texts, photos & movies : CHUN
日時:2020年2月7~9日(金~日)
会場:Hill Top, GOA(ゴア、インド)
今年もインドのゴアにて毎年2月に開催されているフェスティバル、Hill Top Festivalに行ってきた。
全世界規模の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、春なのに花見もままならない閉塞感の中、なかなか筆が進まなかったが、自宅待機・外出規制の中の気分転換になればと思い、レポートを寄稿したい。お付き合いいただければ幸いだ。
話は少し変わるが、昨年の夏、ハンガリーのOZORA Festivalに初めて参加した。途中で体調を崩したりもしたが、大満喫させてもらった。Festival Tripでもレポートしたとおりだ。
OZORAから帰国後すぐの2019年8月上旬、Astral Projection@OZORA Festival 2019の動画を見て余韻に浸っていた矢先、あるタイムラインに目が留まった。
Save the date
Astral Projection Live at GOA, India
7th 8th 9th feb 2020, Hill Top Festival
アストラル、ゴア!!!
なにせAstral Projectionは僕がトランスパーティーに行きはじめた頃からの大のお気に入りで、今までも数々の神秘体験に導いてくれたシャーマンのような存在だ。オリジナルアルバムはすべて持っているし、来日した時は大体足を運んでいる。彼らのオフィシャルページもフォローして、ほぼすべての投稿にいいねを押しているので、トップファンにも認定されている。Hill Top New Yearで撮影した動画は、彼らのオフィシャルYouTubeページにも採用してもらった。
OZORAでの熱演もさることながら、Hill Topのアストラルは格別だったし、また行きたいなあ……。2020年2月7~9日ね、メモメモ。
その後、2019年8月下旬にはAstrix、Koxbox、Space Tribeなどのラインナップが発表になった。
2019年は弾丸訪問で、3日間開催されるHill Top Festivalの2日目からの参加だったので、1日目のAce Ventura、Tristanなどのメインアクトを見逃してしまった。
Astral Projectionのオフィシャルページには、2020年2月7日出演と早くからアナウンスされていたが、Hill Topの方にはどのアーティストが何日目に出演するかまだ正式な情報は載っていなかった。昨年の苦い失敗も踏まえて、今回は1日目から参加できるようにスケジュール調整を行い、2019年12月下旬、インド行きの航空券をインターネットで購入した。
年が明けるとさらに追加ラインナップが発表になり、毎年出演しているAjjaのほか、2020年1月下旬の更新ではDominoが加わった。
Dominoは5歳からゴアで育ち、15歳でDJデビュー、トランスの大御所Juno ReactorのツアーDJを務めるなど、シーンを代表する女性DJだ。昨年、富士山近郊で開催されたPeace Forest Fujiに約10年ぶりに来日したそうだが、その時は都合がつかず行けなかった。過去にDominoがプレイしたHill Topのパーティーに参加して良かった記憶が残っているので、Hill TopでDominoをまた聴けるとは、個人的にはかなり嬉しい追加ラインナップだった。
ちょうどその頃、中国では新型コロナウイルスの感染症が発生し、ニュースで報道されるようになった。何だか心配だなぁと思いながらも、2020年2月初旬、マスクを着用してインド行き飛行機に乗り込み、ゴアへと向かった。機内では客室乗務員は全員マスクを着用、乗客の半数以上もマスクをしていたが、インドのムンバイ空港に到着後はマスク姿の人はそれほど見かけなかった。
