リゾート彩の郷(静岡県掛川市 )」で開催されていて、いまのところ会場の変更はない。これからも余程のことがない限り会場変更はないだろう。それほどいい会場だ。

 

最寄りとなる掛川I.C.まで、東京から距離にして約210キロ、時間にして2時間半〜3時間といったところだ。そして掛川I.C.から会場までだが、これが超近い!距離で2キロ、5分もかからずに到着だ。高速出口からのアクセスの良さでいえば、もう断トツぶっちぎりで1位確定だ。ちなみにコンビニも高速出て200メートルくらいのところにセブンイレブンがあるので安心だ。

 

 

電車の場合はJR掛川駅南口からシャトルバスが出ているようだ。タクシー利用なら1500〜2000円程度ということだ。

 

駐車場(つま恋リゾート南ゲート駐車場)はデカい。まったく問題ない。ただあまり早く着いてもオープンしていない。

FRUE 駐車場前

 

駐車場から会場までは遠い。しかし周遊バスが走っているのでこちらもノー問題だ。昼間の時間帯は15分おきにバスが来る。歩けば登り坂20分とのことなので少なくとも行きはバスの一択だ(帰りは荷物の量とテントを張った場所にもよるかも)。普通に大きなバスなので満席となることはまずないだろう。多少荷物が多くても安心だ。

 

「ホテル・ノースウイング」で下車し、歩いてホテルの前を通り過ぎると受付(Main-Entrance)が見えてくる。受付のすぐ奥がメインフロアのThe Hallだ。

 

独自の視点でラインナップされたアーティストによる音楽とともにFRUEのもうひとつのメインコンテンツとなっているFOODの出店は、ほぼすべてがThe Hallの正面と側面に並んでいる。お腹が空いているときはもちろん、空いていないときでもどんなメニューがあるのか歩いているだけで楽しいエリアだ(ちなみに2021年は先着100人に500円オフのチケットを配っていた)。

 

音楽やFOODは事前にラインナップがわかるから安心だとして、それ以外にフェスティバルを快適に過ごせるかどうかに大きく影響するのがテントエリアだ。FRUEのテントエリアはThe Hallから150メートルほど歩いた野外フロア Grass Stageの周辺とその先に広がっている。

 

Grass Stageはその名の通りどこまでも芝生が広がる気持ちの良いエリアだが、もともとゴルフ場なので(テントエリアとしては)起伏が激しい。特にGrass Stageが見下ろせるような一等地でテントを張れるほど平らな場所はごくわずかだ。もしこのエリアにテントを張りたければ、当たり前だがなるべく早く会場に着くことだ。そして、出来るだけ小さなテントを持参すること。とにかく平らな場所は少ないし狭い。基本的に張れるのは1人用か2人用のテントだけだと思っておいた方がいいだろう。

 

Grass Stageが見えなくてもいいということなら話は別だ。少し歩けばテントエリアは十分な広さがある。しかしこちらもある程度起伏があるので大所帯ならきちんと場所を選んで張ることだ。

 

 

トイレについては、まずThe Hallに常設のトイレがある。そしてThe Hallから歩いてGrass Stageに入る手前に仮設トイレが10台ほどと流し台が並んでいた。あとは確か、テントエリアの奥のGrass Stageが見えないあたりにも数台の仮設があったはずだ。基本的にトイレはきれいだし、うんざりするような行列が出来ていることもなかった。

 

場所が決まってテントを張ってしまえばあとはもう安心だ。下は芝生なのでマットを敷かずに寝てもふかふかだ。Grass Stageは全面芝生なので地べたに座っても快適だし、The Hallは2階部分が座席になっているのでマイチェアも必要ない。が、あればあったでテント周りで休んだり、The Hallに持ち込んで1階の隅で座って聴いたりも出来るから便利だろうとも思う。

 

FRUE初参加にあたり、自分はThe Hallに入り浸りになると思っていたが、意外にもGrass Stageで過ごす時間が長かった。天気は曇りがちで少々肌寒く感じる気候だったが、それでもやはり野外は気持ちいい。全面芝生は足の裏にも目にも優しく、風も心地良いし、音の抜けもいい。ステージを覆うテントタープの屋根も周囲の景色に溶け込んでいて、まさにFRUEの世界観を表していた(初参加の自分が言うのもなんだが…)。

 

