[レポート] 春風めぐるツアー 2018 長沢哲夫&内田ボブ ポエトリー・リーディング&ライブ

春めぐるツアー2018
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日時:2018年4月8日(日)
会場:Flying Books(渋谷、東京)

1967年9月に詩人の長沢哲夫(ナーガ)が『部族宣言』を書き、同じ年の12月、彼らの思想信条を世に伝えるための新聞『部族』が創刊された。50年代に米国で生まれたビートニクの流れを組み、日本のカウンターカルチャー・コミューンの代表ともいえる”部族”が誕生してから50年が経った。

新聞『部族』『部族』創刊号表紙:山田塊也

【部族宣言】

ぼくらは宣言しよう。この国家社会という殻の内にぼくらは、いまひとつの、国家とはまったく異なった相を支えとした社会を形作りつつある、と。

統治するあるいは統治される如何なる個人も機関もない、いや「統治」という言葉すら何の用もなさない社会、土から生まれ土の上に何を建てるわけでもなく、ただ土と共に在り、土に帰ってゆく社会、魂の呼吸そのものである愛と自由と知恵によるひとりひとりの結びつきが支えている社会 – ぼくらは部族社会と呼ぶ。

アメリカ、ヨーロッパ、日本、その他の国々の若い世代によって、何百万人という若い世代の参加によって静かにあくまでも静かに、しかし確実に多くの部族社会が形作られつつある。都会にあるいは山の中に、農村に海辺に島に。

やがて、少なくともここ数十年のうちに、全世界にわたる部族連合も結成され、ぼくらは国家の消え去るべき宿命を見守るだろう。

ぼくらはいまひとつの道、人類が死に至るべき道ではなく、生き残るべき道を作りつつあるのだ。 ひとりひとりの人間においては、彼がその肉体の死とともに消え去ってしまう道ではなく、永遠の不滅の自己にたどり着くべき道を。(後略)

今年(2018年)は、98年から続く長沢哲夫と内田ボブによる『春風めぐるツアー』の20周年にあたり、同じく部族の中心人物であったナナオ・サカキの没後10周年という区切りの年でもある。

ヒッピー・ムーブメントと呼ばれたころの日本のコミューンの状況については『にっぽんコミューン(アサヒグラフ編)』に詳しく書かれているし、ドキュメンタリー映像『スワノセ第四世界(監督:上野圭一)』では諏訪之瀬島での部族の生活の様子をリアルに観ることができる。

にっぽんコミューン

『スワノセ第四世界』

自分は部族について何かを語れるほどよく知っているわけでもないし、ビートニクについてもケルアックの『路上 on the road』や、ギンズバーグやバロウズの著作からその雰囲気とニュアンスを感じとるくらいのことしかできない。けれど、彼らが生み出し、あるいは目指していたものは、間違いなく自分がいま立っているこの場所と地続きにあることは確信できる。

ビートニク

ナーガさんは部族のコミューンである”バンヤン・アシュラム”のあったトカラ列島の諏訪之瀬島に今も住み、暮らしている。自分は以前、諏訪之瀬島を訪れ、なんの面識もなかったナーガさんの家にも立ち寄らせてもらったことがある。ご自身で建てられた8角形の家で、お酒と晩御飯をご馳走になった。

「(家を建てるのに)6角形は簡単だけど、8角形は難しいんだよ」と語っていたのを覚えている。トカラ列島で皆既日食が観測できた2009年の前年のことだ。

会場となる渋谷Flying Booksに到着し、ナーガさんの姿を見つけて挨拶とともにその話をしてみると、「随分前の話だなぁ……」と完全に忘れている様子だった。いづれにしてもナーガさんとボブさんの元気な姿を拝見し、ポエトリー・リーディングとライブを堪能できるのは喜び以外の何ものでもない。

長沢哲夫(ナーガ)

内田ボブ

今回はオープニングで新納新之助さんによるポエトリー・リーディングもあり、これがまた非常によかった。

以下、そのオープニングからラストまで余すところなく映像に納めたので、是非たくさんの人に観て、聴いてもらいたいと思う。部族の持っていたスピリットが、今も生き生きと目の前で揺らめいているのが感じられるはずだ。

今回、当日の申し出だったにも関わらず、快く取材許可を出してくれたFlying Booksの山路さんにも感謝いたします。どうもありがとうございました。

Flying Books

 

「さぁ出かけよう、
 そして旅が終わったら、
 美しい川のほとりで会おう」
 (詩:『そして旅が終わったら』長沢哲夫)

 Life is a Trip, a Festival Trip.

 

春風めぐるツアー2018 スケジュール『春風めぐるツアー 2018』のスケジュールは内田ボブHPで確認できます。

 

 

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