トランジットを終え、深夜ゴア空港に到着。空港からはプリペイドタクシーを利用(深夜料金込みで1,500ルピー、約3,000円ぐらい)して、インターネットで事前に予約をしていたアンジュナのホテルへ。着後、就寝。
翌朝起床後、宿のフロントでバイクが借りられるかを確認。昨年はツーリストが多く、ホテルのレンタルバイクはすべて出払っていたためアンジュナ交差点付近で聞くように言われたが、今年はホテルのレンタルバイクを借りることができた。正確な値段は忘れてしまったが、1日あたり500ルピー(約750円)ぐらいで、6日間、原付スクーターをレンタルした。ゴアに着いたら、まずバイクを借りる。これで一仕事終わったので、アンジュナビーチなど軽くバイクで散策した。
宿に戻った後、ゴアに先乗りしていた友人にメッセージを送った。昨年もゴアでご一緒させてもらった、しんのすけさん&さなみさん夫婦だ。アンジュナの宿泊ホテルからそれほど遠くないArtjuna(アートジュナ)というカフェ・レストランにいるとのことで、昼食がてら向かった。
初めて行ったArtjunaだが、お洒落なカフェ・レストランで、白人やハイソなインド人ツーリストで賑わっていた。オーガニックでチルアウトな雰囲気のお店だ。
しんのすけさん&さなみさん夫婦は、インド北部の山間部でレストラン開店準備のため、インドに長期滞在中だった。昨年の夏に一時帰国した際に東京の浅草でご飯に行って以来なので、半年以上ぶりの再会だ。食事をしながらインド滞在中の話を聞き、バイクで一緒にゴアを散策した後、彼らの宿に立ち寄る。少し休むと言うさなみさんを宿に残し、しんのすけさんと男2人でアンジュナの北、アランボールビーチに向かった。
アランボールはアンジュナからバイクで約1時間と、それなりに離れた距離にある。昔、ゴア滞在時、アランボールでパーティーがあると聞きつけ、アンジュナから深夜バイクで向かったのだが、ポリス・ストップでパーティーは途中で中止になってしまった。それ以来の訪問なので、実に14年ぶりのアランボールだ。
しんのすけさんは昨年、アランボールに長期滞在していたので道をよく知っており、彼の後ろに付いてバイクを走らせる。アランボール着後、しんのすけさんの友人の家に立ち寄った。ミーシャさんというロシア人の男性の家で、ゲストハウスを併設したヨガセンターを経営していた。
敷地内にはチベットでよく見かけるタルチョがデコレーションされ、ヨガスペースとなっている中庭はさながら曼荼羅のような造りになっており、こだわりのヨガセンターということが伝わってきた。
「光の聖者と闇の聖者がいると思うんですけど、ミーシャは光の聖者なんですよ。朝、ここの中庭で、太陽の光を浴びながら、ミーシャと一緒に行うヨガは、本当に最高なんですよ」
なるほど、かなり良さげである。しんのすけさんが光の聖者と呼ぶだけあって、僕らの目の前に座っていたミーシャさんはいつも笑顔で、優しく温かい光のオーラが漂っていた。そんなミーシャさんのまわりには、ロシア人を中心としたヨガ受講生?たちが集まっており、彼らは僕らにもわかるように簡単な英語で話してくれて、もちろんロシア語も飛び交っていた。英語の会話が理解できた時は「ハラショー、ハラショー(ロシア語で、いいね、いいね)」と、知っている数少ないロシア語で相槌を打った。
太陽もすっかり西に傾いてきたので、アランボール長期滞在者のミーシャさんや周囲のロシア人たちにアランボールでのお勧め夕日スポットを聞き、そこへ向かった。
バイクを停めて、アランボールビーチへ。裸足で歩くと、ビーチの砂浜が気持ちいい。ビーチを少し散策しているとだいぶ太陽が地平線に近づいてきたので、海の家のインド人に道を聞きつつ、お勧めされたアランボールビーチ北端の丘の上へ。ビーチサンダルよりはアウトドアサンダルのほうが良さそうな未舗装道を10分ほど登る。先客もちらほらと数えるほどしかおらず、まさにガイドブックに載っていない絶景夕日スポットだった。
