texts, photos and movies by CHUN
日時:2018年7月13〜16日(金〜月)
会場:Stölln(ドイツ)
Voov Experienceと並び、ドイツの2大老舗トランス・フェスティバルである“Antaris Project”。世界中で開催されているトランス・フェスティバルの中でも最も歴史の長いフェスティバルのひとつだ。
2018年で24周年を迎えたAntaris Projectに14年ぶりに参加してきたので、今回はそのレポートをしたいと思う。
7月13日(金)
深夜便にて日本を出発。ドイツの首都ベルリンに到着したのは現地時間の午前10時頃。
ベルリンのテーゲル空港から市内中心部まで一度出て、スーパーで買い出しを済ませる。ベルリン市内から1時間ほど列車に乗り、14時頃に会場の最寄りとなるRathenow駅へと到着した。
Rathenow駅からはAntaris Projectのオーガナイザーが運営するシャトルバスがある。約30分ほどでフェスティバル会場のStöllnに到着。
2004年に訪問したときはドイツ北部のFehrbellinという場所で開催されていたが、数年前から会場が変更になったようだ。国際空港のあるベルリン市内からそれほど遠くなくアクセスできるのは、特に海外からの参加者にとっては大変ありがたい。
日中明るいうちに会場に到着したので、少しキャンプサイトを歩いて、テントを張る場所を探すことにした。野外フェスティバルでは太陽の日差しが強すぎて、日中テントで眠れないことも多い。太陽を遮ってくれる木陰を探すが、そのような場所は見当たらず、キャンプサイトはだだっ広い平原だった。
首都ベルリンから僅か1時間半ほどの場所だったが、周囲には何もなく、乾いた荒野というよりは、緑溢れる大平原の会場だった。すでにキャンプサイトの7割は埋まっており、フェスティバル会場を見渡せる展望の良い場所も先客でいっぱいだったので、水場に近い適当な場所にテントを設置した。
フェスティバルの開始直前に発表されたタイムテーブルは以下のとおり。
ALTERNATIVE FLOORとAmbient Areaではすでに音が鳴っていたが往路の深夜便の機内ではあまり寝られなかったので、フードコートで食事だけ済ませ、会場の散策はほどほどにして一旦テントに戻ってしばらく寝て過ごす。 幸い太陽の日差しもそれほど強くなく、タープのないテントでもそれほど暑さを感じず休むことができた。
出発直前まで仕事が超多忙で、だいぶ疲れが溜まっていたようだ。ゴロゴロしていると、すっかり遅い時間になってしまった。
日も傾いた時間のMAIN FLOORに足を踏み入れると、ブラジルの女性DJ、Altruismがプレイしていた。夏のヨーロッパの日照時間は長く、7月中旬のドイツの日没は21:20頃。夕日が美しいダンスフロアをビルドアップしていく。夕日から日没にかけて、次第にライトアップされていくMAIN FLOORの様子を眺めていた。
MAIN FLOORの宇宙をイメージしたデコレーションは、さすがは「デコのアンタリス」と言われるだけに、完成度が非常に高い。フロアを包み込むようなデコレーションと音楽に誘われるまま宇宙旅行に旅立ちたい気持ちもあったが、まだまだパーティーは前半戦だ。体力温存で早めにテントに戻って、寝ることにした。
数日間続くフェスティバルにおいて、不眠不休で遊び続ける強者も中にはいるのだろうが、休めるときにしっかり休んでおくというのも、最後までフェスティバルを満喫するためには必要なことだ。
7月14日(土)
本日はゆっくりの起床。 MAIN FLOORでは米国のChicago 1200 Micsがプレイしていた。Raja RamやG.M.Sとの共演も多いが、今回のAntarisではChicagoひとりでのプレイだった。
会場内をじっくり散策してみると、キャンプサイトから3つのダンスフロア、そしてマーケットエリアまでを合わせても、広過ぎるという感じはしなかった。 エントランスから一番奥にあるALTERNATIVE FLOORまでは歩いて30分ほどはかかるが、広過ぎず狭過ぎず、散策するにはちょうど良いサイズの会場だ。
ALTERNATIVE FLOORの隣りには、金色のモニュメントが設置された小高い丘があり、そこから会場全体が展望できる。風の通りもよく、ちょっとしたチルアウトスポットになっていた。
2日目の目玉はイスラエルのAce Venturaだ。90年代後半、YoniはDJ GoblinとともにC.O.D(Cildren of the Doc)を結成。その後PSYSEXと名前を変え、日本を含め世界各地のパーティーに出演していたが、目指すべき音楽の方向性の違いにより2006年に同グループを脱退。2007年にAce Venturaとしてソロ活動を開始した。ソロデビュー作『Rebirth』は、2008年のBeatportのサイケデリック・トランス部門でミュージックアワードを受賞する。
Ace Venturaは瞬く間にトップアーティストととして認められて今に至るが、2016年と2018年のBoom Festivalではメインフロアで5時間のロングプレイを任せられるなど、その存在感は年を追うごとにますます大きくなっている。
2015年に日本のSolsticeが8年ぶりの野外フェスティバルを開催したときにもラインナップされていた。その時はあまりピンとこなかったが、2017年のオレゴン皆既日食フェスティバルや、その後来日したときのプレイを聴きに行って、僕もすっかり彼の魅力にハマってしまった。
今回は2時間のプレイだったが、多くのオーディエンスを集めていた。グルーヴィーなベースラインと力強いキックに、イスラエル・トランスに特徴的な泣きのメロディーが乗るAce Venturaのサウンドは、今現在のサイケデリック・トランスの王道のサウンドと言ってもいいかもしれない。
Ace Venturaの終了後、MAIN FLOORは1時間半(19:30〜21:00)ほど小休止だ。ALTERNATIVE FLOORへと移動すると、オランダのJimboがプレイしていた。Raja RamのTIP RECORDS所属のDJで、ゴアでもよくプレイしているようだ。夕日の美しいALTERNATIVE FLOORをいい感じにアゲていた。
21:00よりMAIN FLOORの音が再開。クロアチア、オーストリア、ブラジルの若手DJによる多国籍ユニット、Quadrasonicがプレイ。日本ではまだあまり知られていないと思うし、僕自身も初めて聴いたが、昨年のAntaris Projectでもメインでプレイするなど、注目の若手ユニットのようでなかなか良かった。
夜、マーケットエリアを歩いていると、無声映画の上映をやっていた。映画の内容は、ヒトラー率いるナチスドイツからアメリカの席巻する世界に移り変わる様子をサイケデリックなアニメーションで描いていた。この日の午後、ダンスフロアを盛り上げていたAce Venturaをはじめとするイスラエルからのアーティストや参加者にとって、かつてのナチスの国を訪問するのは、複雑な感情を持つ人もいるかもしれないと思ったりもするのだが、実際のところはわからない。
(後編に続く……)