2017年8月、皆既日食フェスティバルの開催地となるオレゴン州。米国の地図で見るとちょうど左上にあたる。
北アメリカ大陸のアラスカ南部から北カリフォルニアに至る太平洋沿岸地域はパシフィック・ノースウエストと呼ばれるエリアだ。カナダのバンクーバー、ワシントン州のシアトル、そしてオレゴン州のポートランドなどの都市が属する。
このエリアは、すぐ東側を南北に走るカスケード山脈によって、大陸の他のエリアと隔てられている。古くはアメリカ先住民たちが暮らし、1960年代以降は自由を求めるヒッピーたちがいくつものコミューンを形成した歴史を持つ。豊富な雨量と豊かな自然に恵まれ、住む人たちは自然環境に対する意識が高い。
文化的にも寛容かつリベラルで、1994年に米国で初めて安楽死を合法化(1994年)し、“死ぬ権利”を真っ先に自分たちの手に取り戻したのはオレゴン州だ。そして米国内で大麻の全面合法化をはじめに決めた4州のうちコロラド州を除くアラスカ州、ワシントン州、オレゴン州の3州はパシフィック・ノースウエストに属している。禁止することよりも解放することで社会全体の調和を目指していくという柔軟な思想が流れている。
OSHOの名でも知られるバグワン・シュリ・ラジニーシのコミューンであるラジニーシプーラムが建設されたのもオレゴン州だ。ラジニーシプーラムは正式な市として認められるほどの発展をみせたが、主に米国政府との確執により数年で解体。その後、危険人物として21の国から国外追放または入国拒否されることとなったラジニーシは、以下のようなパンクな発言を残したらしい。
「政府達があのコミューンを恐れるようになったのはあれが、世界の偉大な無政府主義者達、クロポトキン公爵や、他の者達みんなが考えていたこと、どんな政府も必要なくなる日が来るということだったからだ。無政府主義は人がより自由になるのを、より大きな自由を持つのを助ける。最終的にはどんな政府も必要ない。そして私達には政府はなかった。誰もが自分で責任を持っていた。」
このような土地で皆既日食を祝うフェスティバルが開催されるのはとても喜ばしいことだ。今回の皆既日食はオレゴン州からサウスカロライナ州まで、米国を完全に横断する。願わくばこの皆既日食が、未来を変えるためのきっかけになって欲しいと思う。