日も暮れてすっかり暗くなったアランボールビーチを出発。しんのすけさんの宿に戻り、奥さんのさなみさんをピックアップして、夕食へ。彼らがお世話になっているというアンジュナの日本食レストラン『囲炉裏(IRORI)』へ。美味しい生姜焼き定食をいただいた。
同レストランでは、Kagerouのしんさんと会った。映像演出VJやプロジェクションマッピング、映像制作をしているベテランで、KagerouがVJを務めるパーティーやフェスティバルも多い。今回のゴアでも、いくつかのパーティーにVJとして出演するそうだ。
明日はいよいよ、Hill Top Festivalだ。
■Hill Top Festival 2020、1日目
起床後、宿でダラダラ過ごしていると、午後になってしまった。バイクでHill Topに向かった。
今年のHill Top Festivalの当日券は、3日間の通しチケットで、7,000ルピー(約10,500円)。1日チケットは3,000ルピー(4,500円)とのこと。2019年は3日間の通しチケットが5,000ルピー(約7,500円)だったので、値上がりしていた。昨年は決して高い金額ではないだろうと書いたが、日本並みの入場料だと思う。
前日オフィシャルページでようやくタイムテーブルが発表になっていたが、当日券の値段はどこにも書いていなかった(その辺がインドらしいと言えばインドらしいのだが)。残念ながら、手持ちのインドルピーでは現金が足りなかったので、クレジットカード払いも可能だったが1度引き返し、ATMでルピーを引き出してHill Topに戻った。アンジュナ周辺にはATMが複数ある。CirrusやPLUSのマークがついたBANKカードやクレジットカードがあれば、現金はそれほど持参しなくてもいいだろう。
3日間の通しチケットを購入して、リストバンドを受け取り、入場口でリストバンドを提示して入場。昨年同様、入口で簡単なセキュリティーチェックがあったが、リストバンドとバックの中身のチェックで、飲み物の持ち込みが禁止されている以外は、デジタルカメラなどの持ち込みは問題無く、厳しくはチェックされなかった。もちろん、昨年同様、再入場も可能だった。
メインフロアでは、Hill Topのオーナーの息子で、メインオーガナイザーのStarling Dsouzaのユニット、SKSDがプレイしていた。間もなく、イスラエルのAnimatoに交代した。
メインステージのデコレーションは、昨年のセットを踏襲したものだったので、それほど目新しくはなかったが、メインフロアはすでに盛り上がっているようだった。
メインフロアから入場口の方向に戻ると、昨年同様、Alternative Stageと名付けられたフロアがあり、ダウンテンポのトランスを中心とした、チルアウト・スペースになっていた。
Alternative Stageでは、ロシアの女性DJ、Fusionistaがプレイしており、座ってゆっくり休憩している人も多かった。小さな子連れのお客さんも少なからず見かけたので、子供と一緒に休める休憩場所、逃げ場があったほうがいいだろう。
夕方17:30からは、TIP World主催の大御所、Raja Ramが、メインフロアに登場。Shpongle名義のDJ Setで、HallucinogenのSimon Posfordとの共演ではなく、Raja Ram 一人でのプレイだった。さすがのベテランのパフォーマンスで、多くのオーディエンスを集めていた。オーディエンスに近い位置でのDJブースも、良かったと思う。
Raja Ramが終わり、いよいよ待ちに待ったイスラエル・トランスの大御所、Astral Projectionが19:00からスタート!!!