一方でThe Hallもまた素晴らしく居心地のいい空間だった。The Hallは2層になっていて、受付を抜けてFOODエリアの並びの奥が2階部分にあたり、階段状の斜面に固定座席がずらりと並んでいる。いわば観覧席だ。階段を降りると1階はフラットな体育館のような床になっていて、ざっとキャパ700人?ほどの広さ(1階)といった感じだろうか。2階の座席に座っても十分天井が高いが、1階部分は吹き抜けなのでさらに天井が高くて圧迫感ゼロだ。

 

設備としては細かく見ればかなり老朽化も進んでいるのだろうが、もともとつま恋はヤマハが保有していたリゾート施設でThe Hallも音楽専用に設計されたものだ。当然、音の鳴りもよく、変にこもったり反響したりということもない。天井が高いだけでなく2階部分の側壁はすべてガラス張りで、特に昼間は開放感が半端ない。おまけにステージの側面も(見えはしないが恐らく)外に向けて解放されているのだろう、天気が良ければステージにまで日が射してくるし、風が吹けばその風でステージのカーテンが心地よく揺れる。屋内というよりは半野外といった面持ちだ。

 

FOODの出店はThe Hallの入口付近にかたまっているのだが、そのすぐ奥には2階の座席が並んでいるからFOODで何か食べ物を買い、そのまま2階席に座って食べながらライブを鑑賞する、ということが可能なのだ。可能というより、それもまたFRUEならではの楽しみ方のひとつだと言えるだろう。もちろん食事が終わったら、ちょっと席を立ってコーヒーを買いに行き、挽きたての豆で淹れた美味いコーヒーを片手に席に戻ってそのままライブの続きを鑑賞する、というのがお決まりのコースだ(ただしタイミングによってはコーヒーを淹れてもらうのに15分待ち、なんていうこともある)。

 

他のパーティーやフェスティバルであれば、少しでも出費を減らすためちょっとした軽食やお菓子なんかを買い出ししておくのが常套だが、FRUEでそんなことするのはまったくお勧めできないし、実際する人もいないだろう。FOOD類もまた、来場者の誰もが楽しみにしているコンテンツのひとつだからだ。自分も1食でも多く、1種類でもたくさんの料理を食べようと毎回の食事の時間を少しずつ前倒しにして調整したほどだ。

The Hall前にずらりと並んだ出店は当然どれを選んでもハズレなしだが、時間帯によって長蛇の列となっていることもあればすんなりと注文できるときもある。メニューが変わることもあるので、その辺りも含めて2日間のFOOD TRIPを楽しんでもらいたい。

 

 

11月ということで、天候次第だが夜は結構寒くなる。The Hallの2階席でじっと聴いているときなどは、夕方過ぎからぐいぐいと気温が下がった。重ね着できる服を用意しておくと安心だ。それでも寒くなったら……心配いらない。施設内の歩いて行ける距離に広々とした温泉がある。温泉までの小径も電球で飾られていて可愛らしい。

 

音楽についても少しだけ触れておくとするなら、とにかくどの時間も感動的なのだが特にFRUEの特徴となるのはその場限りのセッションを体験できる機会が多いことだろう。例えば2021年では1日目のSam Amidonのライブに角銅真実が飛び入り参加したかと思えば、今度は2日目の角銅真実のライブにSam Amidonがお礼に参加してセッションする。カフカ鼾には急遽坂田明が参加したし、最後のTerry Riley with 宮本沙羅には勝田祐二、大野由美子、Sam Amidon、角銅真実らが参加してのスーパーセッションとなった。どこでどんな打ち合わせがあってこんなセッションが実現するのか知る由もないが、とにかくFRUEではこのような奇跡が日常的に起こるということだろう。

 

最後のスーパーセッションを聴き終えたあと、道中をともにし会場をいろいろと案内してもらったAYM先生が「一生に一度、見られるかどうかのものを見てしまった…」と放心状態で呟いていた。FRUEが掲げる「魂の震える音楽体験」というコンセプトは、恐らく現地で誰もが体験できるに違いない。

 

FESTIVAL de FRUE 2022はすでにアーティストもFOODも(全部ではないが)ラインナップが発表されているし、前売りチケットも発売中だ。

 

FRUEは素晴らしい体験だ。特に普段、四つ打ちのパーティーにしかいかないという人にとっては異文化に触れるような感覚を感じるに違いない。参加してみて、もっとたくさんの人に集まって、体験してみて欲しいと率直にそう思ったし、そうなっていないことがむしろ驚きだ。The HallにもGrass Stageにもまだまだキャパシティー的に余裕がある。是非2022年のFESTIVAL de FRUEを自分の五感で味わってみてもらいたい。

 

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