周囲がすっかり闇夜に包まれると、ブラックライトに怪しく輝くデコレーションと虹色のライディングが、Hill Topのメインフロアをいつもながらの異空間に変えていく。前述のとおり、メインステージのデコレーションは、昨年のセットを踏襲したものではあったが、そこはさすが“ゴア・トランスの殿堂”、Hill Top。昨年を遥かに上回るサイケデリックなプロジェクションマッピングで、オーディエンスの意識を飛ばしていく。
「ど、どうやら迷い込んでしまったらしい、Another World に……」
1999年 Trust in Trance Records(イメージ画像)
OZORA Festival 2019、ドイツのAntaris Project 2018、Hill Top New Year 2018と、近年は昼間のアストラルが続きそれが最高だったので、正直なところ、夜の時間よりも明るい時間帯のほうが良かったのだが、いやいや、Hill Topの怪しい闇夜の異空間と今回のプロジェクションマッピングで、Astral Projectionのパフォーマンスを体験すると、まさにAnother World、太陽系を超えた別の惑星にまで飛ばされてしまったかのようだった。
恍惚としながら宇宙遊覧を楽しんでいたが、ふと時間を確認すると、うむむむ、すでに残り時間20分ほどとなっており、慌てて動画撮影の準備をして、撮影しておく。
今回のAstral Projectionは1時間半と短く、個人的にはもう3時間ぐらいやってほしかったが、ちょっと足りないなあと思うぐらいが、また行こうという気持ちになっていいのかもしれない。Hill Topの夜のアストラルも、宇宙までサクッと飛ばしてくれて、やはり最高だった。
1日目のトリは、同じくイスラエルのAstrixが登場。動画を見ていただければわかるとおり、Astral Projection はアゲにアゲて終わらず、後輩のAstrixがやりやすいように終わったので、その辺の配慮もベテランらしく憎いところだ。もちろん、トリのAstrixも、メインフロアを最高潮に導いていた。
22:00にAstrixは終了。Hill Top会場内の行きつけのチャイ屋でしばし休憩。会場内には複数のチャイ屋が出店しているが、毎回行きつけのチャイ屋しか基本利用しないので、顔パスというか、チャイ屋のインド人のおばちゃんとはすっかり顔見知りだ。今年はメインフロアの横も開放しており、テーブルと椅子が設置されたフードコートになっていて、休憩場所が増えていた。
チャイ屋でしばらくチルアウトしていたが、「今日はもう閉店だから明日また来て」とおばちゃんに言われたので、移動を開始する。Hill Topを出て、バイクに乗って、Hill Top Festivalのオフィシャル・アフター・パーティーへ。昨年は最終日3日目の最後一日のみの開催だったが、今年は3日間、毎日開催だった。会場は昨年と同じ、2013年12月にオープンしたというゴアでは比較的新しい、Chronicle Goa(クロニクル・ゴア)。バガトールの9 Bar (ナイン・バー)のすぐ近くだ。
会場に着いたものの、長蛇の列になっていた。無理もない、数千人は入っていたと思われるHill Top Festivalのお客さんの多くが来ているのだろう。お客さんの人数が多すぎて、入場制限をしているのかもしれない。列もなかなか前に進まないので、帰ろうかとも思ったが、しばらく待っていると、少しずつ列も前に進んでいったので、だいぶ待ったが入場できた。01:00からのAstrixには間に合った。入場料は2,000ルピー(約3,000円)。日本並みの入場料だった。
Chronicle Goa(クロニクル・ゴア)は、Hill Topよりもフロア面積はひと回り、ふた回り小さかったので、昨年同様、ダンスフロアはすし詰めだったが、フロア前方、DJブースの近くまで移動すると、Astrixのプレイをすぐ近くで見ることができた。混雑したダンスフロアから、砂浜のビーチやダンスフロアの上のバー・スペースに逃げて、様子を見る。タイムテーブルを見ると、アフター・パーティーは少なくとも朝05:00まではやるようだったが、Hill Top Festivalはあと2日続くので、03:00頃には会場を出て、バイクで宿に戻った。
宿に戻って、部屋の明かりで確認すると足元は真っ黒に汚れていた。昨年のHill Topはメインフロアの地面にシートが敷き詰められていて、それほど汚れなかったように思うが、今年は地面からシートが撤去されて、例年どおりの埃っぽい土のメインフロアに戻っていた。今回はアウトドアサンダルで行ったのだが、靴で行っていたら靴の洗濯が大変だっただろう。鼻の穴にティッシュを入れると、案の定、埃で真っ黒だった。
「パーティー終了後のひどい土埃汚れ、ゴアっぽいな」と思いながら、汚れまくったアウトドアサンダルと足元、身体を石鹸でゴシゴシ洗う。シャワーのお湯がなかなか熱くならないので、備え付けのバケツにぬるま湯を溜めて、行水方式で洗い流した後、夜明け前、ようやくベッドで休んだ。
後編へ続く……。